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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

USスチール買収の行方

2025年01月06日 | アメリカ
 日本製鉄のUSスチール買収計画が頓挫している。
 両社から約1兆4千億円で買収に合意したと発表された際、自分は”USスチールが買えるの?”と思った。はたせるかな、全米鉄鋼労働組合(USW)が反対声明、 買収計画を審査する対米外国投資委員会は結論を出せずに大統領に判断を丸投げ、バイデン大統領は国防生産法の対象企業として売却不可の判断を示して現在に至っている。
 USスチールは1901年の設立当初はアメリカの鉄鋼生産の3分の2を支配していたが技術革新に失敗して順次シェアを落とし、昨年には24位まで下落しているとされる。
 何故に国内シェア24位の鉄鋼会社の買収ができないのか考えれば、偏に「USスチール」という社名が原因であるように思う。「US」を冠した社名が、国民に“アメリカ製造業の象徴・鉄は国家なり”のシンボルで、最強国アメリカが幾度の戦争に勝利した原動力・牽引力という印象を与えているのではないだろうか。もし社名が「デトロイト製鉄」であったならば、国民感情・対米外国投資委員会も「アッそう」程度で終わるように思える。
 トランプ次期大統領も買収不可の姿勢で、日本製鉄は法廷闘争も已む無しとしているようであるが、日本政府に特段の動きが無いのは気がかりである。もしUSスチールは国防生産法の対象というバイデン大統領の認識が米国民の認識と等しいのであれば、アメリカの戦時生産に僅かでもの貢献、若しくは発言力を得ることができるチャンスであり、政府は座視すべきではないように思う。報道によると、武藤経産大臣は「重大な関心を持っている」と述べているようであるが、ハテ?何に対して関心。何に興味。まさか、自分と同程度の野次馬的関心ではないだろうが、政府お得意の遺憾砲ほどの効果もないコメントであるように思える。せめて「同盟国として、強いアメリカ建設に寄与し、緊急時には応分の協力ができるよう、買収実現を願う」程度の援護はできないものだろうか。
 鉄血宰相と呼ばれるビスマルクが議会の演説で《現下の大問題の解決は、演説や多数決によってではなく鉄(軍事力)と血(犠牲)によってなされる》と呼びかけたが、鉄の意味は次第に文字通りの鉄そのものに変質し、1901年の官営八幡製鉄所の火入れ式では初代首相の伊藤博文が「鉄は国家なり」と社員を鼓舞したとされる。
 ”ラストベルト”の代表格とされて、米財界も持て余している感ある「USスチール」であるが、名前持つ印象からか更なる運命が待ち構えているように思う。

多様性重視風潮に揺り戻し

2024年12月21日 | アメリカ

 ナスダックが上場の基準として設けている多様性に関する基準が無効と判断されことが報じられた。

 2021年にナスダックは米証券取引委員会の承認を得て、上場の基準として取締役に女性やマイノリティーが一定の割合で登用されていることを設けていたが、これが逆差別を招くとして裁判所が無効と判断したものである。
 報道によると、アメリカでは「多様性・公平性・包括性(DEI)」の取り組みが行われており、特に2020年に起きた白人警官による黒人への暴行死が取り組みを加速させたとされている。
 今回の訴因は「人種やジェンダー意識を個人の能力よりも高く評価する傾向」であるとされているので、アメリカ社会全体でも「過ぎたDEI」に対する是正・揺り戻しが起きているようである。また、多くの企業でDEI対処の部署が縮小・廃止されるという事態も起こっているそうで猶更である。
 日本でも雇用機会均等法などによって女性の地位向上が図られて、それなりの成果を上げているようであるが、「能力において女性候補者とほぼ同等か僅かに上回っている男性が」男性と云うだけで昇任や昇給について女性の後塵を拝することは無いのであろうか。
 これまで日本では、主として黒人やヒスパニックなど人種的に使用されていたマイノリティー(少数派)という用語も、近年のジェンダー平等思想の普及につれてLGBTも「マイノリティー」の範疇に加わって来つつあるように感じるので、将来的には健常者と云うだけでLGBT者に後れを取るケースも起きる可能性があるようすら思える。
 かって雇用機会均等法成立のきっかけを作ったウーマン・リブの闘士が、「法に依ってしか守られない平等には何の価値もない」と述べていたことを思い出す。おそらくであるが彼女は、法に依る規制や庇護は、現在の様な軋轢・分断・不平等をひき起こすだろうことを既に予知していたのかも知れない。
 「アメリカの現在は数年後の日本」と云われるが、日本で現在営々・嬉々として取り組んでいるジェンダー平等施策も、数年後にはアメリカ同様に「逆差別の温床」とされるのかも知れない。

