官房機密費/鳩山首相も平野博文官房長官もバカげたことを言う

2009-11-22 09:56:39 | Weblog
 「NHK」インターネット記事――《前政権の退陣直前 機密費支出》(09年11月20日 18時20分)

 平野博文官房長官が20日の記者会見で官房機密費の平成16年度以降月別の国庫からの支出額を公表、毎年度4月には2億円が、5月から翌年の2月までの各月は毎月1億円から1億円前後の支出があり、年間の支出額はおよそ12億円にのぼっていたという。

 但し、自民党が野党に転落した8月30日の衆議院選挙投開票日の2日後の9月1日に2億5000万円が支出されていたという。平野官房長官は「当時の河村官房長官から引き継いだあとに金庫を確認したらお金はなかった」と言っている。

 記事は河村前官房長官の声を伝えている。

 河村「政権にいないので、お答えする立場にはないが、使途については非開示となっている」

 記者「政権交代が確実になったあとに官房機密費を引き出したのはおかしいという指摘があるが」

 河村「私の判断だが、今はお答えする立場にない。平野官房長官には、きちんと引き継ぎをした」

 金庫をカラッポにして「きちんと引き継ぎをした」と言うわけである。金庫に2億5000万円も残っている。何も民主党に渡すことはあるまいと思ったのだろう。

 平成16年度以降毎年度4月には2億円を支出していたとしても、5月から翌年の2月までの各月は毎月1億円から1億円前後の支出を慣例としていた。その慣例月の9月が政権交代と重なったとしても、後付で支出する必要が生じていたと仮定した場合でも、慣例どおりに1億円前後の範囲内なら納得もできる。だが、1億円前後の範囲を超えて2億5000万円も支出し、金庫がカラッポになっていたということなら、カラッポにすることを目的とした支出だったと勘繰られても仕方はあるまい。

 カラッポにする目的だったとしたら、さもしいことをする連中だ。

 「NHK」記事付属動画から平野の記者会見での発言を見てみる。

 平野「それはー、あのー、前政権の、オー、官房長官が必要に応じて支出されているわけですから、えー、不思議だなあとか、云々という、私、えー、コメントする理屈は、私にはないと思います。

国民目線から見たらおかしいと、言ってもですね、私の立場で、前政権のことでございますから、えー、それを、えー、今、えー、そのことについてコメントすることだけは差し控えたいと――」

 記者「どういう使途に使ったのかということを解明する考えはないんですか?」

 平野「ございません」(言下に答えて、無言のまま自分で頷く) ――

 テキパキとは程遠い発言となっている。

 「不思議だなあとか、云々という、私、えー、コメントする理屈は、私にはない」としても、「不思議だなあ」と思ったわけである。思わなかったら「不思議だなあ」という言葉は出てこなかったろう。例え「不思議だなあ」と思ったとしても、問い質すことはしない。同類相憐れむことから――少なくとも同類への道を歩むことになることを予想していて、同類意識から、とても問い質しなどできやしないというわけなのだろう。傷を持った者同士がお互いの傷に気づかぬ振りをするように。

 「 国民目線から見たらおかしい」としても、前政権のことだから、気遣ってコメントしないということは国民目線の代弁をやめたことの宣言そのものであろう。

 民主党は政権獲得前に「国民目線」といったことを散々に言ってきた。それは国民目線を代弁することの宣言だった、あるいは国民目線を代弁することの公約だったはずである。それを「 国民目線から見たらおかしい」というふうに解釈するなら、その「国民目線」を代弁して、おかしいではないかと前政権を追及すべきを「前政権のことでございますから」コメントしないと「国民目線」を代弁することを放棄している。

 これは明らかに宣言違反であり、公約違反に当たる。内閣の要である官房長官が「国民目線」の放棄をホンネとしているといことなら、民主党全体の「国民目線」も怪しくなって、「国民目線」は政権を獲得するための口実・方便に過ぎなかったのではないかと疑いたくなる。
 
 平野官房長官の官房機密費支出額の公表を機密費の透明化を求めていた野党時代の民主党の方針転換への批判を先手でかわす狙いからではないと疑う記事を「毎日jp」が書いている。《官房機密費:政府公表 先手で批判かわす狙い 思惑は不発気味》(2009年11月21日)

