僕の家内は招き猫が好き

個人的なエッセイ?

「池上線」

2020年10月05日 | Music
古い電車のドアのそば
二人は黙って立っていた

話す言葉をさがしながら
すきま風にふるえて
             「池上線」 西島三重子

学生時代。

僕のいる学生寮は、
池上本門寺のお会式のお手伝いをしていた。

十月十二日。
万灯行列がやってくる。

境内を埋め尽くす人たち。
警備の警察官。

騒然とした境内を僕たちは走り回る。

参拝に来られた人たちの案内。
入り乱れる人たちの整理。

五反田駅から池上線へ。
ひとり電車のドアに肩をよせる。

窓の外を流れる景色を眺めていた。
夕暮れの街並みが、やけに切なく映った。

泣いてはダメだと 胸にきかせて
白いハンカチを 握りしめたの

遠く故郷を思う。
福岡の街並み。

ふいにこみあげるものがあった。

帰りたい。
僕はいつまでも夕暮れの街並みを眺めていた。

◆ 参考文献 「池上線」西島三重子 Uta^Net

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