空華 ー 日はまた昇る

小説の創作が好きである。私のブログFC2[永遠平和とアートを夢見る」と「猫のさまよう宝塔の道」もよろしく。

銀河アンドロメダの感想 8 (大慈悲心)

2018-09-08 09:55:44 | 文化

 優れた価値観は常に宇宙の真理の支えがあるものだ。しかし、今まで人類の歴史に出てきた優れた価値観はいくつもあるが、見かけは相当違う。みな、それぞれの民族の文化の衣装をきている。そのこと自体は文化の尊重という意味で、大変、魅力的なことなのだが、奇妙なことに、

その価値観の見かけの違いから、口論が始まり、ひどくなると戦争にもなったことがある。

一番分かりやすい例では、キリスト教はかってイスラム教の土地に十字軍を送り、逆のことも起こった。

あるいは、よく知られている所では、ユダヤ教とキリスト教。

ユダヤ人がナチスドイツに虐殺されたのは、複雑な歴史的経済的対立があったのであろうが、根底に二つの宗教の厳しい対立があったからではないか。

現代では、ジェト機が飛び回り、地球は狭くなり、経済の交流が活発になり、そのこと自体は良いが、それぞれの国の文化と価値観の相互理解がマイナス方面に進むと、やはり争いが生じる。この争いを鎮め、地球の中に住む人々が仲良くするにはどうしたらいいか、

言葉で言う程に簡単なことではないのは、新聞やテレビなどのニュースを見ていれば、一目りょう然。それでも、大雑把に言えば、話しあいと、文化の交流と文化の相互理解しか良い方法はない。

そして、人類が努力すれば、必ず出来る。

なぜなら、世界中に散らばっている優れた宗教と哲学は根底に共通のもが流れているからだ。

つまり、真理は一つなのだ。名前が違う。着ている衣装も違う。しかし中身の真理は一つ。

それを私なりの言葉であえて言うならば、「いのちの神秘」であろう。これは、科学が発達すれば、より正確に言うことが出来るようになるかもしれないが、おそらく言葉(数学を含めて)で完璧に表現することは不可能だろう。だから、私は大雑把に「いのちの神秘」と言う。

この私の気持ちと似たことを分かりやすい詩にした人が過去の詩人にいます。有名な詩なので、ご存知の方も多いと思われます。漢詩は声に出して読むと、味わいが深まると思います。大自然の中に言葉に出来ない神秘ないのちがあると陶淵明は言っていると思われますが、いかがでしょう。

特に文字を赤くした所に注意していただきたいと思います。

 

盧(ろ)を結んで、人境に在り

而(しか)も車馬の喧(けん)無し

君に問う 何ぞ能くしかるやと

心遠ければ地自ら偏なり

菊をとる 東りの下(もと)

悠然として南山を見る

山気 日夕(につせき)に佳なり

飛鳥 相与(あいとも)に還る

此の中に真意有り

弁ぜんと欲して己(すで)に言を忘る

 

 

 

 

 8 大慈悲心

 

   我々は伯爵の重臣ロス氏への紹介状を村長から受け取り、かなりの坂をいくつものぼり、高台になっている町に入った。町の道は馬車が通れるほどであったが、けっこう入り組んで、あちらこちらで曲がっていて、商店や背の高い家や低い家が立ち並んでいたが、多くの家は黄色い感じで、二階のバルコニーには洗濯物以外に、鮮やかな花が競うように咲いていた。

その時、例の魔ドリが我らの行く手をふさぐように、飛んできた。ハルリラが気をつけた方がいいですよと詩人に声をかけた。詩人はブアイオリンをさして、「大丈夫。これがあるから」と言った。

