ふじこーの「アレが気になる」

身の回りのちょっと気になる事や物など気ままに書き綴っていこうと思います。

自閉症の弟の事

2005-03-07 | 自分、家族の事
前回の「アイ・アム・サムを見て」の記事で書こうと
思っていたのだけど、長くなってしまったので
別記事にしました。

僕は3人兄弟の長男で、一番下の弟は重度の知的障害を
持っています。
分類では「低機能自閉症」と言う物になるらしいの
ですが、医者によって診断が少し異なるため、
はっきりとは分かりません。
普段は施設にいて、土日に帰ってきます。

自閉症と言うのは先天的な脳障害で、心理的な原因で
生じる情緒障害ではなく原因も治し方もまだよく
分かっていません。
自閉症の特徴は他人とコミュニケーションが取れない
事です。「低機能自閉症」とはこの対人関係の障害と
知的障害(知能が低い事)が合わさったもので、
知能が高い自閉症の場合は「高機能自閉症」や
「アスペルガー症候群」と呼ばれます。
映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じた
レイモンドは、このタイプです。
また、「アイ・アム・サム」のサムは自閉症では
ありません。

弟は言葉をしゃべれず、興奮した時に奇声をあげる
ぐらいです。時と場所にお構いなく高い声で叫ぶので
夜などは少し困ります。何か伝えたい事があるのかも
しれませんが、知る事は出来ません。
とにかく多動ですが、身体的な障害が無いのが
せめてもの救いかなと思ったりもします。
後、こういった子(と言っても30歳を過ぎてますが)
には多い事ですが、時にてんかんの発作を起こす事が
あるので、なるべく1人にはしないようにしています。
発作自体は2、3分で治まりますが倒れて頭を打ったり
する恐れがあるからです。
同じ施設に通っていた子で、風呂に1人で入っていた
時に発作が起きて亡くなった方がいます。意識が無い
まま湯船に沈み溺れたそうで、痛ましい事です。
なので、風呂に入る時も必ず誰か一緒に入ります。

また他人の物と自分の物という区別が出来ないので、
店にある商品をその場で飲んだり食べたりするし
他人が飲んでいるコーヒーを取って飲もうとしたり
するので気が抜けません。他人の迷惑になるので、
どこでもは連れて行く事は出来ないです。
最近はタバコの吸殻を拾って口にするのが癖になって
しまい、これも体に悪いので困っています。
身の回りの事はほとんど自分では出来ないと言うか、
興味が無いようです。着替えとか布団をたたむとか
何度も言うと出来る事もあるのですが、言わなければ
ずっとそのままです。歯磨きなど、少し複雑な事に
なるとうまく出来ずにすぐに止めてしまいます。
恥ずかしいという感情も無いようで、人前でも平気で
おしっこをするし裸のままでも気にも止めません。

弟は2~3歳ぐらいの知能しかないと思いますが、
興味がある事に関しては驚くほどの知恵を働かせる
時があります。ひょっとしたらもっと知能が高いの
では?と思う事もありますが、読み書きが出来ず
知能テストを受けられないので確認は出来ません。
今興味があるのは、「水遊び(コップを2、3個置いて
延々と水を移しかえる)」と食べる事、コーヒーを
飲む事ぐらいでしょうか。
飲み過ぎや食べ過ぎにならないように色々な場所へ
隠すのですが、どんなに隠しても目ざとく見つけて
しまいます。おなかが出てきて少し痩せさせなければ
いけないのですが、親はどうしても食べさせてしまう
ようです。
施設では十分な量を食べれないだろうから、せめて
家にいる時ぐらいはおなかいっぱい食べさせたいの
でしょう。

自閉症はよく「目が合わない」などと表現されます。
弟の目の前に顔を近づけて目をじっと見ながら
「こっち見て。」と言うと、一応は僕の目を見るの
ですが、まるで僕を突き抜けて後ろの壁を見ている
かのようです。これは、実際見てみないとなかなか
分かりにくい事だと思います。
ただ、数年前から弟の症状が変わってきました。
呼びかけるとまっすぐ目を見つめるようになって
きたのです。やはり反応があると嬉しいものです。
後ろの壁ではなく、僕を見ているのがはっきりと
分かります。機嫌の良い時は笑いかけると笑い返して
くれるようにもなり、今まで無かった感情が現れて
来たようです。
自閉症は治らないと言われてますが、完全に直らない
までも少しずつ改善していく事は出来ると思います。

ところで、「アイ・アム・サム」を見ていて思った
事があります。
知的障害が軽い人と重い人の、どちらが本人にとって
幸せなのでしょうか?
母は弟を見て「同じように生まれてきたのに、こんな
障害を持って可哀想に。せめて身の回りの事が自分で
出来れば良いのにね。」と言う事があります。
確かにその通りかもしれません。でも・・・。

すでに書いた通り、弟は話せないし読み書きも出来ず
ほとんど身の回りのことが出来ません。
また、自分がどう見られているかという事はまるで
関心無いようです。
一方、サムは軽度の知的障害者で、身の回りの事は
ある程度出来るし他人とのコミニュケーションも
不器用ながらもする事が出来ます。でも周りの状況が
ある程度理解出来るために、自分が他人より知能が
劣っていると感じて悩み苦しみます。
弟のように重度の障害の子は、サムのような苦しみを
味わう事が無い分、本人にとっては幸せではないかと
ふと思ったのです。
でも、実際どうなのかは分かりません。
ひょっとしたら、僕が弟の事を可哀想だと思いたく
ないためにこんな事を考えたのかもしれません。

かなり長くまとまりの無い文章になりましたが、
ここまで読んでくれて有難うございました。
最後に一つだけ言っておきたいのですが、こういう
障害を持つ子は他人に暴力を振るう事は少ないです。
弟もそうですが、何かに不満を持った場合は自分の
腕を噛んだり頭を壁にぶつけたりする自傷行為という
形を取ります。危険な事はありません。
最近怖い事件が多いため、混同、誤解されている方も
いらっしゃるのではと思い、付け加えておきました。