「皆さん。今日は嬉しいニュースがあります。外国人の方々にも地方参政権がもらえるかもしれないのです。」
京子先生はいつもよりウキウキとした顔で、言った。学校も6時限を終えたホームルームでの出来事だった。壇上に立ち、明日の体育のソフトボールチームの割り振りを終えた直後に発せられた言葉に、小学6年生の児童達は不思議そうな表情で京子先生を見つめている。
「この地方参政権というのは、外国人の人たちが、日本の政治に投票が出来るということなの。今までは、外国人に対する差別・・・と言うか、日本の閉鎖的な部分があって、反発もあったの。それに、皆には難しいかもしれないけれど、憲法第15条と言う国の法律があって、政治は、国民主権。つまり、国民の総意でなければ、ならない、いうことがあって、実現はされなかったの。」
京子先生は、不思議に首をかしげる生徒達を見渡しながら、続けて言った。
「でも、この法律が通れば、外国人という差別も無くなって、もっとたくさんの国の人たちと仲良くなれるのよ。世界中のお友達と仲良くできるのは、素晴らしいわよね?」
やがて、1人また1人と女子生徒たちが少しずつ頷いていく。その反応を確かめながら、京子先生は続ける。
「日本人と外国の人が安心して、楽しく、仲良く暮らせる日本にしたいものねぇ~。差別を無くして皆と同じようになれるのは、とてもいいことでしょ?」
満面の笑顔で語りかける京子先生にやがて、生徒達は同意の頷きを返していく。だが、そんな中で、博史は俯きその話に耳を貸そうとしない。頑なな態度で机の上をぼんやりと眺めていた。
「ねっ!博史君!」
弾かれたように、顔を上げた先には、京子先生の笑みが視界に入った。博史は不気味なその笑みに、背筋の凍るようなものを感じていた。
「この法案が通って欲しいわよね、博史君」
同意を強制するかのような笑顔とは裏腹な濁った声。周囲の生徒達が、好奇心いっぱいな視線を浴びせて、博史の言葉を待つ。周囲の悪意の無い無邪気な視線。博史は震える唇をかみ締めると、ゆっくりと京子先生に言った。
「ぼ、僕は、そんな法律いらないと思います。」
一瞬、京子先生の顔が真顔になり、周囲にどよめきが起こる。
「まあ、博史君たら、他の国の人と仲良くするのが悪いと思うのかな?」
不敵な笑みを漏らす京子先生は、博史を見下したかのような視線を浴びせた。そして、周囲も同様だった。
「ちょっと、博史君。世界の人と仲良くするのがいけないことなの?」
「本当、KYなんだから。」
「ただ、目立ちたいだけよ。」
女生徒からの容赦ない誹謗・中傷が投げつけられ、冷たい視線が博史に集中する。博史は、言い返す手立てもないまま、的になるかに思えた。だが、そこに救世主現る。
「ちょっと待てよ!」
そう言って、博史を庇ったのは、親友の正治だ。正治は、立ち上がり周りの目を自分に惹きつけると間髪いれずに捲くし立てた。
「外国人参政権自体、平等と平和とは、全く繋がらないよ!大体、平等にしたから仲良くなれるなんて、幼稚な発想だよ!外国人って一言でいっているけれど、この国には、在日朝鮮人や留学生、外国人労働者なんて大量にいるんだよ!自分の親が払っている税金だって、こうした人間を養うために使っているのに、なんで参政権なんて必要なんだよ!」
「いや、それは正治君、間違って・・・。」
京子先生が口を挟もうとするのを、博史が止める。
「先生!黙ってってよ!人がしゃべっているのをちゃんと聞くようにいったよね?」
「・・・・・。」
正治は、黙った京子先生を確認すると、皆に語りかける。
「でも、こうした話をしても、大抵の人は気づかないか、見てみぬフリをするのさ。少しぐらいいいだろうって甘やかすんだ。自分には関係ないって他人事としてしまう。だから、今まで日本の教科書問題や国旗国歌問題が、他人事に摩り替わったことにすら気づかないんだ。小さなことから目を背けることで、いつの間にか落とし穴に嵌まるってことを知るべきなんだよ。」
「でも、周りの外国の人と仲良くするのは、いいことだと思うわ」
春子が正治を見上げながら言う。
「それは、あくまでも、個人的な話だろ?外国人参政権って言うのは、国と国の話なんだよ。それは、経済的で、政治的な問題に発展する可能性があるわけで、戦争にだってなる可能性があるんだよ。」
「そ、そんな・・・。戦争なんて全然関係ないじゃない。」
「それが違うんだよ。政治的解決と言う、最終手段が戦争なんだよ。参政権が発生して、地方が外国人に乗っ取られる可能性があるんだよ。しかも、そこの自治体で、外国人の移民を自由化する法律を立案して、しまったら、どうなると思う?その地域が外国人だらけになって、治安が悪化して行政も立ち行かなくなる。その状態は、まさに戦争だろ。」
