新型コロナウイルスにより、人権や民主主義の本家である英国 が香港問題に端を発し、対中国に対して米国との共同戦線に舵を切りました。コロナ禍により政治対立が強まったのでしょう。日本でもコロナ禍により、消費減税論争が衆議院選挙で強まりそうです。一人当たり10万円給付や休業補償などで、経済は一時的に持ち直していますが、効果は期間限定です。最近はレームダック化したのか安倍首相も経済対策に口をつぐんでいます。このまま官僚に国難をまかせるなら、コロナ禍もコロナ恐慌も克服できるはずがない。本来ならば安倍首相が先頭に立って主張する消費減税と与党公明党の反対で実行できない憲法改正是非の国民投票が選挙の争点になるのは歴史の皮肉です。
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安倍晋三政権の中国発新型コロナウイルス対策の迷走ぶりは深刻だ。コロナ封じの間、大きく萎縮する景気に対しては満遍なく国民に浸透する大型消費税減税を断行すればよいのに、そんな王道をふさいでおいて、わざわざ各省の縄張りにからめた業界支援「Go To」の補助ときた。そこにコロナ禍第2波が打ち寄せ、身動きが取れない。国家非常事態だというのに、なぜ一貫性のない場当たり主義の政策がとられるのか。独話で言おう。政府・与党は消費税増税という大失敗を認めたくないからではないか。
がく然とさせられるのは、きちんとした消費税および消費税増税の政策評価がほとんどされないまま、「党の苦労」ばかりを強調して、それが受け入れられるという支配政党の硬直性だ。国家政策を担う責任政党であればなおさらのこと、「国家および国民の苦労」をなぜ口にしないのか。
消費税導入以降、日本がいかに没落してきたか。財務省御用学者の言う「少子高齢化」のせいか?
15歳から64歳までの生産適齢人口の全人口に占める割合は、89年4月で70%、97年4月で69%とほとんど横ばいだ。その後も減り方は極めてなだらかで、最近は60%弱で落ち着いている。しかも適齢人口数そのものは2016年以来前年比で微増という具合である。
百歩譲って、少子高齢化の影響を否定しないまでも、これほどの経済停滞を招くはずはない。元凶は政策の失敗であり、失敗の最たるものが消費税増税である。グラフは名目国内総生産(GDP)のドル換算値である。円相場にも左右されるのだが、長期的にはならされていく。国際比較すれば、くっきりと日本の没落が浮かび上がる。
消費税増税のたびにGDPは萎縮してきた。1995年の5・4兆ドルが、98年に4兆ドル余りに、2012年6・2兆ドルが15年に4・4兆ドルへと縮んだ。中国は2010年に日本を抜き去り、20年は日本の3倍以上になる見通しだ。
米国は成長を続けている。中国がGDP統計を改竄(かいざん)しているとしても、経済膨張ぶりはモノとカネの増加傾向に沿っている。欧州は08年のリーマン・ショックとユーロ危機までは順調だった。
冒頭の話に戻す。消費税減税を封じこんだが、国民1人当たり10万円の現金給付は6月の消費を押し上げる効果があった。現金給付総額は13兆円に上り、消費税率5%、1年間分に相当する。だが、あくまでも一時的な現金ばらまきであり、多くは預貯金に回り、消費刺激効果は長続きしないだろう。
例の「Go To」政策は、経済産業省主導で発案し、自省で仕切ろうとしたが、実行能力はなく、民間に丸投げして、その不透明さを突かれた。結局、観光は国土交通省、農産品は農水省というふうに各省の「Go To」が縦に不ぞろいで並んだ。自粛精神旺盛な日本国民に対して補助しますよ、動きなさいという政策であり、その政策意図に沿って自粛ムードが後退、するとコロナ第2波がじわっと侵入してきた。外に出かけましょう、と言ってるくせに、他方で再び自粛せよとはむちゃだ。
安倍首相も言葉少なになった。まともなマクロ経済対策を考えずに、自省の縄張り意識で動く官僚に国難をまかせるなら、コロナ禍もコロナ恐慌も克服できるはずはない。
■田村秀男氏