十勝千年の森

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十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ―

2009-09-21 15:01:48 | ガーデン 連載

十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ―


収穫の秋。
十勝では、じゃがいもの収穫がはじまっている。
ひんやりとした朝の空気の中で、畑の端にうず高く積まれた
じゃがいもの山が日をあびて光る姿は、実りの季節の豊かさと
来たるべき冬の気配を感じて身の引きしまる思いがする。
農の営みの本質に触れるような瞬間である。

十勝千年の森のキッチンガーデンでは、7月下旬のレタスの収穫にはじまり、
豆類、イチゴ、ピーマン、ネギ類、カブ、とうきび、そしてじゃがいもなどが後につづく。
今年の収穫で特筆すべきなのは、ブルーベリーである。
豊作に恵まれ、ガーデナーは来る日も来る日も収穫に追われ、
何度となくガーデンカフェやレストランにブルーベリーを届けた。

ガーデンカフェ「ラウラウ」のブルーベリータルト。



ガーデナーたちがひとつひとつ摘みとったブルーベリーがふんだんに使われている。
とびきり美味しいタルトを焼くカフェの厨房スタッフは、
最初は品良くブルーベリーを乗せて仕上げていた。
そこに心ないガーデナーから声が上がる。

「もっと! もっとたくさん! ぎっしりと!」

「ブルーベリーでいっぱいにしてほしい!」

「食べる人にこんなに!?って喜んでもらいたい!」

苦笑しながらもたっぷりとのせてくれた彼女のブルーベリータルトは、まさに旬の味。
まるでブルーベリー畑そのもの。
ガーデナーにも大人気のスイーツだ。

お皿の上で庭を感じる。
それは、ガーデンカフェの課題である。
最近はカフェの厨房スタッフと一緒に収穫するようになった。
厨房にこもりがちだった彼は、キッチンガーデンでじゃがいもを掘り、
さまざまなタイムの香りの違いに驚く。
生まれてはじめて見るコールラビやスウェーデンカブといった
西洋野菜をどう美味しく調理しようか、と頭をひねる。

フレッシュなタイムを摘んで香り豊かなハーブソルトを作り、揚げたてのじゃがいもにまぶす。
「タイム、やばいっすね!」と歓声を上げる彼は、キッチンを飛び出し、今日も庭で豆を収穫する。



「 十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ― 」と題し、
新聞とブログの連動で、食とのつながり、暮らしに添った庭づくりを提案してきた。
少しでも庭仕事の愉しみが、皆さんの心に届けば嬉しい。

全5回の連載を共に進めてきた十勝毎日新聞社の藤原記者が口にした
「自分の食べているものがこんな風にできているなんて知らなかった。」という言葉。
それこそが、キッチンガーデンを設計したダン・ピアソンの思いそのものにつながっていく。

終わりのない庭づくりの中で、原点に帰り、改めて考えてみたい。


(新谷みどり/十勝千年の森ガーデナー)


※十勝毎日新聞連載「 十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ― 」(全5回)
は今回で最終回となります。読んでくださった皆さん、ありがとうございました!


十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ―

2009-09-15 12:34:55 | ガーデン 連載

十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ―

キッチンガーデンに何を植えようか。
それを考える時、自分の頭に真っ先に浮かぶのはやはり「自分の食べたいもの」である。
その多くは自然と、普段は手に入りにくい西洋野菜や日本を含む伝統野菜、
絶対にそばに置いておきたいハーブや果樹であったりする。

数多くあるバジルやタイムの中からとびっきり香りの良いものを育てたい。
さやを割るとカラフルでユニークな姿を現す豆は、さぞ愉快な気持ちにさせてくれるだろう。
アーティチョークの蕾を茹でてシンプルにオリーブオイルと塩で食すのは至福の時である。

食べたいものだらけの幸せなキッチンガーデンは、自分の庭だからこそ。
種類豊富な野菜やハーブから、「これこそわたしのもの!」に出会うまで
ぜひさまざまな栽培を試してみてほしい。

十勝千年の森のキッチンガーデンでは、今後も育てていくであろう、
すでにお馴染みの野菜となりそうなものがある。

そのひとつがスイスチャード。
鮮やかな赤や黄色は、見ているだけで元気になれそうだ。



とはいえ、もちろん見るだけではない。
いつものロールキャベツをスイスチャードで作るのをおすすめしたい。

珍しい西洋野菜だけではない。北海道ならではの伝統野菜もかかせない。



写真は「八列とうきび」の葉。
実だけではなく、この葉の美しさも庭では嬉しい存在である。
栽培する人が少なくなってきているが、まだまだこのとうきびが好きな人は多いようだ。
収穫したてのものを庭でつまみ食いしてみる。
もっちりとした実は少し粉っぽさを感じさせ、後味の甘さにコクがある。
乾燥させて粉にし、パンを焼いたらさぞ美味しいことだろう。

