アイヌの神話より、キサラ の いわれ をご紹介いたします。
昔、オプタテシケ(石狩岳)の神は、男神で、アカンヌプリ(雌阿寒岳)の神は、女神で、夫婦だった。
ところが喧嘩別れをして、女神はもとのアカンヌプリに帰った。が、怒りがおさまさない。男神(石狩岳)を狙って、ヤリを投げつけた。
すると、二山の間にヌプカウシヌプリ(東ヌプカウシ山)が、立っていたので、ヤリで耳を削ってヤリは外れた。女神は失敗した。
ヌプカウシヌプリは、そのヤリを拾って、オプタテシケの男神に渡したら、男神は女神に投げ返した。女神に命中した。
そこでヤリのあとが化膿した。今出る硫黄は膿塊である。抜きとったヤリのあとの穴は、然別の沼、耳を削ったあとは、
キサラベツ(耳川)、オプタテシケはヤリを受けて外れた意、アカンは投げやった刃物のささった処の意で、女神の体に当ったところの意で、女神に立ったというのをはばかっての言葉、単にそういったのだ。硫黄の出る山は、女神が、帰ってから産み落とした児である。
ヌプカウシヌプリのキサラ(耳)が削られて、飛んで来たという山は、芽室太(メムロプトコタン)から西方に見えている
ポネオプタプコプ(千年の森の裏山。どの山かまだ特定できていない)というのがそれなそうだ。
(吉田厳著・「とかちあいぬ研究」から)
十勝千年の森におかれている、アーティスト 板東優(ばんどうまさる)のアート作品『キサラのかけら』は、
この神話に出てくる、女神の投げたヤリによって削られたヌプカウシヌプリの耳(キサラ)のひとかけら。
アイヌの人々によって言い伝えられてきた神話が、アーティストによって表現されています。
普段何気なく眺めている景色にも、物語があると思うとワクワクしませんか?