魔ドリは詩人の肩に例のものを落とした。詩人の服が囚人服に変わった。

すると、詩人はツイゴイネルワイゼンをかなでた。甘くとろけるようで、気品のある音色が響いた。そうすると、元の青磁色のジャケットに戻った。

あまりにも早い変化に、ハルリラも驚いたらしく、「まるで魔法ではないか」と言った。

ふと、気がつくと知路が遠くにブルーの姿で立っていて、ちょっと微笑してから背中を向け、自転車に飛び乗り、彼女は去った。

我々がしばらく歩いていると、町の中央の方には、立派な城が見え、そこからニ百メートルほど離れた所にロス氏の大きな邸宅があった。

 我々は執事によって食堂のような広間に案内された。外は祭りの太鼓の音がする。透き通った大きな窓から祭りの準備の様子が見える。窓の下の庭の向こうに、すぐそばから、斜面になり、大きな広場になり、真ん中に屋根のついた休憩所があって、そこに、祭りの道具が置いてあるらしい。

もう数名の人達が踊りの練習をしているらしい、そういう人の動きが見える。

 

邸宅の主人である丸い顔をした黄色い顔の中年の男ロス氏がブルーのカーディガンを着て、広いテーブルの上を見ている。

テーブルの上には、豪勢な食事が並べられ、両端には、大きな花瓶に豪勢な花がいけられている。

男の横には、娘と思われるカルナというシックな灰色の毛織物を黒で引き締めたワンピースを着た若い女がいる。

猫族であるようだが、何かすばしこい目の動きと全体の機敏性に富んだ表情の動きから、吾輩はチーター族と考えた。珍しいのとその細身の身体とすばしっこい機敏な身のこなしに圧倒されて、吾輩は挨拶を忘れるところだった。

そんな吾輩の気持ちとは裏腹に、左横に立つ吟遊詩人は鷹揚な会釈をし、ハルリラは右横から度肝をぬくようにさらりと帽子をとって、挨拶をしている。 吾輩はいつのまにハルリラがその素敵な帽子を宿屋で仕入れたことを思い出した。

 

  我々が食卓について、簡単な自己紹介をしている最中に、帝都ローサ市の使者の自殺のニュースを執事が持ってきた。しかしこの話は宿屋で白熊族の大男スタンタから聞かされているので、驚きはしなかった。

使者は伯爵の行動をいさめるために、派遣されたらしいが、背後に異星人の方から多額のわいろを受け取ったという噂を号外によって暴露されたということが、中心の話題となった。

しばらくの間は、そこにいたカルナという娘とロス夫妻と執事が我々というアンドロメダの客を忘れたかのように、その話に、夢中になっていた。

我々も内容は知っていたが、この話がこの人たちに動揺を与えている様子に興味を持って見ていた。

 

「分かった。お前は戻れ、今は大事なお客様が来ている」とロスは秘書に言った。秘書はうやうやしく頭を下げて、広間から出ていった。

「いや、失礼しました。面倒な事件が起きて、ちょつと驚いたものですから」

 

「そのニュース、宿屋で聞いて知ってました」と白熊族の大男は言った。

彼は途中の洋品店で、服を新調していたので、まるで人が違ったように紳士に見えた。

「そうですか。問題は異星人からの圧力ですよ。新政府のトップは首相の林文太郎という異星人に弱い男。

ガンと跳ね返せないのでしようね。彼らの武力が怖いのですよ。」とロスは言った。

「それだけではありませんわ」とカルナは若さをぶつけるように話した。

「林文太郎には ドル箱になるという思惑もあるのですよ。金をとるか、鉱毒を流すのをやめさせるために、鉱山を閉めるかという選択の場合、彼はドル箱をとるでしょう。」

ハルリラが吾輩にしか聞こえない特殊な魔法の小声で、「カルナはスピノザ協会に所属し、それに、週刊誌に寄稿するこの国一流のエッセイストだそうだ」と言う

 

  「せっかく、革命をへて、三十五年」とカルナは言った。

「議会も始動し、隣国との外交も軌道に乗り出したところ、鉱毒事件で異星人とトラブルを起こしたくなくない気持ちも分からないわけではありませんが、鉱毒は清流を汚し、農民の持つ田畑を汚しています。放っておくなんてそんなことができますことでしょうか。」

 