皆は、その言葉に静まり返った。だが、その静けさを打ち破ったのは、京子先生だった。
「そんな事は無いわ。正治君のお父さんが政治家なのは知っているけれど、皆で日本を良くするために、外国の人にも日本をわかって貰うために・・・ねっ。」
狼狽の色を隠せない京子先生は、しどろもどろだが、必死さだけが伝わってくる。
「先生、絶対にそんなことはないって言い切れる根拠を示して下さい。それが出来ないのなら、外国人参政権には、反対です。」
京子先生は、涙ぐみながら、沈黙した。辺りに静寂と騙されかけたことに対する小さな怒りが流れていく。正治は、地方代議士の息子で、両親の政治活動を間近で見てきたことが、視点を変えた。博史は、そんな正治を頼もしく思えたのだった。
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【産経MSNニュースより】
民主党の山岡賢次国対委員長は6日午前、自民党の川崎ニ郎国対委員長と国会内で会談し、今国会中に永住外国人への地方参政権付与法案を議員立法で提出する考えを伝えた。
会談終了後、山岡氏は記者団に対し「今国会で(提出を)考えている。党内にもいろいろ意見があるが、場合によっては党議拘束なしというやり方もある」と述べた。また、山岡氏は臨時国会の会期について「今の状況では延長せざるを得ない」と述べた。11日に政府・民主党首脳会議を開催して国会対応を協議する方針だ。
地方参政権付与については、鳩山由紀夫首相が5日の衆院予算委員会で「前向きに考えている」と述べていた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091106/stt0911061157002-n1.htm
【産経MSNより】
民主党の山岡賢次国対委員長が6日、永住外国人への地方参政権付与法案を今国会に提出する方針を突然打ち上げたことに波紋が広がっている。地方参政権付与は国民主権にかかわる重大事だが、民主党は党内意見の集約を終えておらず、衆院選マニフェスト(政権公約)にも載せなかった。それだけに民主党では慎重派がさっそく反発しており、「寝耳に水だ」(幹部)と否定的な声も強い。だが小沢一郎幹事長が賛成派である上、もし与野党が党議拘束を外して採決すれば、法案が成立してしまう恐れもある。(榊原智)
「今国会に法案を出して継続審議にしておけば、来年の通常国会の早い時期に成立できる。告知期間を置いても平成23年の統一地方選挙に間に合う」
民主党のある推進派は、山岡氏の方針を聞き、こんな胸算用を披露した。
地方参政権付与をめぐっては鳩山由紀夫首相が5日の衆院予算委員会で「前向きに考えている」と表明した一方、「民主党内に多くの意見があるのも事実だ。強引に押し通そうと思っていない」と党内対立の存在を認めた。
それだけに山岡氏の発言は唐突感が否めないが、伏線はあった。
参政権付与派の「在日韓国人をはじめとする永住外国人住民法的地位向上推進議連」の事務局長を務める川上義博参院議員は4日、小沢氏と会い、「地方にかかわる話だから議員立法で準備を進めたい」と進言していた。審議に時間がかかる政府提出法案よりも、議員立法の方が事が運びやすいと踏んだからだ。
好感触を得た川上氏は5日に山岡氏と会い、議員立法構想を伝えた。これが「今国会提出」という勇み足にも見える発言につながったとみられる。
参政権付与をかねて求めてきた在日本大韓民国民団(民団)に属する在日韓国人は、民主党議員を先の衆院選で支援し、両者の距離は確実に縮まっている。9月11日には民団メンバーが小沢氏に直接地方参政権付与を要請している。
一方、山岡氏の発言を「国会会期延長の大義名分づくりだ」(民主党幹部)と見る向きもある。
今月30日までの会期では、国民新党が固執する郵政株式売却凍結法案も成立が困難との見方が強い。首相官邸サイドは郵政法案の会期内成立にこだわっていないとされるが、そうなれば国民新党との衝突も予想される。これを回避したい山岡氏が、重要法案を増やすことで官邸サイドに会期延長をのませる呼び水に使った-というわけだ。
だが、民主党の慎重派議員は冗談じゃない。少なくとも20、30人は猛烈に反対する」「左翼政党と見られるデメリットの方が大きい」など参政権付与法案にさっそく反発している。
みんなの党の渡辺喜美代表も「参政権を行使したいなら日本人になってほしい」と反対を表明。自民党の大島理森幹事長は「(国民)主権にかかわる問題だから党議拘束なしには抵抗感を持つ」と慎重な考えを示した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091106/stt0911062212011-n1.htm