今日はKing Crimsonの話をします。昨日のコラムで書いたように中学高校時代はYes関連のレコードを買い漁っていました。レコードを買う理由はもちろん自分が聴きたいのが一番ですが、洋楽好きの友達と貸し借りをするための持ち札確保という意味でも重要でした。みんな限られた小遣いで聴きたいレコードを全て買うことは出来ないので、学校では頻繁にレコードの貸し借りをしていました。プログレ好きの数人の間ではいつの間にかそれぞれの担当バンドが決まっていき、貸し借りすることで大御所バンドの作品はほぼ聴くことができました。Yes以外の大御所、King Crimson、ELP、Pink Floydなどは当初友人から借りたレコードをコピーしたカセットテープで聴いていたのです。
大学生になって音楽系サークルに入りバンド活動を始めました。最初はお決まりのハードロックのカバーなどをやっていたのですが、先輩バンドがKing Crimsonをカバーしているのを見てとても驚いたのです。当時プログレは聴くだけ、そんな難しい楽曲を自分で演奏するなど想像もしなかったのです。その後先輩バンドに刺激を受けてKing Crimsonのカバー・バンドを始めました。1988年、18年前のことですね。
・Lark’s Tongues In Aspic Part 2 / King Crimson
そのバンドで最初に取り上げたのがこの曲でした。中期クリムゾンの代表作「太陽と戦慄」のタイトル曲、クリムゾンのスタンダード・ナンバーですね。メタリックで攻撃的なギターリフから始まるこの曲は中期クリムゾンを象徴しています。ギターとバイオリンによる狂気のアンサンブル、そして荒削りながら変拍子を交えぐいぐい引っ張るリズムセクションは衝撃的でした。
この曲は多くのカバー・バンドが頻繁に取り上げています。もちろんスタンダード曲だということがあるのですが、それ以上に演奏する側から見て取っ付き易い素材だということがあると思います。本家クリムゾンが自身のライブでそうであるように、いかようにもアレンジできる自由度があるんですね。ただ演奏する前提でじっくり聴くと、骨組みのリズム構成はラフな様できっちり計算されており、自由度はほとんど無いことが分かります。変拍子は偶然的でなく必然的に組み込まれており、これを正確に再現しないと違うものになってしまい、コアなリスナーを納得させることが出来ません。ここがクリムゾンをカバーして最初に当たる壁でしょう。
一番の難所が中間のバイオリンソロ・パートです。ここは1/8でカウントすると、確か31/8構成になっていたと記憶しています。前半はギターとベースはユニゾン、後半はギターがテーマフレーズに移りベースはそのまま同じフレーズで通します。ここの切り替えから後半部分でリズムを見失うと帳尻が合いません。シンクロしてないように聴こえますが、ドラムとベースの完璧なコンビネーションが重要です。最後のスネアの「タッタッタッタッ」がビシッと合う瞬間が快感ですね。たまにセッションなどで「適当にやってドラムの合図でお尻を合わせましょう」とか言う人が居るんですが、申し訳ないですが出直してきてくださいという感じです。このパートを過ぎれば後はエンディングに向けダイナミクスをつけて徐々に盛り上げていきます。この冒頭部分、Bill Brufordが8ビートを叩いて合わせているのが素晴らしい、すごいセンスです。
King Crimsonはその後もいくつかのバンドで15年以上カバーし続けてきました。始めたころは曲の解釈に大変苦労しましたが、いつの間にかこのリズム構成など体の一部になった様で考えなくても自然に出てきます。プログレ・ギタリストとしての第一歩、私にとっては記念すべき曲です。
>最後のスネアの「タッタッタッタッ」がビシッと合う瞬間が快感ですね
私も出なおさなければいけない口ですね、あれが合図で次のパートにチェンジするんだろうという程度の認識しかありませんでした。31/8構成ですか、う~ん、参りました(^_^;)
>あれが合図で次のパートにチェンジするんだろうという程度の認識
そうですか、もう一度よく聴いてみてくださいきっと見えると思います。ギターがユニゾンをやめてベースが一人になってからはとにかく1/8で拍をとりながら回りを気にせずあのフレーズを弾き続ければ絶対合いますよ。そのうち慣れるとずれてもドラムと合わせられるようになります。
自由度がありそうで、実はしっかりと構築された楽曲なんですよね。楽器をやらない為、詳しい事は分からない私ですが、2nd以降のゴタゴタを抜けてようやくRobert Frippの思うKing Crimsonが始まったと言える、再デビュー作とも言えそうな今作、大好きな一枚です。
今後ともよろしくお願いします。
>2nd以降のゴタゴタを抜けてようやくRobert Frippの思うKing Crimsonが始まったと言える
この時期からFrippはようやくミュージシャンとして完成され、バンドを思うようにコントロールできるようになったと思います。Frippクリムゾンのデビュー作だと思います。
ブログ拝見しました。クリムゾンが相当お好きなんですね。的確な解説が素晴らしいですね。またゆっくりおじゃましたいと思います。
こちらこそ今後ともよろしくお願い致します。