「 十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ― 」
収穫の秋。
十勝では、じゃがいもの収穫がはじまっている。
ひんやりとした朝の空気の中で、畑の端にうず高く積まれた
じゃがいもの山が日をあびて光る姿は、実りの季節の豊かさと
来たるべき冬の気配を感じて身の引きしまる思いがする。
農の営みの本質に触れるような瞬間である。
十勝千年の森のキッチンガーデンでは、7月下旬のレタスの収穫にはじまり、
豆類、イチゴ、ピーマン、ネギ類、カブ、とうきび、そしてじゃがいもなどが後につづく。
今年の収穫で特筆すべきなのは、ブルーベリーである。
豊作に恵まれ、ガーデナーは来る日も来る日も収穫に追われ、
何度となくガーデンカフェやレストランにブルーベリーを届けた。
ガーデンカフェ「ラウラウ」のブルーベリータルト。
ガーデナーたちがひとつひとつ摘みとったブルーベリーがふんだんに使われている。
とびきり美味しいタルトを焼くカフェの厨房スタッフは、
最初は品良くブルーベリーを乗せて仕上げていた。
そこに心ないガーデナーから声が上がる。
「もっと! もっとたくさん! ぎっしりと!」
「ブルーベリーでいっぱいにしてほしい!」
「食べる人にこんなに!?って喜んでもらいたい!」
苦笑しながらもたっぷりとのせてくれた彼女のブルーベリータルトは、まさに旬の味。
まるでブルーベリー畑そのもの。
ガーデナーにも大人気のスイーツだ。
お皿の上で庭を感じる。
それは、ガーデンカフェの課題である。
最近はカフェの厨房スタッフと一緒に収穫するようになった。
厨房にこもりがちだった彼は、キッチンガーデンでじゃがいもを掘り、
さまざまなタイムの香りの違いに驚く。
生まれてはじめて見るコールラビやスウェーデンカブといった
西洋野菜をどう美味しく調理しようか、と頭をひねる。
フレッシュなタイムを摘んで香り豊かなハーブソルトを作り、揚げたてのじゃがいもにまぶす。
「タイム、やばいっすね!」と歓声を上げる彼は、キッチンを飛び出し、今日も庭で豆を収穫する。
「 十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ― 」と題し、
新聞とブログの連動で、食とのつながり、暮らしに添った庭づくりを提案してきた。
少しでも庭仕事の愉しみが、皆さんの心に届けば嬉しい。
全5回の連載を共に進めてきた十勝毎日新聞社の藤原記者が口にした
「自分の食べているものがこんな風にできているなんて知らなかった。」という言葉。
それこそが、キッチンガーデンを設計したダン・ピアソンの思いそのものにつながっていく。
終わりのない庭づくりの中で、原点に帰り、改めて考えてみたい。
(新谷みどり/十勝千年の森ガーデナー)
※十勝毎日新聞連載「 十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ― 」(全5回)
は今回で最終回となります。読んでくださった皆さん、ありがとうございました!