今までは、過激な発言ばかり取り上げられ、『トランプノミクス』については語られてきませんでしたが、トランプ減税への期待でウォール街は沸き返っています。日本に当てはめると消費税をゼロにするほどの減税の規模に驚きです。これでは景気は過熱するだろうし、インフレ期待も今後高まります。日本もその余波で一時、16,111円まで売られていた日経平均があっという間にまさかの18,381円。円も急激な円安で、これらは目先の利く外国人投資家主導です。日本人の多くはこの間手が出せず、傍観でした。日銀すら、お約束のETFを買えなかったようです。今回の劇的な相場はアベノミクス相場の再来で、ひとまず上げ100日下げ3日とみるべきでしょう。
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世界の金融市場は、トランプ相場で株高、ドル高(円安)、金利高が続いている。さながらトランプ大統領誕生を祝う打ち上げ花火のようだ。
この背景にあるのは、トランプ次期大統領の経済政策「トランプノミクス」にあることは明らかだ。
トランプノミクスとレーガノミクスの相似点についてはすでに書いたが、トランプ氏が選挙戦の終盤に発表した「100日行動計画」をあらためて見ると、トランプノミクスの輪郭がくっきりしてくる。
10月22日に発表された「アメリカを再び偉大な国にするための就任100日の行動計画」では、アメリカの労働者を守るためとする7つの施策を掲げている。
なかでも目に付くのは、徹底した反自由貿易と貿易不均衡の是正だ。
まず、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉または離脱。そして、TPPからの離脱。さらに、中国を為替操作国に指定するなど、貿易相手国との不公平な貿易慣習の是正を挙げる。
エネルギー開発には積極姿勢を示し、50兆ドルに上るシェール、原油、天然ガス、クリーンコールの生産を打ち出す一方、環境については冷淡だ。
国連の気候変動プログラムに対する数十億ドルの支払いを止め、アメリカ国内の水や環境インフラの整備に振り向けるとしている。この中にはパリ協定からの離脱も含まれるだろう。
また、就任100日以内の立法措置として、中間所得層への大規模減税など税制改革を行い、毎年4%の経済成長と、新たな2500万の雇用創出を目指す。
減税対象は中間所得層で、子ども2人の世帯には35%税率を引き下げる。
法人税は35%から15%に税率を下げ、租税回避のため海外に移転していた米国企業を呼び戻す。さらに、インフラ投資を加速させるために、税優遇を企業に与えて、10年で1兆ドルのインフラ投資を目指す。
これらの政策を受けて、金融市場では景気好調期待で、株価は上昇しドル高が続いている。
一方、財政出動を伴う巨額の減税やインフラ投資を行えば財政が悪化するのは明らかで、市場ではインフレ期待から、米国債は続落(利回りは上昇)している。
トランプ氏はFRBの金融政策について、イエレンFRB議長はオバマ政権のいいなりだと発言してきたが、金利高をどこまで容認するのかは不透明だ。
トランプノミクスでさらに注目されるのは、移民政策だ。
トランプ氏はすでに、犯罪歴のある不法移民、最大300万人を国外に強制送還すると明言している。
アメリカに不法に滞在している外国人は約1100万人と言われている。アメリカ経済は、安い賃金や3K労働をいとわない不法移民の存在で成り立ってきた。すべての不法移民を強制送還することになると、社会不安はもとより経済インフラの崩壊まで招きかねない。
経済成長重視である以上、不法移民すべての国外送還は現実的ではないことを、トランプ氏はわかっているはずだ。選挙戦の主張を翻すのか、トランプ氏の今後の判断が注目だ。
閣僚人事を加速させるトランプ氏だが、財務長官、商務長官など重要経済閣僚の指名はこれからだ(11月21日現在)。財務長官には元ゴールドマン・サックス幹部で、トランプ陣営の金庫番でもあったスティーブ・ムニューチン氏が噂されている。
もしムニューチン氏になると、金融市場ではウォールストリートフレンドリーな人物と見られるので、一時的に株式の買い材料になるだろう。
また、トランプ氏は金融規制改革法の撤廃も訴えてきた。これにはウォールストリートが小躍りする一方で、リーマンショック前の狂騒が再び起こることを懸念する声も上がっている。
クリントン氏はウォールストリートとの親密さを嫌気され大統領のイスを逃したが、とってかわったトランプ氏がウォールストリートに大歓迎をされているとは何とも皮肉である。