せせらぎせらせら

日々思うこと

2011-10-17 | ぎらぎら

土を楽しむ贅沢を求めて、瀬戸内の島にやってきてもうすぐ3カ月。

ついに、念願かなって小さな畑をやることになった。

と言っても、よもやこれで生計を立てるつもりもなく、あくまでも現金収入は他から得つつ、片手間に悠々自適な農的生活を営む趣旨なので、「収穫できれば御の字」という緩いモチベーションで臨むことができる。

生来、普通のことを普通にやるのが苦手(その重要さは知っているつもりではあるが)なので、当初はまだ世間に広く知られていないような目新しい野菜を植えようと思っていた。しかし、「まずはフツーにやりなよ」という同居人の訓諭を受けて、ダイコンやニンジン、豆といったありきたりな種を撒くことにした。

 

畑は家から2分ほど歩いた山の麓にある。

聞けば義祖母が元気だった頃はみかんが植えられてあったということだが、この数年はすっかり荒れて放置されていた土地だ。

キャリー1つで公務員の月給が稼げたという“みかんバブル"以降、みかんの値段は右肩下がりに安くなり、20年前の台風や近年のイノシシの被害が追い打ちを掛けて、畑をやめる農家が増え続けている。

そのため、このような耕作放棄地が島にはたくさんあり、かつて収穫期には山全体がオレンジ色に染まったということだが、今ではそんな光景が見られる場所は限られる。

土地を荒らすことは農家にとって不名誉なこととされる。そうでなくとも雑草が生い茂ると種が拡散し、近隣の畑に被害が及ぶ。

今回、僕が畑をやることにした土地がまさにそれ。奇麗に手入れされたみかん畑のなかにポツンとできた雑草地帯で、誰からも苦言こそ出ないものの、迷惑を掛けていることは明らか。

その意味で土地を手入れすることは一石二鳥なのだ。

 

 

まずは草を刈る。装備はホームセンターで買ってきた1本の鎌のみ。ハッキリ言って無茶だが、それも一興。まぁやれるとこまでやってからダメなら次の手を考えればいい。

どこから手を付けていいかもわからないまま、とりあえず大きな草を苅り倒し、足場を確保していく。しばらくすると、鍬を持った東さん、チェンソーを持った林さんが助っ人に現れ、あっという間に作業が進む。

島に越してきてから何かとお世話になっているこのお二人。都会から来た若者の動向を気に懸けてくれているらしい。

一通り、草木を刈り終えて、帰宅。東さんの奥さんの言葉を借りれば、「農作業は頑張りすぎないのがコツ」だ。

 

翌日、再び雑草地帯に足を運ぶと、なんと既に土地が耕されていた。すぐに現れた東さんが笑顔で「ちょっと作業を進めておいたぞ」と。

そこへ鍬で溝を掘り、まずはダイコンの種を撒く。種の上にそっと土を被せ、続いてニンジン、豆、カリフラワーと撒いてみる。さらに東さんの奥さんに頂いたネギと水菜、ブロッコリーの苗を植え(実は奥さんが植えてくれた)、保水効果のあるバーク堆肥(これも頂き物)を散らして終了。

と思いきや、東さんは「柵をしとかんと、1日でイノシシに荒らされるぞ」と柵を持ってきてくれた。鉄柱を土に打ち込み、鉄の柵を立ててヒモで留めていく。

 

こうしてあっという間に畑が完成。

そう簡単にいくとも思えないが、今から収穫が待ち遠しい。

 

しかし恐るべきは、ご近所の方々のお力添え。「これを使え」と農具や作業服をくれたり、「お腹空いたやろ」とご飯を差し入れてくれたり、至れり尽くせりでなんだか申し訳ない気がしてくる。

本当にこの島の人の親切さは想像を絶する。

 

作業のあとは借りていた農具を返しに、東さんのお宅を訪問。すると奥さんが出てきてこんな話を聞かせてくれた。

「ゆう君の義祖父さんと、うちと林さんは兄弟のように親しかったんよ。義祖父さんが亡くなるときに、『あとのことは頼んだ』と言われとるんやけん、困ったことがあったら遠慮せずに言ってくれてええんよ」

 

 

どうやら、種蒔きはもう何十年も前に行われていたらしい。

今、僕は奇妙なほど真摯な心持ちで考える。

僕がこの島のためにできることってなんだろう。

 

何か確かなものを実らせねば!という使命感に駆られつつ、この地に根を張る覚悟が固まっていく。

 

まずは明日の朝一番、墓参りから始めよう。

それが礼儀だ。

 



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お久しぶり (大樹)
2011-10-17 23:36:26
メールを送ったら帰ってきちゃって、なんとなく波乗りしてたら見つけました。
なんだか、うらやましい生活を送ってるようで、元気そうで何よりです。

瀬戸内ったら、金糸瓜。
来年は金糸瓜を育ててくださいな。
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えーと。。。 (U)
2011-10-18 19:18:02
大樹って、あの大樹さん!? 超ご無沙汰してます~。そちらも楽しそうじゃないですか~。
やっぱ農業ですよね(笑)。そうか~、大樹さんもそっちの魅力が分かる人だったか。
V系の人とは分かり合えないと思ってたけど(爆)、ひどい誤解だったようです。すんません。

いつか酒でも飲みながら、語り合いたいなぁ~。
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で、 (U)
2011-10-18 19:36:26
メールの用件はなんだったんですか? ライブ関連?
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そうなのです (大樹)
2011-10-18 23:10:55
ライブの用件だったのですw
一日限りでAtomic Rainが復活するのですよ。

来年の夏は家族で遊びに行かせてくださいまし☆

そうそう、V系もやってたけど、おいら根はろけんろーらーよ♪
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