 文中に「LGBT」という字句を使用したが、最初に浮かんだ言葉は性同一性障害者であった。この言葉が適当かどうか調べると、実にいろいろな症状・名称・分類があり、精神医学の知識が無い自分では理解できなかったので、分かりやすいLGBT(L:レズビアン(Lesbian)・G:ゲイ(Gay)・B:バイセクシュアル(Bisexual)・T:トランスジェンダー(Transgender)を使用した。更にLGBTも、最近はQ:クエスチョニング(迷っている人)を含めた「LGBTQ+」と変化しているらしいが、自分の頭では処理困難。
  現在、喫煙者も大きく減少しマイノリティーと呼ばれるに十分に相応しいと思うが、何の恩恵・庇護もないままに来春には増税=値上げが決定したらしい。嗚呼!!


アメリカの銀行破綻とは

2023年03月14日 | アメリカ

 アメリカの2銀行の破綻が報じられた。

 最初に、以下の記述は経済音痴の故に誤解などが多いだろうことを予めお断りさせて頂く。
 10日にカリフォルニア州を拠点とするシリコンバレー銀行が、12日にニューヨーク州のシグネチャー銀行がそれぞれ経営破綻したことで、先進国では珍しい「取付騒ぎ」が起きている。
 2行の経営破綻は、相互に影響しあったいわゆる連鎖倒産ではないものの、連邦準備制度理事会(FRB)による金利引き上げが共通の原因とされているようである。
 米財務省とFRBは、2行の経営破綻は限定的なものでリーマンショックの再来ではないとするとともに取り付け騒ぎ沈静化のために「全預金者の完全保護」を表明したが、経営破綻の原因が原因だけに全銀行にも破綻や業績悪化の可能性があると指摘されていることを思えば、他行も安泰とは呼べない事態かとも思える。
 「経済は生き物」と呼ばれるが、経済政策の一環として金利を操作すると専門家でさえ予測できない副作用が出るものであるらしいことは、「抗がん剤治療」が思わぬ副作用を引き起こすことと似ているように思える。
 アメリカは、中国との経済摩擦で低迷する国内経済刺激策として低金利を導入したが、ウクライナ事変という外的要因も加わって急激な物価上昇・悪性インフレを招いた。そのためにインフレ抑制のために段階的に金利を引き上げたが、引上げに際して考えもしなかった銀行の信用不安という新たな事態を招いてしまったと理解している。
 日本でも、穏やかなインフレを目指したアベノミクスでゼロ金利の金融緩和を採用したが、数年かかっても初期の目的は達し得なかった。そのため、識者やメディアでは景気刺激策としての金融緩和は有害で撤廃すべしとする主張を良く耳にしたが、その方々は今回のアメリカ2行の例で示された「金利を操作することで出現した想定外の副作用」をどのように観ているのだろうか。

 今年はかっての「春闘」を思い出されるような労使の攻防が再現され、長年に渡って一時金や賞与で肩代わりされ続けた賃上げについても「ベースアップ」が相次いでいる。
 この様変わりは、ウクライナ事変によってもたらされたものであることは間違いなく、更には防衛装備増強にまで及んでいることを思えば、ロシアの横暴が引き起こしたウクライナ事変は日本にとって「令和の黒船」のようにも思える。
 預貯金の利息が1%であっても0.0001%であっても大して違わない貧民の自分ではあるが、米銀行の信用不安が浦賀(今は成田?)に上陸すれば、それは大ごとで、金利を操る黒田総裁イヤ植田総裁には熟慮をお願いしたいものである。


