goo blog サービス終了のお知らせ 

もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

エリザベス女王の崩御

2022年09月10日 | 欧州

 エリザベス女王が崩御された。

 70年間にも及ぶ激動の時代を英国団結のシンボルであり続けたエリザベス女王に、心からの哀悼の意を捧げるものである。
 女王陛下に関する自分の思い出と云えば、昭和28年の戴冠式である。当時小学校の低学年であったが、ドットの粗い電送写真で見る戴冠式の模様はまるでおとぎ話の世界であった。更に戴冠式にご参列された昭仁皇太子殿下(現:上皇陛下)の渡欧・船中報道は、難しい漢字を教わりつつであったが心躍るものであったと記憶している。後に知ったことであるが、戦後初の皇室外交と位置付けられる殿下の訪英・戴冠式参列によって英国の対日感情は劇的に改善されたとされている。
 「君臨すれど統治せず」の王としてイギリスを牽引された女王であるが、旧英連邦諸国でも尊敬を集めていたらしく、1980年代に交歓したカナダ海軍とのレセプションでは中佐機関長が「クイーンがマイホームを訪問された」と自慢していた。「エッ貴方の家に」と返したら、「イヤ 国(カナダ)に」と云われ、カナダ国民にとっては女王の訪問は他国人に語るほどの栄誉であるのかと思った。
 崩御を受けて即位されたチャールズ三世を含めて、アンドリュー王子、アン王女、孫のヘンリー王子と芳しくない世評に彩られた英王室であるが、エリザベス女王の崩御によって「古き・良き英王室」は岐路に立たされるのかもしれないと一抹の寂しさも感じる。
 海上自衛隊にあってもクイーン余波があり、ガスタービン機関の本格導入を模索していた海上自衛隊は概ね米国GE(ゼネラル・エレクトリック)社製の採用で固まりつつあったが、女王の訪日によって一転して英国RR(ロールス・ロイス)エンジンの採用となった。以後、出力に応じてRRのオリンパス、タイン、スペイエンジンが搭載され、現在のGE社製LMシリーズが採用されるまでの20年間余、海自ガスタービン艦の主力機関であった。

 エリザベス女王の訃報を、何と書けばよいのかと思って調べてみた。以下、Google辞書の解説であるが、
〇崩御:天皇・皇后・皇太后・太皇太后を敬ってその死をいう語。昔は上皇・法皇にもいった。「タイ国王崩御」のように、国王・皇帝・天子の死に対しても用いる。
〇薨去:皇族または三位 (さんみ) 以上の貴人の死去すること。薨逝(こうせい)とも言う。
〇卒去:身分のある人が死ぬこと。特に律令制では、四位・五位の人の死をいう。となっていた。
 現在では公式には位階の無い日本であるが、生前の身分によって、崩御⇒薨去(薨逝)⇒卒去となり、勝手な解釈であるが以下、逝去・死去・死亡と続くのが古来からの用法であるらしい。
 しからば自分の場合は?と考えると、死去くらいは使って欲しいと思うものの近親者の評価では死亡であるのかもしれない。


ノルウェー王女とシャーマン

2022年06月09日 | 欧州

 ノルウェー王室のマッタ・ルイーセ王女が、交際中のアメリカ人シャーマンと婚約したことが報じられた。

 王女は、第4位の王位継承順位にあり、私生活では2016年に離婚して今回は2度目の結婚となるそうである。
 結婚相手のシャーマンはハリウッドセレブを中心に多くの信奉者がいるとされるが、王女自身もスピリチャル(霊感?)な能力があるとしていることから、意気投合したものであろうか。
 高貴な女性と霊的男性の結びつきと聞いて、短絡的に称徳天皇と弓削道鏡、アレクサンドラ皇后と怪僧ラスプーチンが浮かんだが、そのいずれもが政情を混乱させ、ラスプーチンに至ってはロシア帝国崩壊の原因となったとされている。ノルウェーの現状・政体から云って、王女の結婚が直ちにノルウェーを混乱させるとは思えないが、相手がシャーマン(霊媒師)と聞けば、何やらの曲折の予感がする。
 オーム真理教の男性信者があれほどの荒唐無稽な犯罪を引き起こしているので、男の一端に連なる者として大きな口は叩けないが、上記3件には「女性の占い好き・神秘性好き」要因があるのではと思う。その性向が理解できない男性は、道鏡とラスプーチンが女性の崇拝を得て大きな政治権力を握る陰に、納得しやすい下ネタ都市伝説を作り上げて、1件落着としていたようである。
 ウイキペディアでは「シャーマン」を、《トランス状態(通常とは異なる意識)に入って、超自然的存在である神や精霊、死者と直接接触・交流・交信する役割を主に担う役職。呪術者・巫女・祈祷師のこと。》《シャーマニズムは原始宗教の一つである》と解説し、日本の例として、過去の卑弥呼や神功皇后を例挙するとともに、現代のアイヌの「トゥスクル」、下北半島恐山の「イタコ」、沖縄県周辺の「ユタ」もシャーマンに属するとされている。