日本は伝統野菜を多く持つ豊かな国である。
昔ガーデナーの卵として修業していた頃に、フランス人の熱心な作り手に
「日本の野菜は素晴らしい!」と熱のこもった調子で絶賛され、
ぎゅうぎゅうと握手をされたことがある。悪い気はしない。

欧米でも、世代を越えて育てられ受け継がれてきた種は
「エアールームシード」と呼ばれ、在来種や固定種とも重なる。
ちなみに「エアールーム」は先祖代々伝えられた、という意味がある。

十勝千年の森のキッチンガーデンの在り方を考えるとき、
いつもこの伝統野菜、「エアールームシード」がしっかりとしたメッセージを伴って心に浮かぶ。
品種選びは重要だと改めて感じる。

シードセイバーとして大切に慈しむように育てた種が、
やがて次の世代のガーデナーに受け継がれていく。
まるで森がそうあるように・・・。

そんな風に思いを馳せながら、小さな種一粒に密やかな夢をみている。


(新谷みどり/十勝千年の森ガーデナー)


※十勝毎日新聞連載「十勝の庭づくり ~キッチンガーデン紹介~」は
次回9月20日(日)が最終回となります。
最終回のテーマは「収穫」。どうぞお楽しみに!


十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ―

2009-08-31 14:01:22 | ガーデン 連載

「 自分で野菜を育てるならば無農薬で作りたい。 」
キッチンガーデンを作りはじめる時に、そう思う人は多いのではないだろうか。

昔から、農薬を使用せず、自然生態系の仕組みを上手に利用して
野菜を育てる知恵が受け継がれてきた。
現在、それらはコンパニオンプランツ(共生作物または共栄作物)として、
広く一般的に紹介されるようになってきた。

コンパニオンプランツは、植物同士の相性の良い組み合わせと言える。
互いに生長を促したり、病害虫を防いだり、味を良くしたりと、
その効果は組み合わせによって様様である。
十勝千年の森では、このコンパニオンプランツを積極的に取り入れて植栽計画を
立てている。



ネギ科の植物は、優秀なコンパニオンプランツの代表格である。
土壌病害を防ぎ、生育を促進する効果があると言われる。
一緒に植えているのはズッキーニなど。

味や実つきを良くし、生長を促す組み合わせもある。
たとえばブドウとヒソップ。



蜜蜂が大好きなヒソップの花は、ブドウの実つきをよくする。
十勝千年の森では、他にボリジとイチゴを組み合わせて同じような効果を得ている。
組み合わせによるが、開花時期が重なることも重要なポイントである。

生育良好につなげるばかりがコンパニオンプランツではない。
スペースの有効利用もまた、良い相性とも言えるだろう。



こちらはレタスと八列とうきび。
広いスペースが必要なとうもろこしが小さい内に、生長の早いレタスをその間で育てる。
とうもろこしが大きく育ち始める頃には、レタスは収穫されているという仕組み。
小さな庭におすすめの植え方だ。
こんもりとしたレタスの間からすっと伸びるとうもろこしが、見た目にも美しい。

当然、相性の悪い組み合わせもあれば、試して失敗!ということもある。

昨年の植栽では、スペースの有効利用にとうもろこしとカボチャを組み合わせた。
すくすくと育ったカボチャはつるをぐんぐん伸ばし、そのうちにとうもろこしに
絡みつくようになり、挙句の果てにはなぎ倒すという傍若無人振りを発揮した。
カボチャの収穫をしながら、倒されたトウモロコシを引き抜くという苦い思い出がある。

それでも一番良い相性を目指してあれこれと試みることは、とても楽しい。
相性が良ければ、植物は打って変わって生き生きとした表情を見せる。

安全で美味しい野菜は幸せな味がする。

その幸せに向かって、ぜひあなたの庭で奮闘してみてほしい。


(新谷みどり/十勝千年の森ガーデナー)


十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ―

2009-08-09 19:05:59 | ガーデン 連載

「 十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ― 」

連載2回目は「土」である。
庭づくりのすべてと言っても過言ではない土づくり。
まだはじまったばかりの十勝千年の森の庭の土は、
植物がのびのびと気持ちよく根を張るものからはほど遠い。
土づくりは、ガーデナーにとって最大の課題となっている。

ここでは堆肥づくりを紹介する。



堆肥の材料として、落ち葉馬ふん蕎麦がら剪定や除草ゴミ米ぬかなど。
十勝千年の森では、他にサイレージやヤギ舎の敷き藁など。
自分の暮らしを見回せば、堆肥に最適なものがたくさんあることに気づく。



