「この一帯には、何か得体の知れぬモノが潜んでいる……」
去年の夏に高円寺から祐天寺に引っ越してきてからというもの、俺を確実に狂わせていることのひとつに「美味い店の開拓」がある。高円寺にいたころ――いや、もっと前である町田でいたころにも、「美味い店」というのは少なからず近所にあった。しかし、なんというか、違うのだ。この、中目黒から祐天寺、目黒あたりまでの山手通り&駒沢通り一帯の「美味い店」というのは。
●まず、とにかく「美味い」
使っている素材が新鮮とか、仕込みがちゃんとしている、とかは当たりまえ。そもそも、雰囲気が美味い。そこにいるだけで、腹が減る。食いモノがでてくる。かっ喰らう。言葉はいらない。とにかく美味い。五感の全神経が目を経由して舌の上へと吸い寄せられ、ノドと胃の粘膜を心地よく刺激し、恍惚に満ちた満足という名のためいきだけが鼻からぬけていく感覚。ほんとうに美味いというのは、そういうことなんだと知った。
●そして、とにかく「安い」
こんなにありえねー美味さを提供しているのにもかかわらず、なぜか安い。食って飲んでつまんで笑って飲んで寝て食って、3千円前後がほとんど。材料も料理人も最高だろうし、ショバ代も高いだろうに、なんで? と思ってしまう。
●最後に、とにかく「数が多い」
こんなそんなあんな名店たちが、1~2店どころではなく、和洋中イタめしフレンチラーメンその他もろもろまで何十店もある。
とまぁ以上、なんだかちょっとにわかには理解できないグルメストな状況にあるのが、あの一帯なのである。実際に住む前に「ひとり暮らしの聖地」みたいなことを聞いていたけど、なるほどこういうことか! と理解できないながらもガッテンボタンを押しまくり、なのである。
で、冒頭のセリフに戻る。
「この一帯には、何か得体の知れぬモノが潜んでいる……」
それは、雨の日に必ずといっていいほど道端に現れる、でっかい食用ガエルなのかもしれない。いやそれは、「コラーゲンラーメン」で渡辺満里奈をオトした、海新山のオヤジの探究心なのかもしれない。いやむしろそれは、新たな店を開拓するにつれ俺の愛車の塗装を削り取っていく、数々の裏路地トラップなのかもしれない(泣)。
だが、つい先日このあいだ、俺はひょんなことからひとつの答えにたどり着いたんだ。
中目黒駅の改札を出て左へ進み、ブックオフや新鮮組を通り過ぎて右手にミニストップがある交差点を左に曲がってちょっと坂を登ると、「雲居、」という店がある。
ここはジャンル的には居酒屋なんだけど、もうさっきの特徴のすべてを地でいく店で、かつ薄暗くシックでアダルトリッチな雰囲気も最高。店内から見えるところに路駐できるので、ロケーションも最高。いっしょに連れてった“長髪の生涯一音楽プランナー”と、“HG似の元ブルーノート店員”にいたっては、「最高っすよ!」「最高っすよ!」と2人そろってまるで何かにとり憑かれたかのように真っ青になって連呼しだす始末。
正直、俺はこの2人といっしょに来るまで、この店に入るのを躊躇していた。外からは中がどうなっているのかよく分からないし、何より店外にディスプレーされているメニューの値段が、ちょっとあまりに安すぎたからだ。安かろう悪かろう、と思っていた。しかし、そのときはあんまり手持ちのお金がなかったので、なかば仕方なく入ったのだった。
「この店は息子がくれたのよ」
ふと女将さんが言った。
「まじっすか。息子さん何やってんすか」
「国際線のパイロットなの」
「うへぇ」
「それまでずーっと大阪でお父さんとお寿司屋さんやってたんだけどね。そっちはもう閉じて、こっちで悠々自適にやんなよって言ってくれてね」
「うわー、そいつぁ正真正銘のカッコマンだ。ちょっと、写真とかないの?」
「結婚式の写真あるけど見る?」
「見る見る……うわぁ~(←いろんなイミで嫉妬)」
いやはやなるほど、である。息子さんが店を建ててくれたのなら、ショバ代の減価償却とかはいらないだろう。息子さんの知己の人々や、近所に住む人たちに悠々自適に美味いものを供したいというのなら、価格はなるべく抑えて喜ばれたいだろう。
「この一帯には、何か得体の知れぬモノが潜んでいる……」
それは、この「雲居、」しかり、居酒屋「はがくれ」しかり、やきとり「忠弥」しかり、中国茶「岩茶房」しかり、蕎麦「大むら」しかり、etcetc...
