食品のカラクリと暮らしの裏側

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浅見光彦・遺譜1 日本人には思想がないから戦後経済活動ばかりに走った/少数派

2019年04月26日 | 戦争を繰り返すな
Ns170minoritytp 少数派シリーズ/二度と戦争を繰り返すな
浅見光彦・遺譜1/日本人には思想がないから戦後経済活動ばかりに走った

M20150522

ブログを移転したため、投稿日と記事の日時・状況と整合性がありません。
追記/内田康夫氏は2018.3.13没 (83歳)

内田康夫の浅見光彦シリーズは、ご存じの通り書籍・TVドラマでも大人気です。「遺譜・浅見光彦最後の事件」・上下2巻~を読んで、感銘した文章が出てきたので抜粋してご案内します。2回に渡り、お届けします。飽くまで小説上のことですが、浅見光彦が丹波篠山の小料理屋で酒を酌み交わした神主(旧日本軍の特務機関所属の設定)の言葉です。ストーリーとは全く関係なく、著者:内田康夫が言いたかったことで、戦争の反省もなく経済ばかりに力を入れた、戦後日本への失意が述べられています。
※当然、著作権を有しますが、何とか皆様にお読み頂きたくブログ掲載した次第です。ブログタイトルは、投稿者によるものです。

『戦争に負けて、日本人がまず失ったものは誇りやな。日清、日露という大国相手の戦争で負けんかったことで、日本人には驕りがあった。遠くは元寇(げんこう)で神風が吹いたという伝説まであったために、神国日本は永久に不敗だと思い込んでいた。それがこっぴどく負けたもんやから、誇りも宗教心もいっぺんで消えてしもた。あんたは知らんやろが、敗戦直後の日本人は誰もかれもが無気力で、ただ食うため生きるために、おろおろと蠢(うごめ)いとるようなもんやったよ。

占領軍のやつらに「精神年齢は十二歳程度」などと揶揄されても、反論もできんかった。しかし日本人の賢さと勤勉さが、驚異的な復興をなし遂げる。空襲で一面の焼け野原、廃墟と化した東京が、敗戦からわずか十数年後にはオリンピック誘致に名乗りを上げ、実際、十九年後の昭和三十九年にオリンピックを開いてしもた。食うや食わずで育った若者たちが金メダルを取るのを目のあたりにして、日本人がようやく誇りを取り戻した瞬間や。

その勢いで背中を押されるように、経済発展も目ざましいものがあった。戦力ではなく経済力で追いつけ追い越せとばかりに遮二無二働いて、ついにアメリカに次ぐ経済大国にまでのし上がった。けど、金儲けばかりに励んでいるうちに、あんたがさっき言うたとおり、道徳心と謙虚さが希薄になった。神を畏れぬ所業がのさばりだした。何も造らず肉体労働もせずに、ただ机の上のパソコンを操ってのマネーゲームで金儲けする連中がセレブとかいうて幅をきかしとる。

性道徳は頽廃(たいはい)し、これまでには考えられんかったような悪質な犯罪が、いとも容易く横行する。経済力や国力に関しては誇りを取り戻したが、その代わり人間としての誇りは失ったわけやな。あんたが言うたとおり、日本古来の道徳心も謙虚さも、わしが神主やから言うわけやないが、敬虔(けいけん)な宗教心も消えてしもた。

ドイツでは森の減少が進むのに危機感を抱いて、対策を講じとるそうや。元来、ゲルマン民族は森を愛する民族や言われとったのが、相次ぐ開発によって森林の二十パーセントが失われてしもた。文明の進歩こそが豊かさの証明やとばかり考えて、ほんまに大切なものが何やったかを忘れとったんやな。とはいえ、そこに気がついて、すぐに軌道修正をするところが、いかにもドイツ人らしい気質と思わんかね。

原発のこともそうや。究極の文明のごとくに思われた原発が、じつは人類が発明した最悪の危険物やいうことを悟って、脱原発を模索し始めた。こんなんはごく当たり前のような話やが、これがなかなかできん。危険やと分かっとっても、経済効率を優先する気風がのさばっとる社会では、動いているものを止めるいうのは難しい。そういう英断が下せるのは思想がしっかりしとるからや。思想とは物事を改革、進化させる原動力とのみ考えがちやが、過ちを改むるに憚らんことも思想の力があってのことや。残念ながらわが国にはその力が欠如しとる。』 <次号に続く(下記リンク)>

Sankoub 次号/遺譜・2日本人には思想がないから戦争や原発を許した

Ntopkeiji

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