中小企業診断士 福田 徹 ブログ

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企業が変化する瞬間:西武グループ

2008年08月27日 | 福田徹の経営

 最近、西武鉄道にイメージが変わりつつあります。新CIが導入されて、シンボルマークや駅での表示などが青を基調としたすがすがしい色合いに変わりました。電車の色も、黄色から青に変わってきています。

 最近は、少し変わった顔をした電車も走っています



ウィキペディア
より  

 実はこの電車は、西武鉄道と西武グループの変化の象徴といえる新開発車両なのです。

 西武鉄道は、明治中期から昭和初年にかけて設立された3つの鉄道会社を、近江出身の堤康次郎が数回の企業買収を経て現在のかたちにしたものです。非常に、カリスマ性の高い創業者と2代目:堤義明のもとで、鉄道や沿線宅地開発、ホテル、観光事業と業容を拡大し一大グループを形成しました。(西武流通グループ=後のセゾングループも、義明氏の兄清二氏(作家辻井喬)のもと別に発展しました。)

 カリスマ堤義明氏は、2004年に発覚した総会屋利益供与事件、西武鉄道株式に関する有価証券報告書への虚偽記載事件により失脚しました。
 カリスマ性のあるワンマン経営者を失い上場廃止となった西武鉄道は、みずほコーポレート銀行から送り込まれた取締役社長後藤高志氏のもと再建への道を歩んできました。
 後藤社長が最初にしたことは、グループビジョンの制定です。以下は、グループビジョン中のグループ宣言です。

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 このように宣言することで、社会に対しては企業の変化を約束し、グループの社員に対しては「お客さまの行動と感動を創りだす」プロであれと求めました。

しかし、いままでワンマン社長のもと何でも「トップダウン」で決められていた西武グループでは、これまでの企業文化をかかえたままであり、いままでと同じ社員達が働いています。急に「お客さまの行動と感動を創りだす」ための行動を起こすことはできません。
 「創りだす」ためには、社員自ら考え自分の責任で行動する「ボトムアップ」の企業文化を創ることです。組織のなかの風通しをよくして、社内・グループ内の容易な連携を促すことも必要です。

その象徴が、新しい電車のプロジェクトです。たまごの様な顔をした冒頭の写真の電車は、部門横断型のプロジェクトチームによって企画されました。さらに、西武鉄道でははじめて新製車両プロジェクトに女性が配置されました。鉄道会社の現業部門は典型的な男性社会といわれており、これは画期的なことでした。リンクの西武鉄道の30000系 スマイルトレイン誕生までの軌跡をご覧になると、このあたりのことがよくわかります。鉄道の専門家以外の社員、女性の声を聞き、社員からの「ボトムアップ」によって新しい車両をつくり、「お客さまの行動と感動を創りだす」ことは、この企業にとって全く新しい経験であったはずです。そして、この経験は次を「創りだす」ことにつながるはずです。

 ところで、最近のニュースでは、埼玉西武ライオンズがクライマックスシリーズの一戦を(西武球場以外に)埼玉県民球場で行うという発表がありました。西武球団は今年から、球団名に「埼玉」をつけるなど地元密着の姿勢を明確にしています。こうした動きなどは、「堤義明の球団」時代にはあり得ない話でした。
http://www.seibulions.jp/news/detail/688.html


 こうしてかんがえると西武グループの変化は、見た目のCIだけではないようです。
 大きな企業が変貌を遂げようとしています。興味深いですね。今後も、西武グループの動きに注目していきたいと思います。

※関連記事:西武鉄道新CI駅舎~入間アウトレットライオンズ優勝と西武グループの変化本当に変わった西武鉄道