つまりは、“家族の絆”だったんだ。
※ちなみに↑の画像は「忠弥」です。ここのすばらしさもそのうちXserve予定。
去年の夏に高円寺から祐天寺に引っ越してきてからというもの、俺を確実に狂わせていることのひとつに「美味い店の開拓」がある。高円寺にいたころ――いや、もっと前である町田でいたころにも、「美味い店」というのは少なからず近所にあった。しかし、なんというか、違うのだ。この、中目黒から祐天寺、目黒あたりまでの山手通り&駒沢通り一帯の「美味い店」というのは。
●まず、とにかく「美味い」
使っている素材が新鮮とか、仕込みがちゃんとしている、とかは当たりまえ。そもそも、雰囲気が美味い。そこにいるだけで、腹が減る。食いモノがでてくる。かっ喰らう。言葉はいらない。とにかく美味い。五感の全神経が目を経由して舌の上へと吸い寄せられ、ノドと胃の粘膜を心地よく刺激し、恍惚に満ちた満足という名のためいきだけが鼻からぬけていく感覚。ほんとうに美味いというのは、そういうことなんだと知った。
●そして、とにかく「安い」
こんなにありえねー美味さを提供しているのにもかかわらず、なぜか安い。食って飲んでつまんで笑って飲んで寝て食って、3千円前後がほとんど。材料も料理人も最高だろうし、ショバ代も高いだろうに、なんで? と思ってしまう。
●最後に、とにかく「数が多い」
こんなそんなあんな名店たちが、1~2店どころではなく、和洋中イタめしフレンチラーメンその他もろもろまで何十店もある。
とまぁ以上、なんだかちょっとにわかには理解できないグルメストな状況にあるのが、あの一帯なのである。実際に住む前に「ひとり暮らしの聖地」みたいなことを聞いていたけど、なるほどこういうことか! と理解できないながらもガッテンボタンを押しまくり、なのである。
で、冒頭のセリフに戻る。
「この一帯には、何か得体の知れぬモノが潜んでいる……」
それは、雨の日に必ずといっていいほど道端に現れる、でっかい食用ガエルなのかもしれない。いやそれは、「コラーゲンラーメン」で渡辺満里奈をオトした、海新山のオヤジの探究心なのかもしれない。いやむしろそれは、新たな店を開拓するにつれ俺の愛車の塗装を削り取っていく、数々の裏路地トラップなのかもしれない(泣)。
だが、つい先日このあいだ、俺はひょんなことからひとつの答えにたどり着いたんだ。
中目黒駅の改札を出て左へ進み、ブックオフや新鮮組を通り過ぎて右手にミニストップがある交差点を左に曲がってちょっと坂を登ると、「雲居、」という店がある。
ここはジャンル的には居酒屋なんだけど、もうさっきの特徴のすべてを地でいく店で、かつ薄暗くシックでアダルトリッチな雰囲気も最高。店内から見えるところに路駐できるので、ロケーションも最高。いっしょに連れてった“長髪の生涯一音楽プランナー”と、“HG似の元ブルーノート店員”にいたっては、「最高っすよ!」「最高っすよ!」と2人そろってまるで何かにとり憑かれたかのように真っ青になって連呼しだす始末。
正直、俺はこの2人といっしょに来るまで、この店に入るのを躊躇していた。外からは中がどうなっているのかよく分からないし、何より店外にディスプレーされているメニューの値段が、ちょっとあまりに安すぎたからだ。安かろう悪かろう、と思っていた。しかし、そのときはあんまり手持ちのお金がなかったので、なかば仕方なく入ったのだった。
「この店は息子がくれたのよ」
ふと女将さんが言った。
「まじっすか。息子さん何やってんすか」
「国際線のパイロットなの」
「うへぇ」
「それまでずーっと大阪でお父さんとお寿司屋さんやってたんだけどね。そっちはもう閉じて、こっちで悠々自適にやんなよって言ってくれてね」
「うわー、そいつぁ正真正銘のカッコマンだ。ちょっと、写真とかないの?」
「結婚式の写真あるけど見る?」
「見る見る……うわぁ~(←いろんなイミで嫉妬)」
いやはやなるほど、である。息子さんが店を建ててくれたのなら、ショバ代の減価償却とかはいらないだろう。息子さんの知己の人々や、近所に住む人たちに悠々自適に美味いものを供したいというのなら、価格はなるべく抑えて喜ばれたいだろう。
「この一帯には、何か得体の知れぬモノが潜んでいる……」
それは、この「雲居、」しかり、居酒屋「はがくれ」しかり、やきとり「忠弥」しかり、中国茶「岩茶房」しかり、蕎麦「大むら」しかり、etcetc...
つまりは、“家族の絆”だったんだ。
※ちなみに↑の画像は「忠弥」です。ここのすばらしさもそのうちXserve予定。