昨年10月からメンバーに入れてもらった「考える学習をすすめる会」のHPには、「勉強応援掲示板」というのがあって勉強についての質問を受け付けている。
中学生からの質問が多いが、高校生、小学生、さらに親からのものも少なくない。
回答は自分の得意分野を中心に、メンバー(すべて個人塾の塾長)の一人が責任を持って行っている。
私は別に国語が専門でもないのだが、このブログのタイトルにもある通りことばにこだわるのは好きなので、その関係の質問は最近では私が担当するようになった。
そんな中で、昨日答えた質問はかなり奥が深そうなので紹介させていただく。
中3生からの質問で、「非」や「不」「無」という否定の接頭語の使い分けについてである。
例として「不明朗」「不自由」「非常識」「非公開」「無抵抗」の5つが挙げてあり、どういう場合にどの接頭語が付くのか教えてほしいという内容であった。
以下、私が書いたレスをそのまま転載する(一部略)。
漢字の意味は「非」=「~にあらず」、「不」=「~せず」、「無」=「~なし」ですね。このうち「非」については、「不」や「無」に比べて善悪の価値観が伴うことが多いようです。たとえば「非常識」「非科学的」などは批判的なニュアンスが強いですね。「非公開」はそういうイメージはありませんが、「公開しない方が妥当(善である)とする判断」が裏に隠れている気がします。
難しいのは「不」と「無」の違い。いろいろ考えたのですが明確にできません。とりあえず挙げてみますよ。
①まず言えるのは、「不」は動詞や形容詞に付き、「無」は名詞に付くという原則です。「不通」「不在」「不眠不休」や「不純」「不良」、「無意識」「無名」「無条件」などはわかりやすいですね。「不明朗」「不自由」などは一見名詞の前についていると思えますが、もとは「明朗だ」「自由だ」という形容動詞からできているので「不」。「無抵抗」の「抵抗」は「抵抗する」という動詞とも考えられますが、「○○する」型の動詞は名詞が変化したものと考えた方が良さそうです。ただし「勉強(する)」の否定は「不勉強」なので例外もありそうです。
②「無」がゼロなのに対し、「不」には「少しはある」というイメージがあるようです。「無料」「無人」と「不漁」「不作」「不利」などを比べてみてください。「不便」というのも全く便がないわけではありませんね。ただ、「無名」や「無能」もゼロではありませんね。狭い範囲には名が知られているわけだし、能力が全くないわけでもありません。
③ネットで調べたときに見かけたのですが、「不」を使うか「無」を使うかは、ペアになる語で決まるという意見もあります。特に「有」が付く語に対しては「無」が付きます。たとえば「有理数」に対する「無理数」、「有料」に対する「無料」、「有限」に対する「無限」などがそうです。「不」の方は「有明朗」「有自由」とは言いません。しかしこれにも例外がありますね。「無抵抗」に対して「有抵抗」とは言わないし、「有利」に対しては「不利」と言いますから。
結局どの説にしても例外があって断定はできません。①が大原則ということは間違いありませんが、「不」と「無」どちらも使える例も結構あります。「案内」「気味」「器用」「作法」などは、いずれも「ぶ」という読みで「不」「無」両方とも使えるのです。
ここからは3時間後に書いた追加レスです。
やはり①の考え方を基本に使い分けるのがいいようです。「不」「無」どちらも使うけれど微妙に意味が異なるものを考察してみました。
「無使用」と「不使用」
「無使用」は「使用が無い」=「使っていない」という状況を表し、「不使用」は「使わない」という動作に重きを置いている感じがします。
「無許可」と「不許可」
「無許可」は「許可が無い」=「許可されていない」という受け身のイメージで、「不許可」は「許可しない」という能動的・主体的イメージです。
「無敗」と「不敗」
「無敗」は「敗戦が無い」という状況を表しているだけですが、「不敗」からは「これからも負けない」という意志のようなものが感じられます。
名詞に「無」を付けた形は静的、客観的、受動的なニュアンスで、動詞に「不」を付けた形は動的、主観的、能動的なニュアンスがあるように私には感じられました。
「無抵抗」も「無抵抗な子ども相手に」など、客体(相手)が抵抗したくてもできない状況の時に使うことが多いのではないかな?ガンジーのように自ら主体的に「(暴力による)抵抗はしないぞ!」という態度を取るときは「不抵抗」と言ってもいいように思うのですが....。
正直なところ、まだはっきりと使い分けがわかったわけではない。
そんなに厳格なルールはないのかも知れないし、時代と共に変わっていく面もあるだろう。
ただ、すべてを「知っていないとわからない」状態のままにしておくのはスッキリしない。
私が気づいていない規則や慣例があれば、どなたか教えてもらえないだろうか。
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中学生からの質問が多いが、高校生、小学生、さらに親からのものも少なくない。
回答は自分の得意分野を中心に、メンバー(すべて個人塾の塾長)の一人が責任を持って行っている。
私は別に国語が専門でもないのだが、このブログのタイトルにもある通りことばにこだわるのは好きなので、その関係の質問は最近では私が担当するようになった。