 超常現象や心霊現象のTV番組があると、コッソリ録画して深夜に一人で観る自分としては、エスパーやシャーマンなどの特殊能力を持つ人は存在するであろうと思っており、宗教の預言者も面壁9年の思索で悟りを得た達磨大師よりも多くの教義を極めて短時間で会得していることを考えれば、超常からの啓示を受けた可能性も完全に否定できないように思っている(教義を信じはしないが)。
 英国エドワード8世に王冠を捨てさせたシンプソン夫人、ヘンリー皇子を篭絡したメーガン妃といずれもがアメリカ人であることを思えば、ルイーセ王女の将来に危うさを感じるのは自分だけではないだろう。
 遠い異国のことはさて置いても、我が皇室もなになら時代の波に曝されているの危惧はあるが。


英仏海峡の物流ストップに考える

2020年12月23日 | 欧州

 英国でコロナウィルスの変異が確認されたことと英国内の感染拡大によって、英国の物流が停滞していることが報じられた。

 物流の停滞は、変異ウィルスの感染力がこれまでの1.5倍とも云われたことで、拡散を恐れたフランスがドーバー海峡の海底トンネルを一時封鎖したことで発生した。昨日になって、フランスが72時間前のPCR検査陰性のドライバーに限って封鎖を解除したために、トラック等の滞留は解消されつつあると報じられているが、英国のEU離脱における不安をも掻き立てる事態となった。
 現代社会はグローバル経済という危険な枠組みで、各国の弱点を相互に補い合う関係で保たれていた。この枠組にある国同士の関係は、共生、共存共栄、Win-Winとも表現されているが、今回のコロナ禍での中国デカップリングが世界経済を混乱させたことや英EU間の物流が停滞したことで英国の生鮮食品の供給が危ぶまれたこと等から、グローバル経済は共生ではなく「相互寄生」であることが明らかとなったように思える。
 生物界での寄生では、概ね寄生生物が宿主を食い尽くすまで止むことは無いが、グローバル経済のように、それぞれが寄生生物であると同時に宿主である場合の終着点は共倒れであるように感じられる。この危険性を早くから予見していたのは中国であろうと思われる。そのために中国は何をしたかと云えば、来るべき時に備えて、産業スパイで先端技術を窃取して自立を図るとともに、利益や労働力のために先進国が手を引いたローテク製品供給を一手に引き受けていたものと思われる。この代表例が、電磁カタパルト装備の空母建造であり、月の土を持ち帰ったことであり、特に、製品組み立てに絶対必要はネジ類の7割以上を中国からの輸入に頼っていた日本の軽工業が、中国からの輸入が途絶した途端に需要に応じられなくなったことでも明らかであるように思う。さらに、物流拠点整備という美辞麗句で指導者を懐柔し、中国資金と中国人労働者で整備した途上国の港湾施設や国際空港が、ことごとく中国の租借地に姿を変えたのも、共生ではなく中国が寄生生物として宿主を食い尽くすことを企図した上でのことと思われる。

 現在オーストラリアは、中國に汚染された前政権の中国寄り政策を清算しようと必死の努力を重ねており、高名な華僑の追放、ロビー活動の監視、中国企業の活動制限等を行っているが、中国からの農産品に対する高関税賦課等の対抗措置(反撃)を受けて、中国擁護の前政権幹部が中国帰依に戻ろうと暗躍しているようである。かねてから、豪州知識人から、「今の豪州は明日の日本」と警鐘を鳴らされていたが、ようやく日本は外国人の土地所有に関する調査に重過ぎる腰を上げた段階であるのは、いかにも先行きに不安を感じるところである。


チェコ上院議長の訪台に思う

2020年09月07日 | 欧州

 チェコのビストルチル上院議長の訪台が、欧州の親台/反中の風潮を加速させている。

 ビスルチル議長の訪台は、親中のゼマン大統領の「子供っぽい挑発」との反対を押し切って財界人を含む約90人の代表団を伴って行われ、さらに議長は立法院の演説で「私は台湾人」とさえ付け加えた。「私は台湾人」というフレーズは、1963(昭和38)年、冷戦下で共産主義国に囲まれて経済的、社会的不安を抱えていた西ベルリン訪問中のケネディ大統領が「私も一人のベルリン市民」であると演説して、ベルリン支援の不変・継続を約束して200万人の西ベルリン市民を鼓舞し西ベルリンの赤化を阻止した故事に依っている。ビストルチル議長の訪台と演説に対して中国政府は報道官が「内政に干渉するあくどい行為」と紋切型の反対声明を出すにとどめていたが、折から欧州歴訪中の王毅外相がドイツ外相との会談や記者会見で「訪台は一線を越えた。14億の中国人民を敵に回すもので高い代償を支払わせる」と述べ、会見でもドイツ外相から「脅迫は相応しくない」と直接批判されたとされている。王毅外相の欧州歴訪は、医療・経済支援を手土産に中国コロナによる嫌中の雰囲気を払拭することと米中経済戦争の突破口をEUに求めるものであったが、王毅外相の発言は香港問題やマスク外交で既に進行していた中国警戒感に恫喝外交という新たな危険要因を加えることとなり、比較的友好関係にあった独仏や一帯一路構想で取込みに成功しつつあったスペインをも反中に押しやる結果となったように感じる。台湾にとっては2週間前のアメリカのアザー厚生長官に続く外国高官の訪問であったが、ビストルチル上院議長訪台の意義は、蔡総統の「大国ではないチェコ要人が中国の圧力に屈することなく台湾を訪問した意義は大きい」との言葉に尽きるように思う。