 但し題名が示しているように、〈麻生政権末期の2・5億円の不透明な支出を追及せずに穏便に済ませる姿勢は、野党時代の主張とかけ離れている上、具体的な使途の公表には踏み切らず、思惑は不発気味だ。〉と平野官房長官の姿勢を間接的に批判している。

 記事は平野官房長官の11月6日の記者会見の言葉を伝えている。

 「報償費は知っているが機密費という概念では承知していない」

 これは9月17日の記者会見で機密費に関して問われて答えた官房長官の言葉、「そんなのあるんですか。全く承知していません」と同工異曲をなす言葉であろう。正式名称は「報償費」ではあるが、領収書不要、会計検査院監査免除、使途非公開を原則として機密の用途に充てる性格上、一般的に「機密費」と呼ばれていることは承知しているはずで、それを無視して、と言うよりも、それを誤魔化して「機密費という概念では承知していない」なら、「機密」にする条件を一切失う。

 にも関わらず、「報償費は知っているが機密費という概念では承知していない」と発言した11月6日の前日11月5日の記者会見では、「報償費という性格上、少なくとも相手があることだし、オープンにしていくことは考えていない。私が責任をもって適切に判断しながら対処する。発表は差し控えたい」と実質“機密費”の扱いをしている。いわば「機密費という概念」で把握した取扱いとしている矛盾を犯している。

 さらに記事は平野官房長官の11月22日の記者会見での発言も伝えている。

 「過去に言った公開も一つの考え方だが、野党の立場で言った。現実に政権の中に立ち、国益のために1年間のスパン(幅)でどうするか考えたい」
 
 国民は民主党が「野党の立場で言った」政策、その他の主張を支持して政権交代を託し、一票一票を投じた。そして国民の多くが託したとおりに政権交代を果たすことができた。次の国民の願いは支持した「野党の立場で言った」政策、その他の主張の社会への反映・具体化なのはわざわざ断るまでもないだろう。

 いわば「野党の立場で言った」政策、その他の主張、イコール公約を与党の「立場で」実現して欲しいと期待したからこそ、「政権交代」という声に乗って投票し、政権交代にまで持っていくことができた。当然、次に与党の「立場で」国民の期待に応えることを国民は見守っているはずである。

 それを「野党の立場で言った」政策、その他の主張、イコール公約に関して与党の立場に立った途端に言動不一致を起こされたのでは国民は何を規準にして政党を選択していいのか、どの政党に投票をしていいのか混乱する。

 あるいは誰を信用していいのか訳が分からなくって、誰も信用できなくなる。その代表の一人が平野官房長官ということになる。

 記事は麻生政権末期のこの2億5千万円の支出に関して鳩山首相自身がどう見ているか伝え、その上でその態度に一言批判を加えている。

 鳩山首相「政権交代が起きる時はこういうものではないか。あまり旧政権のことをとやかく言うつもりはない」

 〈事業仕分けや天下りあっせん禁止などで旧政権の弊害に切り込む姿勢とは異なり「二重基準」とも言える対応だ。〉――

 「旧政権」のアンチテーゼとして自らを成り立たせていた関係上、散々に「旧政権のことをとやかく言」ってきて、それが国民の支持を受けたという経緯を打ち捨てている。

 またアンチテーゼを打ち立てるには相手を間違いとし、自らを正しいとする価値観に依存していたはずである。決してその逆ではあるまい。この経緯を全面的に貫いてこそ、掲げた公約を実現する力となるはずだが、この経緯まで打ち捨てようとしている。

 だからこその、最近の腰のふらつきなのだろうか。

 記事は最後に次のように伝えている。

 〈野党時代の民主党は01年の外務省機密費事件を受け、機密費支出に支払記録書の作成を義務付けて10~25年後に公表させる改革法案を提出した。鳩山首相も同年の衆院本会議で「国民が疑惑を抱いている。政府が責任を持って調査し、全容を明らかにする必要がある。55年体制の政治的遺物の機密費の必要性はない」と当時の森喜朗首相に迫っていた。〉――

 01年を基点として「10~25年後」の公表の義務づけは先の長い話をしていたことになるが、「国民が疑惑を抱いている」、「55年体制の政治的遺物」だと把えていたなら、「国民目線」の代弁を民主党政治の役目としている以上、政権交代を果たした時点で取り掛かるべき「公表」ではないだろうか。

 それを「野党の立場で言った」とか、「あまり旧政権のことをとやかく言うつもりはない」などとバカげたことを言う。

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