今週21日の月曜日(07年5月)にNHKの夜7時半からの『クローズアップ現代』で≪潜入!アフガン麻薬無法地帯≫を放送していた。
アフガンのケシ栽培量が過去最高を記録しているということだが、これは武装勢力の活動の活発化と連動した栽培の活発化なのだろう。武装勢力が自ら精製工場を持ち、99.何%とかの高純度の製品から純度20%といった低所得層向けの廉売品なのか、顧客層に応じたニーズに応えるべくグレードを各段階に分けた製品を作り分けて幅広い販路を維持することで得ることのできる相当額の収入を資金に高精度の武器を大量購入し攻撃力を高め、なお且つ政治家や官憲と癒着して柔・剛両面から反政府活動の形でアフガン政府のケシ畑撲滅作戦を妨害し自らの権力と支配地を維持する。そのような戦略がすべて成功していることの成果が〝過去最高の生産量〟なる誇るべき好結果に結びついているのだろう。メデタシ、メデタシ。
国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS))のHPは<アフガニスタン、イラン、パキスタン国境沿いは「黄金の三日月地帯」と呼ばれるほど、世界最大のケシ栽培地域となっており、中でもアフガニスタンは世界最大の麻薬(ケシ、モルヒネ、ヘロイン)産出国になっている。>と名誉ある地位にあることを伝えている。
陽に焼けた顔にしわを深く刻み込ませたケシ栽培の農民が違法だと分かっているが、土地が乾燥地帯でケシ以外に栽培する作物がないといったことを言っていた。と言っても、ケシ栽培で彼らが大儲けしているかというと、武装勢力に仕切られた、世界中どこにでもよくある搾取される存在で、たいして収入は得ていないようだ。ケシ栽培をやめれば、唯一の収入源を失って、元も子もなくしてしまう。儲かるのは誰かと分かっていても、その日その日の生活を維持するために違法栽培を続けなければならない。
アヘン・ヘロインの国内生産が活発なだけあって、アフガンでは100人万近い愛好者が存在し、相当数の子供にまで愛好の裾野が広がっているとのこと。マスコミ風に表現するなら、〝アヘン常習(もしくはヘロイン常習)の低年齢化〟といったところか。世界中で選り取り見取りの各種低年齢化現象が起きている。
その象徴的シーンが父親が自分の吸ったアヘンの煙を眠っている幼い子供の口の辺りにゆっくりと吹きかけると、子供は既に条件反射化しているのだろう、眠ったままゆっくりとした反応だったが、その煙を吸うかのように口をわずかにむにゃむにゃと動かせた場面だった。まるで神が宿ったかのような穏やかな聖なる顔をしていたが、父親はアヘンが身体に悪いことは知っているが、こうしてやると子供が落ち着くといったことを言って、アヘンの精神安定効果を説いていた。
アフガン大統領カルザイが「ケシが国を滅ぼすか、国がケシを滅ぼすか」と国によるケシとの戦いを後はないといった真剣な表情で決意表明を行っていたが、口で言うほどの効果が後はない後ろからついてきてくれないのは乾燥土への水分補給を可能とする灌漑施設が満足に整備されていないことと、現状ではケシ栽培に換わる有効な代替作物が存在しないことだという。
ではと素人頭で考えたことだが、ケシが栽培可能なのだから、灌漑設備が現状のままでも可能と思われる、酸性土壌にも強く乾燥にも強いサツマイモ栽培はどうだろうか。食用に生産するのではなく、バイオエタノール用に栽培する。国際援助でサツマイモの種を配給し、栽培地近くに同じく国際援助でバイオエタノール生産工場を建設する。
サツマイモを即バイオエタノール化すれば、輸送に便利でコストも安く上がるはずである。バイオエタノール化農産物の生産地を増やすことで、現在起こっているトウモロコシや大豆、小麦粉といった穀物の値上がりを僅かながらでも抑制できるはずだし、ケシからサトイモが成功すれば、それに連動してアフガニスタンに於けるアヘン・ヘロインの類の国内生産が減少し、そのことがスイスの時計にも匹敵する有名ブランドであるアフガニスタン製のアヘン・ヘロインの類の輸出品の減少につながっていく。中毒患者の数も減っていくに違いない。成功すれば得ることのできる利益は計り知れないものがあるだろう。
武装勢力側はケシからサトイモに猛反発して、転作農家を威し、従わない農家を武力攻撃するだろうし、バイオエタノール精製工場も直接攻撃するだろうから、アフガン軍は勿論、反政府勢力の武力攻撃に備えて展開している国連軍も農家と工場の保護にまわる。兵力が不足なら、各国に応援部隊を要請する。
この案はサツマイモを食べると出る始末の悪い屁と同じく、屁みたいな話、屁でもない話だろうか。