玄文講

日記

ミイラ

2004-11-13 20:13:54 | 怪しい話
そのミイラはどこからか来て、どこかへ行くはずだった。

そのミイラは国立科学博物館において先日話した干し首のすぐ横に隣接して展示されてある。
しかし例の干し首が大勢の注目を浴び熱心に語られるのに比べて、このミイラのことを話題にする人はほとんどいない。
昨日紹介したサイトでもこのミイラのことは全く触れられていない。だがこのミイラこそが今日の話の主役であり、私にとっては干し首よりもはるかに興味深い存在なのである。

この話はある人から聞いたものである。大分昔のことなので記憶があやふやになってしまっている。
正確な情報はことごとく抜け落ちているし、時系列も間違っているかもしれない。だから以下の文章は正確な情報でなく大まかな話だと思っていただきたい。

大正時代の末期、成人女性と赤ん坊の2体のミイラがメキシコから船で送られてきた。
しかしそのミイラが来てから間もなく東京は大きな地震に襲われた。関東大震災である。ミイラは行方不明となった。

そもそもそのミイラの正体は一切不明であった。
このミイラは誰なのか?
どこで見つかったものなのか?
なぜミイラになったのか?
何も分かっていない。
そしてそのミイラはこつぜんと姿を消してしまったのだ。
全てはやぶの中である。

しかしそれから4年後、それは発見された。そのミイラはある人に見つけられ、蔵の中にしまわれていることが分かったのである。
1928年(昭和3年)そのミイラは上野の帝国博物館に寄贈され初公開された。
そしてそのミイラは今もなお由来不詳のまま上野の片隅で展示されているのである。

出自正体不明。震災による紛失、再発見。
なんとも奇妙で日本的怪奇に満ちた話ではないか。干し首のような派手さは無い代わりに、じわじわと体全体に広がるような不気味さがある。
まるで江戸川乱歩の小説のような世界だ。そして事実この事件を元にして乱歩は「ミイラと旅する男」という小説を書いている。

しかしこのミイラが持っているのは怪奇だけではない。
このミイラを見た人は誰もが思わずこう言ってしまうはずだ。

「このミイラ前貼りしてあるぜ」

そうなのである、このミイラは成人女性のミイラである。だから当然陰唇がある。このミイラはその陰唇部にガムテープのようなものが貼ってあるのである。ものすごくマヌケなかっこうである。すぐ隣にある3つの干し首の面妖さとの対比でなおさらマヌケに見える。せっかくの乱歩テイストもぶち壊しなのだ。

昔大英博物館に行ったとき、展示しているミイラの尻の穴までがはっきりと見え
「死んでからも世界中の人間にケツの穴を見られ続けるとは災難だな」
と思ったものだが、隠されるのもこれはこれで恥ずかしいものである。まぁ死体に恥ずかしいも何もないのではあるが、見ているこちらが恥ずかしくなるのである。

皆さんでしたら、「死んでからも股間を見られ続ける」のと「ガムテープを貼られてさらされる」のとどちらがマシだと思いますか?

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