 尖閣諸島という領土問題を抱えるに日本の台湾姿勢の一端は、李登輝総統の弔問団(総勢11名)の編成と行程に暗示されているように思える。弔問団の構成は、森喜朗元首相を団長として当初は超党派国会議員7名(自民4名、公明・国民民主・維新各1名。立憲民主党は「適任者がいない」として不参加表明)に日台交流協会の谷崎泰明理事長を加えた9名の予定であったが、立憲民主党はあからさまな媚中姿勢が批判されたために急遽中川正春衆議院議員の参加を決めた経緯がある(他に自民党の長島昭久議員も追加参加)。行程については、専用機で9日午後2時40分に台湾に到着、4時に蔡英文総統を表敬訪問、5時に台北賓館で李登輝氏に弔意献花して即日帰国という日帰りであった。弔問という儀礼的行為にも中國に阿る立憲民主党は代表団参加に消極的、共産党は当然に拒否であったことや、台湾のコロナ対策の制約としているものの中国を刺激しないために日帰りの弾丸ツワーとしたところに日本政府や政党の対台湾姿勢が凝縮されているように感じた。子供じみた考えと笑われるだろうが、弔問団の増員や滞在期間の延長を作為して、香港・尖閣・コロナ問題に対する中国へのメッセージとして欲しかったと思っている。


シリア内戦は対トルコ戦争に

2020年02月29日 | 欧州

 シリア軍が自領イドリブ県を空爆して、トルコ軍兵士70人を死傷させたことが報じられた。

 これを受けてトルコは報復攻撃の可能性を示唆し、シリアを支援するロシアは巡航ミサイル艦2隻を地中海に派遣すると発表した。2010年以降のアラブの春に触発された反アサド政権デモに始まったシリア内戦であるが、対IS(イスラム国)戦争を挟んで現在はトルコとの対外戦争に発展しているように思われる。また、トルコは国内のシリア難民をヨーロッパに移動させるともしており、EUは再びシリア難民への対処を余儀なくされるし、中東諸国で唯一加盟しているNATOも踏み絵を迫られることになる。ほぼIS勢力を制圧したとして軍をシリアから撤退させたアメリカであったが、NATOの盟主として何らかの軍事支援・軍事行動を余儀なくされるのではないだろうかと懸念する。対外戦争は新たな難民を生むこととなるが、既に難民受け入れの限界に達している隣国のイラク・ヨルダン・エジプトは国境を封鎖するであろうし戦闘地域に対する国連の人道支援も不可能になる。平和な日本にあっては実感できないが、当てもなく漂流する覚悟で国を捨てるとはどのようなものであろうか。途中で命を失う可能性もあり幸いにして他国にたどり着いたとしても、近年のドイツの変質に見られるようにそこが安住・安息の地であるとは限らない。難民に対する国際世論の注目も、時が経てば風化して支援も先細りするものだろう。現に日本でも、発生当初は連日報道されたシリア難民、ベネズエラ難民、中米のキャラバン、ロヒンギャについてのマス・メディア報道は見かけなくなったし、ネット上の記事も更新されない状態である。自国の正義を貫くために宣戦布告して開戦する「戦争」は、国民の支持や後押しがあって成立するものであろうが、国内の権力争いに武力を行使したり他国の武力介入を頼んで同胞・隣人同士が殺し合う内戦は、大多数の国民の支持を得たものではないだろうと考えるし、それ故に内戦からは多くの難民が発生するのではないだろうか。

 中東情勢は将に世界の火薬庫であり、いつ爆発しても不思議はないが、シリアとトルコの戦闘がこれ以上拡大しないことは誰しもが望むものであると思う。戦闘地域から離れているとはいえ蠢動しているイランがシリア紛争を好機として行動をエスカレートすることも考えられるので、現地に派遣している自衛艦やタンカー運航に被害が及ぶケースも考えられる。米露が介入すれば代理戦争となり、米露が手を引けば中朝が浸透して内戦となる中東地域、安定する妙案はないのだろうか。