米国の中間選挙に思う

2022年11月04日 | アメリカ

 アメリカの中間選挙が大詰めを迎えている。

 報道を観る限り、民主・共和両党の対決だけではなく、両党に共和党トランプ派を加えた三つ巴の様相を呈して当落を測り得ない様相を呈しているらしい。
 混迷・混乱の原因は、民主党バイデン大統領の指導力不足と民主党左派への警戒感に起因するようで、大統領選の揺り戻しであろうと推測している。特に、グランドデザインを持たないままの移民寛容政策、ウクライナ侵攻を許したことが大きな要因ではないかと感じているが、トランプ氏の強権を嫌ってバイデン氏を選んだものの、バイデン氏の健康不安に加え、大統領職継承順位2位のカマラ副大統領、同3位のペロシ下院議長が揃って急進左派であることから、有権者がアメリカの左傾を懸念している様子が見て取れる。
 また、大統領宣誓式で「ノー・サイド」「分断融和」を訴えたものの、就任後に相次いだ韓国の積弊清算にも似た前政権の全否定は、国民の更なる分断を煽る結果となったようである。
 移民寛容政策は、単に民主党に投票することが期待できるマイノリティ層拡大を目論んでのこととは衆目の一致するところであるが、トランプ以降の不法移民の急増でメキシコとの国境を持つ4州では対応に苦慮しており、白人富裕層の多い地区に不法移民を飛行機で送りつける州知事も現れた。この空気を読んだかバイデン政権も、メキシコへの不法移民強制送還を拡大するとしたが、この決定もメキシコを含む国境4州の混乱に拍車をかけるだけと冷ややかに受け止められている。
 ロシアのウクライナ侵攻を許したことも共和党政権の失点と捉えられているようで、失点回復のためであろうかペロシ下院議長に台湾を訪問させるという演出を見せたが、これに関してもホワイトハウス報道官は、対中曖昧戦略の転換ではないという隔靴掻痒に終始している。
 これらの様相を観ると、有権者の間には強いアメリカを再興しつつあったトランプ氏復活待望論は想像以上に根強いように感じられるが、大統領権限が屹立しているアメリカでは、例え上・下院で共和党が過半数を占めたとしても、大統領への対抗手段は予算案の否決くらいしかできないために、アメリカの左傾を食い止めるには次期大統領選まで待たなければならないように思える。

 一旦預けたものの「空白の3年間」しか残せなかった日本の民主党、一旦期待したものの「市場の混乱」を招いて45日間で首相を見限った英国、ウクライナ人の生命と世界の食料・エネルギーを混乱させる要因となったバイデン氏、一時の熱狂と一点のみの期待感で選ばれた指導者が辿る道筋を示しているように思える。
 おりしも国会では、憲法も軍事も忘れたかの「統一教会一点」の論議に狂奔しているようであるが、経験に学ぶことを知っている賢明な有権者は、おいそれとは立憲民主党に政権を託す愚は侵さないと思っており、ガリレオ風に「それでも北朝鮮のミサイルは頭上を飛び交っている」と嘯く事態にはならないことは確実であると思っている。


イーロン・マスク氏を学ぶ

2022年10月23日 | アメリカ

 イーロン・マスク氏の言動が波紋を広げている。

 氏は、宇宙開発企業スペースXや電気自動車企業テスラ等のCEOで保有資産は3020億ドル(約35兆円)とされており、アメリカン・ドリームを絵に描いたような人物と思っていた。
 ウクライナ事変では、ウクライナの要請に応じる形でスペースXの運営するスターリンクシステムを提供するとともに約2万台のスターリンク端末を寄付してロシアに破壊された官/軍/民の通信インフラの代替機能を果たし、ウクライナの継戦に於いては正面装備供与に劣らない貢献をしていると思っていた。しかしながら、10月14日には米国防総省に「ウクライナでの無償提供は自社のみでは無期限に継続できない。継続する場合は資金提供が必要」との書簡を送ったことが報じられ、何やら冷水を浴びせられた思いがした。当該書簡は翌日には撤回されたとされているが、アメリカのウクライナ直接支援には含まれない解決が図られたのであろうと邪推している。
 一昨日、マスク氏が「台湾を一国二制度の下に中国化する選択肢もある」との発言が報じられた。香港で立証された「中国の横紙破りによる一国二制度の破綻」を忘れたかのように・アメリカの台湾政策を無視するように、中国政府の公式見解そのままの発言をしたことは、氏にとって上海にあるテスラの権益保護以外のことは脳裏に無いようにも思える。

 マスク氏は、多くのアメリカ大企業と同様に民主・共和両党に政治献金しているものの、政治的には中道より「やや右寄り」との評価が一般的であるが、ウクライナ支援や台湾に関する発言を観る限り、右も左もない「金銭至上主義者」と呼ぶべきであるようにも思える。
 彼の国籍がどうなっているのか判らないが、Wikipediaで眺めた彼の生い立ちは、高校までは南アフリカで、大学は母親の出身地であるカナダで過ごした後にアメリカに移住したとされているので、恐らく多重国籍者であろうと思っている。
 カルロス・ゴーン氏の拝金主義が露わになった際、ゴーン氏がポルトガル・レバノン・フランスの多重国籍であることを知ったが、貧乏人の僻みで云えばマスク氏にもゴーン氏と同種の匂いが感じられる。
 かって、祖国を持たない漂流者のユダヤ人が信じる物は銭だけといわれてきたが、多重国籍者が忠誠を尽くす対象は国家以外であるようにも思える。
 云わずもがなの一言「蓮舫議員、如何ですか」