すでに作りはじめた堆肥。
有機物の分解がはじまり、表面に白い糸状菌が見える。



堆肥の温度が50℃を切り下がってきた。
フォークを使って全体を混ぜ返し、切り返し作業を行う。
同時に、新たな剪定ゴミを追加して堆肥を作る。

場所に余裕がある場合は、堆肥枠を3~6枠作っておき、
切り返し作業の時にローテーションで使うと、とても便利。
今回はひとつしか堆肥枠がない場合を想定して、切り返しを行う。



ひとつの堆肥枠で半分ずつ作業を進める。
堆肥を底に少し残し、残りを片側に寄せる。
青いもの(剪定ゴミや台所の生ゴミ、野菜くずなど)を入れる。
早く完熟させたい場合は、少し切って加えると良い。



米ぬかを加える。



次に、馬ふんを加える。
米ぬかや家畜ふんは、堆肥が熱を発し熟すのを進める。



馬ふんを加えたら、表面を落ち葉もしくはすでにあった落ち葉堆肥で覆う。
反対側も同じように片側に寄せて作業を進める。
最後に真ん中に温度計を差し、表面をシートなどで覆っておく。
ここでは生ゴミや堆肥の熱によって生じる水分を利用しているが、
シートで覆わない場合は全体に水を加えても良い。

早ければ翌日から温度が上がってくる。
下がってきたら、堆肥の切り返しと水分調整を再度行う。
完熟した堆肥を土に鋤きこむ日を楽しみにしながら、
何度かくり返し行い、堆肥をつくる。



有機物がたっぷりと含まれ、微生物の活動が活発な森の土。
目指すのは、このような「生きた土」である。
暮らしにそった土づくりは、庭仕事を豊かなものにしてくれる。
まだ挑戦したことのない人には、ぜひその喜びを知ってほしい。


十勝千年の森を取りまく環境は実にユニークで面白みに溢れている。
木々の下では落ち葉や腐葉土にたくさんの微生物がうごめき、
森から広がる草原には馬たちがゆったりと生きている。
牧草を育て、ヤギからミルクを搾り、蕎麦を栽培して農を営む。
動物も植物もみんな自然の一部なのだと、ここにいれば強く感じる。

そんな森のなかの庭だから、森に生きるものすべてが
つながりを持って土に還る場所にしたい。
循環する庭を目指して、ひとつひとつ積み重ねていく。


(新谷みどり/十勝千年の森ガーデナー)


※このブログは十勝毎日新聞の「十勝の庭づくり―キッチンガーデン紹介―(全5
回)」と連動しています。どうぞお楽しみに!


十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ―

2009-08-02 20:51:15 | ガーデン 連載

「十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ― 」



7、8年くらい前からだろうか。
自分で野菜を育てることを楽しむ人が、年々増えてきた。

家庭菜園、有機農業、クラインガルテン、自給自足、キッチンガーデン、
オーガニック、農的な暮らし、スローフード、ポタジェ・・・
ガーデニングに関する様様なメディアに登場する言葉。
ゆっくりと何かが少しずつ動いている気配を感じてきた人も少なくはないだろう。


そして今、空前のキッチンガーデンブームだという。


それまでスコップを手にしたことのなかった人が、平日の会社のデスクで、ふと楽しい企みに
心をゆだねる。
今度の週末はあの種を蒔いて、レタスを植えて・・・。
畑とも庭とも呼べる場で、のびのびと野菜を育て、その生長を見守る楽しみ。
家族や友人たちと収穫した野菜を食す喜び。
きりっとお行儀良く列をなしていた野菜は、いつしかハーブや果樹と共にゆるやかに円を描いたり、
色や香りで隣り合わせたり、よりのびやかで楽しげな「食べる庭」へと姿を変えていく。

広大な畑がどこまでも続く、美しい十勝の風景。
当然ながら、野菜づくりはお手のもの。
そんな農業大国だからこそ、あえて「庭」という場で、十勝ならではの面白いキッチンガーデンが
たくさん生まれるのではないだろうか。想像するだけでわくわくする。


まずは庭に出よう。
ニンジンの種を蒔き、どきどきしながら発芽を待つ。
トマトがなかなか実らないことに心を配り、ズッキーニの収穫に追われて新しいレシピに挑戦する。
そして、ブルーベリーをつまみ食いしながら、見たことのないレタスの花を見て驚こう。

その先には、キッチンガーデンからの大きなメッセージが待っている。


(新谷みどり/十勝千年の森ガーデナー)

※このブログは、十勝毎日新聞の「十勝の庭づくり ― キッチンガーデン紹介 ―(全5回)」と連動しています。どうぞお楽しみに!