玄文講

日記

ベンチャー起業者の傾向(1)

2005-08-21 01:49:56 | 個人的記録
私には自分というものがない。欲しくもない。

自分で考えて、自らが動き、自己責任を負う、なんて面倒くさいことである。
他人任せで、長いものに巻かれて、波風立てずに人生をやり過ごしたい。
長生きにも幸福にも興味はないから、せめて静かで地味な生活だけは欲しい。
積極的とかポジティブとか、夢とか希望という言葉は好きではない。

それなのに今の私は、自分で商売を始めることを考えているのだ。
私らしくもないことをしようとしている。
しかし、私には私がないので、私らしいことにこだわる必要もないと考え、気にしないことにした。

それにしても私から見れば、自分で企業を起こす人間なんて別の星の生物のようである。
そこで科学技術政策研究所年報2003年度活動報告で公開されている資料「日本のベンチャー企業と起業者に関する調査研究」を参考にして、ベンチャー起業者とはどういう人間がやっているのかを調べてみた。

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これは次の条件を満たす約1000社のベンチャー企業を調査したレポートである。

①売上高研究開発費比率が10%以上の回答企業(167社)
②設立後10年未満の回答企業(177社)
③上場目的を持った回答企業(446社)
④上記3つを同時に満たす回答企業(40社)=「最狭義VB」



レポートによると彼らが企業を起こした平均年齢は37歳である。
彼らは長年経験を積んで得た熟練技術をもって商売を始めている。そんな彼らの学歴は決して高くはない。

経験はないが知識のある若者が企業を起こす、という私が持つベンチャーのイメージとは異なった結果である。

実態はどちらかというと、長年奉公した使用人がのれんわけをしてもらい独立する徒弟制度に近いものがある。

レポートは次のように報告している。

日本の場合、研究開発が強調され経営の中核に広い意味の「技術」がおかれるタイプのベンチャー企業において、その場合に創業の基盤となる「技術」とは、どちらかといえば長期の実務経験と経験知に基づく「熟練」(skill)の要素が強いものであることがうかがわれるのである。

これは10年以上前もここ10年間も同様であるが、熟練の必要度は近年とくに顕著になっているようである。

このことは、起業に対する高等教育の影響が日本では昔から小さく、それが近年いっそう小さくなっていることを推測させるものである。


これは、経験のない私には不利なデータのように思える。
もっとも産業に使える知識のほうも、私にはそんなにないのである。

どうやら私は自分の持つ理論物理の知識を工学用にチューニングする必要がありそうだ。
経験不足を補う手段も考えなくてはいけない。

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企業規模については、従業員数は平均112.7人で資本金は平均2億200万円とある。
今のところ私が用意できるのは、どちらとも上の数字の10分の1だけである。
資本は全て自己資本になりそうだ。
銀行の融資は期待できない。支援してくれるところもないであろう。

売り上げ規模はサービス業40億円、製造業30億円、情報系が10億円となっている。
意外と情報系は儲かっていないが、成長率は高いようである。
(もっとも売り上げが小さければ、成長率は高めに計算されるものである。)

また彼らは売り上げの10%から20%を研究開発に投資している。
もっとも同じ研究費でも、売り上げが小さいうちはそれの占める割合が高くなるのは当然のことである。
彼らが成長するにつれて、研究費の割合の方は小さくなっていく。

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また彼らには父の事業を継いだ2代目以降の人が多い。(全体の23.3%)
相続という形は、起業に余計な体力や準備期間を要せず、権威を獲得する手間も省け、いきなり自分の好きなことができるという利点がある。
(その好きなことが失敗すると道楽息子、バカな2代目と呼ばれるのである。)
また彼らは、子供の頃から親の姿を見て無形の経営ノウハウを吸収しているという強みもある。

一方、創業社長には大企業、中小企業で経験を積んだスピンアウト組が多い。
つまり自力で経験を積んだ熟練技術者たちだ。

私はこのどちらでもない。困ったものである。

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このレポートは「最狭義ベンチャービジネス」と定義した企業についても調べている。

それは

①売上高研究開発費比率10%以上、②設立後10年未満、③上場目的を持っていること。

を満たしている企業と定義されている。

彼らの特徴は

ハイテクエリートの起業者であり、ごく少数例が観察できる。彼らは技術系の高学歴を背景に大企業に入り、テクノクラートとして実績を上げたのちに、スピンアウトして起業している。

という点にある。
つまり高い学歴を持ち、大企業で経験を積んでから起業している。
こちらの方がベンチャーのイメージに近いものがある。

いずれにせよ、私にはないものだ。

ちなみに彼らの平均起業年齢は37歳。従業員数の平均が14.4人、資本金の平均が1億1000万円、売上げの平均が2億1300万円であり、東京に集中している。
(続く)