今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

ホスピス研修

2010-02-19 23:47:24 | 家庭医療
BCM研修の金曜午後は、ホスピス研修です

日本で「ホスピス」というと、施設を思い浮かべますが

アメリカで「ホスピス」というのは、末期状態の方に対する緩和ケア全般をさします

そして「ホスピス」は

いわゆるホスピス施設で行われるだけでなく

自宅老人ホーム病院でも行われます

実際、ホスピスケアの95%は在宅で行われます


余命が6ヶ月未満であると二人の医師に認定されると

通常の医療から「ホスピスケア」へシフトすることができます

ホスピスを受けることが決まれば、ホスピスを提供する団体に連絡します

そして患者さんの状況、希望に応じてサービスを提供する場が決定されます

在宅になる場合が多いのですが

在宅を希望しない場合や、在宅でみきれなくなった場合に

ホスピス施設への入所となります

また病院に入院中の患者さんにホスピスケアを導入すると決まれば

入院中からホスピスケアを開始し、ホスピスナースが出張サービスをすることもできます

老人ホームでも同様

ホームが通常のケアを施し、ホスピス提供団体のナースが出張してホスピスケアを施します

ここまで書くと、国策としてホスピスケアが手厚く行われているように感じるかもしれませんが

診療報酬的には、かなり厳しく

小規模経営ではやっていけず、多くのホスピス団体が巨大化しています

ドンキホーテやユニクロといった小売り業のような状況で

「薄利多売」の状況です

そうなると、質は二の次という団体も実際出てきます


今日、研修に行ったのはArbor Hospiceというわずか25床の小さな施設です





廊下


ミシガン大家庭医のアテンディングも、非常勤として勤務しており

この先生を中心に、家庭医のHospice and Palliative care fellowshipも開設されています

今日はそのアテンディングと一緒に回診です


かつてはホスピスで入所と言えばほとんどが「末期がん」でしたが

心不全、COPD、認知症、debilitation(老衰?)なども増えており

現在では末期がんが6割ぐらいで、その他が4割です

ちなみにホスピス施設に入所するようになるのは

「ホスピスケア」が導入されたあと、さらに身体状況が悪化してからの場合が多いですので

入所後、退所(死亡)までの平均日数は18日(全国平均)だそうです


ホスピスでは、よくミニコンサートをするようですが

目玉はこの1840年製のピアノ



ピアノがあるダイニング(逆光ですが、実物はなかなか明るいです)