日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

「戦いは五分の勝ちをもって上となす」 

2020年02月14日 07時36分46秒 | 政治
 「戦いは五分の勝ちをもって上となす」、これは武田信玄の戦陣訓である。
 「総理、最後に申し上げる。『タイは頭から腐る』という言葉、ご存じですか。これは英語とかロシア語でもある。死んだ魚の鮮度は魚の頭の状態から判断できる。従って、社会、国、企業などの上層部が腐敗していると、残りもすぐに腐っていく。総理が桜とか加計とか森友とか疑惑まみれと言われているから、それに引きずられるように官僚の示しがつかない。官僚の皆さん、かわいそうだ。心痛めてる官僚の方、たくさんいると思う。子どもの教育にも悪い。長期政権だからじゃないですよ。最初からやっているんだから、桜を見る会も。森友だって、総理大臣になる前から講演に行こうとしていた。ここまで来たら、原因はタイの「頭」(註:「」は筆者)。頭を代えるしかないのではないか」(2020/02/13毎日新聞)
 これは、一昨11日の衆院予算委員会、立憲民主党の辻本清美氏の「タイは頭から腐る」発言を伝える新聞記事である。この「頭から腐る」俚諺については安倍首相夫人がかねて<勤務>?していた「株式会社電通」社が発行する「電通報」に「魚も組織も頭から腐る」と題して次のように解説している。
 「魚は頭から腐る」は西洋のことわざですが、企業や組織でも「組織は頭から腐る」という言葉が使われます。「頭」とは、社長など組織長を示しており、社長の社内での無理な業績要求や、目標達成を過度に追求する姿勢・発言が、組織(企業)を腐らせることを表現しています。要するにこの言葉は、危機管理におけるトップの重要性を訴えている言葉なのです」
 なんと辻本議員のことわざ引用の適格さを裏書きしている解説ではある。辻本氏は、安倍内閣の首領たる安倍晋三首相が「腐っている」とか、まして安倍晋三氏その人の「頭が腐っている」とは全く言っていないが、組織論的に「魚が頭から腐る」ように「安倍内閣は<腐っている>」と決めつけたものだ。しかし、この発言への安倍氏の反応は強烈だった。思わず知らず議席に座ったままで「意味のない質問だよ!」とNHKのマイクに収録される程の大声で野次が口をついて出てしまったようだ。
 氏は、この後で質問に立った同じ野党の逢坂誠二議員とのやりとりでその悔しさをにじませていたが、ここから見えてくるのは、どうやら辻本議員が譬えた「魚の頭」そのものを安倍氏は「自身の頭」と解釈し、「あんたの頭は腐っている」と愚弄されたと受け取ったのではないだろうか?
 もとより、対話や論争の中で相手がする解釈は勝手とは言い状、やはり「惻隠の情」というものは紳士淑女のたしなみとして持っていて欲しいものである。安倍氏にしてみれば、弱点の国語力の弱さから今国会でもまた新たに「私は、幅広く募っているという認識だった。募集しているという認識ではなかった」という「迷言」を残してしまったばかりである。自らの「頭」に自信を喪失していてもおかしくはないはずだ。辻本議員には、「惻隠の情」について大いに学んでもらいたい。
 武田信玄の名言「戦いは五分の勝ちをもって上となし、七分を中とし、十分を下とす」。辻本氏は「十分」を取ってしまった。愚策である。