化学系エンジニアの独り言

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カリフォルニアのCO2削減法案 その2

2006-09-04 | 環境
カリフォルニアのCO2削減法案は議会を通過したものの、法廷での論争に移っています。米ではこれを経ないと発効はしないようです。(こういった法案成立の過程は良く知りませんが。)法案そのものについて産業界は賛成、反対に二分されているようです。

法案では2020年までにCO2排出量を25%削減するとしています。2009年までに細部の規制内容をまとめ、2012年からの運用を目指しています。規制の中には補助金や排出権取引などの項目も盛り込まれるようです。

米国では国としての統一された温暖化対策政策を欠いているので、各州、各地域がばらばらにまるでパッチワークのようにCO2削減に対応しています。例えば北東部7州では2019年までに発電によるCO2排出を10%削減することを決めています。
京都プロトコルを経てEUにより導入された温暖化抑制システムは有効に機能しないという意見があります。それは、排出権取引に当たってのベースラインの確定がずさんだからという理由によります。

カリフォルニアはこれまでも環境政策の先陣を切ってきました。同州が1960年代に実施したスモッグ規制はその後、1970年になってエアークリーンアクトとして全米で実施されるようになったという実績があります。
また同州は2004年に自動車からのCO2排出抑制を目的に2009年モデル車の燃費規制を決めましたが、これは北東部州に広がっています。最もいまだ自動車会社と法廷闘争中で法律自体は発効していませんが。
自動車会社にしてみれば、SOx規制・NOx規制と違って燃費規制は排ガスをフィルターに通せば解決出来るというものではなく、エンジンの再設計を迫られることとなり、コストアップを嫌っているためです。

この法案については産業界でも賛成、反対と意見が分かれているようです。
カリフォルニア製造・技術協会は、同州の単独先頭主義は州内経済の競争力を弱めるとしています。同州ではこれまでもエネルギー利用効率向上を継続して追及してきており、その結果としてエネルギーコストが最も高くなっています。ここからさらに1段アップのエネルギー効率向上は容易なことではなく、他州に対して大きな不利を背負うことになると主張しています。
温暖化が問題になるようであれば、省エネを進めるのではなく、技術の転換を図ればよい、と主張しています。これは、産業の転換ということでしょうが、同州にはその能力があるといいます。

賛成の意見はUCバークレーの研究グループからのものがあります。CO2排出量を1990年当時まで抑制すると、州内で$74ビリオン(州内GDPの3%)の生産が増大し、雇用が89,000人分生まれると主張しています。また、エネルギー効率向上の方策はまだまだ残されているといいます。
パソコンや半導体、インターネット産業のようにCO2規制により同州企業がエネルギー技術のトップランナーになれるとしています。確かに、CO2規制はハイテク産業にとっては対応しやすく、セメントや石油精製産業にとって対応することは簡単ではないでしょうが、すでにバイオ燃料などの取り組みも始まっています。

1970年当時の大気汚染浄化のための排ガス規制は、州内の大気汚染が全米中でもひどく、対応を迫られていたという背景があります。進んで先陣を切ったというよりも、最も早く対応しなければならなかったわけです。確かに、規制の内容はもっとも厳しいものであったことも事実です。
これに対して温暖化防止では、今現在カリフォルニアにおいて何か実害が発生しているわけではありません。(もっともこれは世界中そうですが)それゆえ、実害が無いのに、なぜ先陣を切るのかという意見があるものと思います。いずれにせよ、全米7位の経済圏でビジネスをしようとするのならば、この規制に対応していかなければならないようです。