「伯爵さまはどうするつもりなんですか。」とハルリラが聞いた。

ロスは長い口髭をなで、咳払いをしてから話した。

「伯爵さまは右目が見えないということもあって、自分からは中々動けないというハンディを背負っておられるが、純真無垢でおおらかで惑星の平和とこの国の問題解決に前向きの姿勢を持っておられる。

何よりも、市民の人気が高い方です。祭りがありますが、祭りを見れば、分かりますよ。」

「でも、サムライ復活論者というのは変わっていますでしょ」とロス夫人が言った。「飛び道具は卑怯という考えの持ち主ですし」

ハルリラは夫人の解説を聞いて、伯爵の考えが気に入っていってしまった。

ロスは伯爵の側近で、政界にも大きな影響力をもつている。そして、伯爵に色々入れ知恵をつける男として、新政府の改革派と保守派の両方ににらまれているらしい。そのためか、いのちをねらわれているという噂が飛ぶ人物でもある。ロスは自分もいずれ貴族になろうと思っている男であるが、娘は貴族廃止論者というのも、吾輩は話の流れの中で猫族の直感で推測した。

 

  しばらくすると、執事が伯爵夫妻の到着を告げた。伯爵と夫人が入口から入ってきた。そして、主賓席になる、右横の豪勢な椅子に座った。

 

伯爵は席につくと、ロスは日常の挨拶の言葉を丁寧に繰り返した。伯爵はただ、微笑してうなづいていた。伯爵夫人は華麗な衣装に身を包んで、やはり微笑していた。

伯爵がワインに口をつけてから、みんなを見回すと、しゃべり始めた。

「異星人は和田川上流の銅山をいつの間に占有しましたね。彼らの技術が大きな銅山を発見し、そばには錫もあるから、これで青銅器が出来る。

わが向日葵惑星のテラヤサ国は銃も大砲も今つくり始めた車も青銅が主要な材料になっている。国を富ますには、銅が必要というのが新政府のお偉方の考えです。そういうわけなので、銅山から流れ出る鉱毒の問題をわしが抗議したら、使者に手紙を持たせて、わしを説得しようとしたのです。首相の林文太郎の手紙を読みました。私はただ 稲に被害が出ているということを抗議しただけなのです。

その結果が、村の農民は早い時期に立ち去れですって。ひどいじゃありませんか。

農民は先祖伝来の土地をそんな風にされれば、怒りますよ。でも、あのままですと、鉱毒が田畑に流れてきて、稲が育たなくなるのでね。

新政府もそんな愚かなことをやらないで、鉱毒を流さないという方法を考えるのが先決ではないのですかね。そうですよ。利潤追求ばかりで、そこに住んでいる人のことを考えないなんて。 」

伯爵はそこまで言うと、ワインに再び口をつけた。

伯爵はワインに陶然としたようなそぶりで、しばらく沈黙した。邸宅の主人であるロスが「使者の手紙には何か特別なことが書かれていたのでしょうか」と言った。

伯爵は「今、話したし、皆さんが知っている他のことは何もありません。新しい客人がおられるのでくどいと思いましたが、号外も見ましたので、わしの感想と主張を知ってもらいたいと思い、喋ったのです。アンドロメダ銀河からのお客さんだそうだね。」

「はい、そうです」と吟遊詩人が丁寧に答えた。

「ま、私の講釈は気にせず、食事をしてくれたまえ」と伯爵は言った。

 

カルナは「伯爵。あたしにもしゃべらして下さい」と言った。

「どうぞ。私がカルナさんが喋るのが好きのはご存知でしょう」と伯爵は口にワインを持っていきながら、言った。

カルナは言った。「皆さん、ご存じのように、銅を精錬する際に出てくるのは恐ろしい鉱毒です。それが、我らが誇る清流に流れ込むわ。異星人は金儲けのためにきたので、文化交流が目的ではありません」

 「しかし、そこを話し合いで、良い方向に持って行くのが大切」と伯爵は微笑した。伯爵の殿様は痩せていて、キリン族のせいか背の奇妙に高い人で、顔も首も長く、目は瞳が見えないくらい細く、こちらを優しく見つめている。しゃべり方は優雅でゆったりとして、まるでショパンのピアノ曲のようだった。

