化学系エンジニアの独り言

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原油価格の下落

2020-03-16 | 社会
原油価格は、3月のOPEC+による協調減産の上積み合意失敗、むしろ現行の減産を3月末で終了して4月以降は増産するという発表を受けて急落し、WTIで30ドル/バレルとなっている。12月末に60ドルだったのでほぼ半値になっている。

日本の消費者としては、ガソリンが安くなったり電気代が安くなる方向なので、歓迎すべきこととなる。但し原油価格はいろいろな商品価格にも波及するので、日本の経済活動にとってはもろ手を上げて喜んでばかりはいられない。

原油増産余力があるのは主としてサウジとロシアなので、この両国の石油会社が低価格、つまりは売上高減少にどこまで耐えられるかの競争になるという。

一方世界一の原油生産国になったアメリカについては、近年の原油増産を支えてきたシェールオイル生産がどうなるのかがポイントになる。ダラス連銀が3月4日に公表した資料によれば、主力生産地のパーミアン地層の損益分岐点は、既存の油井の平均で28ドル/バーレル(レンジで10ドル~45ドル)、新規油井平均で48ドル/バーレル(レンジで25ドル~65ドル)である。足元の原油価格では新規の油井の開発はストップすることになるのでしょう。

また、既存の油井でも30ドルを大きく上回るものがあることから、シェールオイル生産会社の中には経営的に苦しくなる会社もあるだろうとの予想です。そうすると、4月以降ではアメリカの石油生産世界一という順位は変わってくるのかもしれません。一方、2016年にも原油価格は30ドルに低下したことがあります。この時シェールオイル生産会社は、不採算油井を止めるとともに、生産技術の開発・深化によって低油価を乗り切っています。

トランプ大統領はコロナウィルス対応として、原油の国家備蓄量を増やす(石油会社から原油を買う)ことを指示しています。こういうことも後押しになり、シェールオイル生産会社が生き残れるのかに注目します。