台中へは、お友達が同行して下さったのですが、お友達のガイドで、自分だけだったら行かなかったかもしれないところへご案内して頂きました。
台中国家歌劇院。
オペラハウスです。
なんと、日本人の設計。伊東豊雄氏という建築家です。
総工費43.6億元(日本円で150億円以上)。
完成までの道のりはとても波乱万丈だった模様です。
コンペで決まったのは2005年でしたが、超高難度の設計のせいで何度も入札が流れ、ようやく業者が決まって着工したと思ったらいろいろな難問で工法の変更などがあって更に工期が遅れたり。しかも、一度2014年11月に完成お披露目をしたのに、施工不良を改善するため、2015年初頭から1年9か月休館、再工事をしたり。
着工から10年あまりたって、ようやく2016年9月に完成しました。
予算面も紆余曲折あった模様。
そもそも最初の計画ではグッゲンハイム美術館の分館と歌劇院、セットで計画され、国と台中市の共同事業だったはずが、台中市で予算がつかず、グッゲンハイム美術館分館の計画がお流れに(コンペであのザハ・ハディドの建築というところまで決まっていたのに)。共同事業計画はなくなってしまい、市の単独事業になって、歌劇院のみ建設することに。建設中段階で、国家に無償寄贈されて、「国家歌劇院」となったようです。
いろんな人が、胃を痛くする思いで完成にこぎつけたのだろうなあと想像してしまいます。
さて、見学。
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窓の線がカーブしてはいますが、全体としてはキューブ状のプレーンな外観。 正面には浅い水面(噴水)があります。 ガラス部分には、プロジェクションマッピングなのかな、この劇場のこけら落としのときの映像が映し出されていました。
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ミュージアムショップの本より。 この歌劇院の周囲は再開発された土地のようで、超高層高級マンションが立ち並んでいます。 マンションの背が高いので、このキューブ状の劇場は、ずんぐり小さく見えるほど。
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建物のふもとあたりには水面が。 これは実は館内とつながっています。
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中から正面広場を見たところ。 こけら落としの際は、このあたりでパフォーマンスがあったようです。
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道を挟んで向こう側は、緑地が残っています。 六本木ヒルズからの眺めみたい。
さて、館内。 外観は、私にとっては、「ふーん、なるほどねー。お値段の割にはそれほど奇抜ってワケでもないかな」という印象でしたが、中は、なんだかすごく変わっています。
現代建築って、奇抜さ(建築家の自己顕示欲)を至上とするあまり、使い勝手とか妥当な建築経費などを軽視しているのではないか、という先入観があります。 なのでつい斜に構えてしまう私ですが、「ほわわわわー」と素直に圧倒されてしまう迫力がありました。
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広くて天井が高くて、壁も床も基本は白。 でもって、壁が、どこもかしこもぐにょ~っとカーブしています。
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”「サウンドケーブ(音の洞窟)」をコンセプトに「カテノイド(懸垂面)」を用いた三次元曲線の壁面が最大の特徴” とのこと。 床以外は、平らな面がなく、直角とかもあまり見当たりません。 ほんと、洞窟みたいです。
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1階の右奥の方には、館内に水面がありました。
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この水は外の水面とつながっているようです。 水をとりいれた建築は、カッコいいけどメンテナンスが大変そう。 15年後くらいには、水はなくなっていて、玉砂利とかが敷いてありそうな気がする・・・。
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どこもかしこもぐねぐねしてさっぱり分かりませんが、一応図面を。 館内には、大劇場、中劇場、小劇場があるようです。 大劇場は約2000人収容。
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そうか、この外観は、複雑なモグラトンネルをキューブ状に切り出したようなイメージかも。
屋上には庭園があるのですが、この時は雨のため閉鎖されていました。
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どこを見ても、ぬめぬめと有機的な曲面が組み合わされています。
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窓から明るい光が入ってくるほか、照明は基本的には間接照明。 目立たない隙間から照らされている感じです。
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ここの吹き抜け空間には珍しく照明器具が。 奥に見える水玉は採光窓かな。
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奥の方に大きな階段が。 (別の場所にはエレベーターも。エスカレーターはなし)
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階段の手すりはとっても繊細な感じ。 素敵。 (別の場所にはエレベーターも。エスカレーターはなし)
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2階に上がってみると、更に高い天井で、思わず見上げてしまいます。 天井の穴から光が差し込むところなど、まさに洞窟のよう。
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トイレへは、長いスロープを下ります。この写真は、トイレ側、低い方から撮ったもの。
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女子トイレ。 トイレもそれなりに曲面。 内装工事の人、面倒臭かっただろうなあ・・・。
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トイレのドアがやや弧を描くように並んでいます。 新幹線のトイレ?と思うような、小さ目の扉。
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手洗い台。 全部つながっている細長いタイプ。
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トイレですが、個室がかなり狭いです。 もうちょっと広いといいのになあ。 空港くらいの広さはとれなかったのだろうか。
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これも2階のどこか。 G22というのは、大劇場への入り口の一つではないかな。 右の明るいところは、確かお店。館内の職員さんも、上下とも白い制服でした。
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2階のある壁面には、アーティストの絵が描かれていました。
こういうぬるりとした三次元曲面の壁だと、額縁に入れた絵画を飾る訳にはいかないので、装飾したければ壁にじかに絵を描くしかないです。
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劇場の中は、本の写真より。 舞台側から見た様子。
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横の方。壁が激しく凸凹。音響効果のためでしょうか。 天井には砂漣みたいな曲線の段差があって、そこに照明が仕込んであります。
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2階の奥の方まで行ってみると、こんな丸窓が。 バルコニーの柵もガラスになっていました。
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ゆるやかな裾野をもつ壁。
壁も床も白いためうっかりしていると、つまづきそうではありますが、見た目はとても面白いです。
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変わった建築構造なので、防火対策のスプリンクラーも新方式を考案する必要があったとか。 この両端のがそのスプリンクラーかな?
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らせん階段がありましたが、この時は通行禁止になっていました。
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くにゃりと適当な角度でカーブする階段。 適当に写真をとっても、おもわぬ構図で曲線が交錯して、とても面白いです。
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洞窟のような繭のような、包みこまれるような印象が特別な建築物でした。
長年にわたって愛される建物でありますように。
(曲面ばっかりで、リフォームはほぼ不可能だと思うのよね)
■参考情報
ディスカバリーチャンネルで建設に関する番組が作られたとか。
検索するといくつか動画が。
・ディスカバリーチャンネルの10分短縮版はこちら
・実際の建築工事を担当した方へのインタビュー番組(中国語)
・建築物を特集する番組(中国語)
・伊藤豊雄氏へのインタビュー
ハンブルク・エルプ・フィルハーモニー劇場も、財政問題で紆余曲折あってようやく完成した劇場。こちらのドキュメンタリーは見ました。
どちらも音響は日本の会社(永田音響設計)によるものだそうです。
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