 

  カルナは伯爵に微笑を送り、喋った。「異星人の銅山には、鹿族の労働者が集められ、安い賃金でひどい労働がおこなわれています。

川の中流には銅の車の会社がつくられ、彼らの惑星では地球型の高性能の水素自動車が走っているというのに、我らの国を文明の低い惑星と見下し、あのようなへんてこな車の製造をして売りつけている。

排気ガスは出るし、車の騒音も相当だし、あれなら、まだ馬車の方がはるかにいいですよ」

「まあ、買う連中がいるからね」と父親のロスが言った。

「それに、車の工場の中身は鉱山にまけず劣らず、労働状態はひどい。労働時間は長い。残業代は出ない。トイレに行くことすら、監視されている現場もひどいのです」とカルナは言った。

  

「異星人だけでなく、隣の国ユーカリ国の動きも気になりますな}と大金持ちのロスは言った。

「わしはな、」と伯爵は言った。

「銃も大砲もいらない。剣だけで十分だ。改革派と保守派が占拠している新政府のように、軍拡を進めることばかり考えていると、結局、新式の銃の開発、大砲と武器はどんどん発達していくばかり、科学は軍に奉仕することになってしまう。金は軍に奉仕するだけで、庶民のための福祉にまわらない。

 

こちらの福祉を豊かにして、文化を高めれば、ユーカリ国にも異星人にも尊敬されるようになる。そうすれば、彼らと文化交流が出来て、彼らもむやみな要求をしなくなるのではないかな。

 

我らの文化の価値を彼らに認めさせるのだ。向日葵惑星のテラヤサ国にはこんな素晴らしい文化があると異星人が知り、自分の国に報告する方がどれだけ素晴らしいかを教えてあげることの方が、お互いにうまくいく。

 

もしかしたら、彼ら異星人はみかけは経済・経済と言っているが、もしかしたら、あの秘密の宝殿と中に収められている経典を知りたがっているのかもしれない。

そうではないか。」

 

  「宝殿と経典とは何ですか」とハルリラが聞いた。

「いや、わしらも詳しいことは知らん。彼女が知っているよ。宝殿のモナカ夫人。会ってみるかね。彼女の考えは中々、独特でね。宝殿の主人でもある。」

「会いたいですね」と吟遊詩人が言った。

「明日、お連れしよう」と伯爵が言った。

  

「先程の話の続きだが」と伯爵は言った。「隣のユーカリ国の動きも気になるというロスの話ももっともではあるが、

 

その結果は戦争だ。何十万という若者が死ぬ。わしは剣だけで、国はおさまると思っている。

あの剣には、サムライの倫理がある

しかし、銃や大砲やミサイルにそんな高貴な倫理がないではないか。

 

外国勢との戦いをどうするかということだが、ここに、わしが発明研究所をつくった意義がある。

とびきり優秀な気球を沢山つくるのじゃ。真夜中、空から敵の背後にサムライ達を回し、そこから銃を持つ彼らを奇襲し、銃や大砲を奪い、彼ら兵士を傷つけないで、彼らの飛び道具を廃棄するのじゃ。そのためには、優秀な剣士がたくさん必要だ、わしの考えは妙案と思わんか」

 

ハルリラは神妙に聞いていたが、こんなことを言う人は初めてだったので、面食らっているようだつたが、自分の剣の腕が役に立つ場が見つかった喜びがあるようだった。

 

カルナが厳しい表情をした。

「伯爵!  ユーカリ国は、かなりの飛び道具を持っていますよ。夜中でも気づかれれば、気球など、高性能の銃で撃ち落とされてしまいます。そして、その次に来る反撃は今までの平和とビジネスから一転して、怖ろしい武器の攻撃がわがテラヤサ国に襲い掛かり、テラヤサ国は亡びるでしょう」

 

「カルナさんの言う通りかもしれない。ま、何事も話し合いだな。先程も言ったように、文化交流が大切だ。ユーカリ国とて、本音はわが国の文化を知りたがっている。相互の誤解で戦争になる。戦争は愚かな人間の行為だ」と伯爵が微笑した。

