11月消費支出から読み解く民主党スローガン「国民の生活が第一」の菅内閣景気対策

2010-12-31 08:12:59 | Weblog


 

   正月三ガ日は休みます。予告する程のブログではありませんが。

 11月消費支出の記事。12月28日(2010年)総務省発表の11月家計調査を伝えている。
《11月消費支出、実質は前年比0.4%減 たばこは半減》asahi.com/2010年12月29日1時43分)
 
 1世帯あたりの消費支出(単身世帯を除く)は前年同月比0.2%減の28万4212円。3カ月連続マイナス。

 物価変動を除いた実質では同0.4%減。無視できない動向となっている単身世帯を加えたなら、さらに下がることになると考えることができる。

 総務省(個人消費の基調判断について)「緩やかながら回復を続けているものの、先行きには注視が必要」

 傾向。天候不順の影響で高騰した野菜等への支出が減った一方、消費刺激策が続いている薄型テレビなどの支出が伸びがみられる。

 支出項目別傾向。

 10月に税率が引き上げられたたばこが前年同月比で実質48.0%減少。交際費などが同10.3%減。エコポイント制度の変更直前の駆け込み需要で、薄型テレビなどの教養娯楽用耐久財は同128.4%支出増。

 調査から窺うことができる構図は、天候不順による値上がりの影響で野菜など生鮮農産物に対する支出は所得余裕層にはさして影響はないだろうことを考えると、全体的消費支出減は中小所得層、特に所得非余裕層の消費動向が影響を与えた減少だということができる。

 逆に政府が財政出動して支援したエコ家電やエコカー減税、住宅エコポイント制度等が恩恵した支出増は所得余裕層の関与によるもので、中小所得層、その中でも所得非余裕層がほぼ関与できなかった支出分野と見ることができる。

 もしもエコ家電やエコカー減税、住宅エコポイント制度等が所得非余裕層をも含めて恩恵を与える景気刺激策であったなら、当然の如くに1世帯当たりの消費支出はプラスとなっていいはずだ。

 要するに民主党政権、菅内閣の経済対策、あるいは景気刺激策は「国民の生活第一」を掲げながら、国民全体にバランスよく利益が渡る政策とはなっていなかったことになる。

 まあ、この程度が菅首相が繰返し言っている「有言実行」の程度・中身といったところなのだろうが、全体的に言えることは中小所得層、所得非余裕層まで含めて消費活動が活発化しなければ、1世帯当たりの消費支出は大きくプラスに転じないと言うことであろう。このことは断るまでもなく、国全体の景気動向に深く関わってくる。

 要は政府の景気対策は中小所得層、所得非余裕層にまで恩恵が波及する効果を持たなければならないということである。大企業等の上が儲けっ放しとなる景気対策では、下まで含んだ全体的な景気の回復は見込めないということを教えてくれる。

 このことを証明する同じ「asahi.com」記事がある。《米企業、貯め込む手元資金 162兆円、高失業率の一因》2010年12月30日13時25分)

 米企業が総資産に占める割合が半世紀ぶりの水準となる利益を上げていながら、巨額の内部留保を溜め込む一方で、先行き不安から設備投資や雇用増に向けた利益の再配分を怠り、そのことが高い失業率や経済回復が遅れる一因になっているという内容の記事である。 

 米連邦準備制度理事会(FRB)が今月発表した米資金循環統計。金融機関を除く米企業は今年9月末時点で現預金や短期で現金化できる証券などの手元資金を1兆9300億ドル(約162兆円)保有。前年同期から14%増の過去最高。 だが、〈米企業の手元資金は2008年秋のリーマン・ショック以降、急速に増加した。金融危機で資金調達が難しくなった経験から自己防衛に動いたとみられるが、景気が緩やかに回復して各社の業績が改善している今も傾向は変わらない。〉

 ニール・ヘネシー米投資運用会社会長「経営者は単純に、先行きへの自信をもてないでいる。だからコストがかかる雇用増や設備投資に踏み込むことができない。日本が最近経験してきた状況とまったく同じことが起きている」

 資金循環がどの程度か統計を試みたところ、資金循環が満足な状態で機能していない、不全状態にあると分かったという調査。

 アメリカも日本と同様に車や住宅購入に対する減税等の様々な財政出動を伴った景気対策を講じた。その結果が日本同様に上が儲けっ放しとなる景気対策で終わっていて、国全体としての確かな景気回復を実感できなく同じく日本同様に国全体の活気を見い出せないでいる。

 企業の内部留保に向けたこの動向は2010年の冬のボーナスの使い道にも現れている。

 楽天リサーチ株式会社が全国の20~69歳の男女計1000人を対象に11月19日から21日まで行ったインターネット調査「冬のボーナスに関する調査」

 「支給される予定」       ――65.5%
 「支給される予定はない」    ――22.3%
 「支給されるかどうか分からない」――12.2%

 ボーナスの使い道(順位は昨年調査と同じ)

 「預貯金」    ――54.0%
 「生活費の補填」 ――30.1%
 「旅行・レジャー」――26.1%

 昨年調査の使い道。

 「預貯金」    ――53.0%
 「生活費の補填」 ――32.2%
 「旅行・レジャー」――25.2%

 記事は小見出しで、「出費の“引き締め感”はやや後退」、「預貯金予定額は、『30万円未満』が6割超」と解説している。

 こういった傾向から窺うことができる光景はやはり所得余裕層と所得非余裕層の収入に対する姿勢の違いがそれそれの統計数値に反映されていると同時に、そのような姿勢を強いているのは政府の景気対策が所得非余裕層にまで恩恵が行き渡っていないことが原因しているということであろう。

 特に「支給される予定はない」の22.3%と「支給されるかどうか分からない」の12.2%で、余程不景気が直撃した大企業は別にして、厳しい不景気と言うだけでボーナスを支給しない大企業は先ず考えることができないから、「支給される予定はない」と「支給されるかどうか分からない」の34.5%の大部分は中小零細のうち、特に小零細企業が占めていると考えることができる。彼らには政府の景気対策は何ら恩恵しなかった。いわば「国民生活が第一」を裏切る景気対策となっていると確実に言える。

 上の儲けっ放しを許す景気対策とは上の十全な生存を許すのみの経済対策であって、下の生存を窮屈な状態、あるいは苦しい状態に置きっ放しの経済対策ということであって、そういうことなら下の消費活動を活発化させることに主眼を置いた景気政策が必要とされていると言うことなのではないだろうか。

 この考え方が間違っていないとしたら、ブログにも前々から書いてきたように、法人税減税も消費税増税も国全体の景気を回復させる経済政策足り得ないことになる。逆に消費税を一時的に停止する思い切った政策で広く厚く消費を刺激し、先ず小零細企業の売り上げに貢献する景気対策が必要ではないだろか。

 金持から貧乏人までよりよい正月を迎えることができるように。

 だが、今年も家と職を失い、年越しを当たり前の人間として越せない生活者が多く存在する。

 それとも国家権力にとっては大企業が生存できて国際収支とかが恥ずかしくない統計内容を獲得でき、国家としての体裁をそれなりに維持できさえすれば、所得非余裕層を一部国民のみのことと看做してたいした問題ではないとしているということなのだろうか。元市民派、変身して明らかに国家主義者としての姿に身を任せている菅首相からは下を無視する姿勢しか窺うことができない。だから前以ての十分な準備も説明も議論もなく消費税の話ができた。

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