「9日の米アカデミー賞で、日本出身のカズ・ヒロ(辻一弘)さんが、メーキャップ・ヘアスタイリング賞を受賞した。2018年に続いて2度目の栄冠だが、授賞式後の会見で日本について問われると『文化が嫌になってしまった』と辛口のコメントをした」(2020/02/11朝日新聞)。
記事によれば、日本人記者からの「日本での経験が受賞に生きたのか?」と質問されたのに対するこれが回答で、「こう言うのは申し訳ないのだが、私は日本を去ってアメリカ人になった・・・日本の文化が嫌になってしまったし、日本で夢を叶えるのは難しいから今はここに住んでいるのだ。ごめんなさい」と語ったという。「分かるような気がするなぁ!」と、この記事を読んだ日本人の決して少なくない人々が共感したのではないだろうか?
元日本人で国外で活躍し有名になった人が出現すると「さすが日本人」とか、「やっぱり日本人」とか、「日本人の美観はすぐれている」式な称賛が沸き起こる。いかにも田舎っぽい感想だ。多くの場合、この種の人士は日本に居たのでは自分の才覚が発揮されないと思ったればこそ国外に出て、持てる能力を磨き得たのであろうに・・・。この手の人が現れたらその都度、なぜ日本に居たままではできなかったのか、と大いに探求して、反省材料とすべきであろうに・・・。
記事中で、質問を発した日本人記者には固定観念として「メーキャップ・ヘアスタイリング賞」という美的感覚に関する評価であるから、日本人の「繊細な感覚」が生きていたとでも答えて欲しかったのであろう? だとすれば、それがそもそも定型で、日本的で、日本人的であって、カズ・ヒロ氏はそれがイヤでアメリカに「逃亡」して、こうして成功したのであろうに!
近頃チマタに流行る「美しい国=日本」、「ニッポン凄い!」式の風潮、これこそがこの国の衰退のテンポを速めている気がしてならない。
この米アカデミー賞では、「パラサイト 半地下の家族」なる韓国映画作品がオスカーを獲得、他に「作品賞」など4部門総なめにして受賞したという。アルファベットを使わない文化圏で初の受賞という。聞けば韓国に蔓延している格差社会を痛切に批判した作品だという。伝え聞くかの国の現実からして、また、そのまま日本の現状からも、その批判精神を大いに讃えたい。
また、これについて北朝鮮の政府筋から、格差社会の「南」に比べ、「『わが国』は総統の指導のもとで国民は(格差が無くて)幸せだ」と報じているという。いやはや、上記日本人記者の意識は、北朝鮮政府に酷似していたということらしい。