 

 

 翌日、宝殿に行った。それは金と銀と宝石で作られた正方形の巨大な建物で、入口が小さかった。

中から、現れたのは三十代半ばの女で、モナカ夫人だった。

 

モナカ夫人は語った。

「ここにある経典は天下の法典であります。私は毎日、読んでいるが、理解するのが大変」

「何でそんな素晴らしいものを外の人にも読んでもらうようにしないのですか」とハルリラが言った。

「理解できないと思うからです」

「それは出版して、多くの人に読んでもらえば、理解できる人も増えるのではありませんか。」

「カンスクリットで書かれているので、これを翻訳する作業はいまの向日葵惑星の文化と経済力では無理でしょう」

「それではあなたが死んだら、それを読める人がいなくなるではありませんか」

「そんなことはありません。私の親族はたくさんいますが、その中でこれを読めるのは二十人います。みな優秀な人材で、親族の中から選ばれ、代々、この宝殿を二十人で守ってきたのです。この人たちはこれをみんな習得して、この宝殿を守るのに、長いこと尽力してきたのです」

  「率直に言って、どんなことが書かれているのですか」と吟遊詩人が言った。

「アンドロメダ宇宙と人間の真理が書かれているのです」

「具体的に言って下さい」

「無理なことをおっしゃる。あえて分かりやすく言うならば、物と人がこの世界に存在している神秘を宇宙のいのちの働きと見て、そのいのちの表現を知ったヒトがさらに自らの精神を進化させ、神々の住むような美しい町を作っていくにはどうしたら良いかということだ。

我々の街には伯爵さま歴代の善政のおかげで、神々のいる町は守られてきた。

小川にはいくつもの水車がまわり、そこから家庭に電気が送られている。

そして、水。未来に目を向ければやはり、水から、水素エネルギーを作り出すことをめざす」

「水車!」大男スタンタは伯爵の前では、不思議なくらいおとなしく沈黙を守っていたが、水車の言葉に歓喜の声をあげた。皆は一瞬、スタンタの赤い顔に輝く大きな目を見た。モナカ夫人は一瞬、微笑して、さらに話し続けた。

「柳や緑の樹木や、ベンチにはいつも人に美しい優しい声がささやかれているような趣がある。道端の花は微笑している。

困っている人がいた場合には、親切に教えてあげる言葉に、人の心は癒される。

つまり、そういう風に導いたのは、経典に愛が書かれているからです。慈悲が書かれている。虚空が書かれている。

この宇宙を創造したのは大慈悲心であると。

 

  

「慈悲 」

「それから、あなた方の経典に法華経というのがあるでしょう。

あの中に人は如来の室に入り、如来の衣を着、如来の座に座して、しこうして広くこの経を説くべしと書かれていますよね。如来の室とは一切衆生の中の大慈悲心、これは悪口を言ってはいけない。人を傷つけることをしてはいけない。人に嫌がらせをしてはいけない。つまり、ハラスメントをしてはいけないということです。人に親切にするということです。それから愛語です。守られているのでしょうかね。

「如来の室」の意味を地球の方は子供に、そう大人にも言い伝えているのでしょうか。

そういう基本のことを知らないようでは、法華経の神髄に入ることは難しいのではないでしょうか。

 

 

 「あなた方の経典にはそういうことが書かれているのですか」

「はい、書かれています。それが一番大切なことで、その基本を忘れてはまずいです。宇宙の大真理は銀河系宇宙に行こうがアンドロメダ宇宙に行こうがみな同じです。」

 「春のそよ風が吹く

  そよ風にのって、慈悲の心も運ばれてくる

  花に、樹木に、空の雲に、慈悲の種はまかれていく

  愛語は惑星のいたる所に、音楽のように響いていく

  いたる所にある深いいのちの真理が

われらにほほえんでいく」

そう、モナカ夫人は小声で詩句を朗読して

「これが、最近、私の翻訳した向日葵惑星の経典の一部ですわ。

いかがですか」と彼女は美しく微笑した。

       【つづく】