そんな中で、昨日答えた質問はかなり奥が深そうなので紹介させていただく。
中3生からの質問で、「非」や「不」「無」という否定の接頭語の使い分けについてである。
例として「不明朗」「不自由」「非常識」「非公開」「無抵抗」の5つが挙げてあり、どういう場合にどの接頭語が付くのか教えてほしいという内容であった。
以下、私が書いたレスをそのまま転載する(一部略)。
漢字の意味は「非」=「~にあらず」、「不」=「~せず」、「無」=「~なし」ですね。このうち「非」については、「不」や「無」に比べて善悪の価値観が伴うことが多いようです。たとえば「非常識」「非科学的」などは批判的なニュアンスが強いですね。「非公開」はそういうイメージはありませんが、「公開しない方が妥当(善である)とする判断」が裏に隠れている気がします。
難しいのは「不」と「無」の違い。いろいろ考えたのですが明確にできません。とりあえず挙げてみますよ。
①まず言えるのは、「不」は動詞や形容詞に付き、「無」は名詞に付くという原則です。「不通」「不在」「不眠不休」や「不純」「不良」、「無意識」「無名」「無条件」などはわかりやすいですね。「不明朗」「不自由」などは一見名詞の前についていると思えますが、もとは「明朗だ」「自由だ」という形容動詞からできているので「不」。「無抵抗」の「抵抗」は「抵抗する」という動詞とも考えられますが、「○○する」型の動詞は名詞が変化したものと考えた方が良さそうです。ただし「勉強(する)」の否定は「不勉強」なので例外もありそうです。
②「無」がゼロなのに対し、「不」には「少しはある」というイメージがあるようです。「無料」「無人」と「不漁」「不作」「不利」などを比べてみてください。「不便」というのも全く便がないわけではありませんね。ただ、「無名」や「無能」もゼロではありませんね。狭い範囲には名が知られているわけだし、能力が全くないわけでもありません。
③ネットで調べたときに見かけたのですが、「不」を使うか「無」を使うかは、ペアになる語で決まるという意見もあります。特に「有」が付く語に対しては「無」が付きます。たとえば「有理数」に対する「無理数」、「有料」に対する「無料」、「有限」に対する「無限」などがそうです。「不」の方は「有明朗」「有自由」とは言いません。しかしこれにも例外がありますね。「無抵抗」に対して「有抵抗」とは言わないし、「有利」に対しては「不利」と言いますから。
結局どの説にしても例外があって断定はできません。①が大原則ということは間違いありませんが、「不」と「無」どちらも使える例も結構あります。「案内」「気味」「器用」「作法」などは、いずれも「ぶ」という読みで「不」「無」両方とも使えるのです。
ここからは3時間後に書いた追加レスです。
やはり①の考え方を基本に使い分けるのがいいようです。「不」「無」どちらも使うけれど微妙に意味が異なるものを考察してみました。
「無使用」と「不使用」
「無使用」は「使用が無い」=「使っていない」という状況を表し、「不使用」は「使わない」という動作に重きを置いている感じがします。
「無許可」と「不許可」
「無許可」は「許可が無い」=「許可されていない」という受け身のイメージで、「不許可」は「許可しない」という能動的・主体的イメージです。
「無敗」と「不敗」
「無敗」は「敗戦が無い」という状況を表しているだけですが、「不敗」からは「これからも負けない」という意志のようなものが感じられます。
名詞に「無」を付けた形は静的、客観的、受動的なニュアンスで、動詞に「不」を付けた形は動的、主観的、能動的なニュアンスがあるように私には感じられました。
「無抵抗」も「無抵抗な子ども相手に」など、客体(相手)が抵抗したくてもできない状況の時に使うことが多いのではないかな?ガンジーのように自ら主体的に「(暴力による)抵抗はしないぞ!」という態度を取るときは「不抵抗」と言ってもいいように思うのですが....。
正直なところ、まだはっきりと使い分けがわかったわけではない。
そんなに厳格なルールはないのかも知れないし、時代と共に変わっていく面もあるだろう。
ただ、すべてを「知っていないとわからない」状態のままにしておくのはスッキリしない。
私が気づいていない規則や慣例があれば、どなたか教えてもらえないだろうか。
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消費税の課税に関して、課税・非課税・不課税があります。その違いは
・非課税-消費税の課税対象要件に合致しているが、社会政策上課税対象から外されるもの。
(例-1) 消費税の性格上課税対象とすることになじまないもの。
土地の譲渡・貸付など、利子・保険料など、郵便切手・印紙などの譲渡、商品券・プリぺー度カードなどの譲渡、住民票・戸籍謄本などの行政手数料など、外国郵便など
(例-2) 社会政策的な配慮に基づくもの
社会保健医療など、一定の介護サービス・社会福祉事業など、助産、火葬・埋葬料、一定の身障者用品の譲渡など、授業料・入学金など、教科書の譲渡、住宅家賃(居住用のみ)
・不課税-消費税の課税対象要件からはずれるもの。
(例) 国外取引、事業として行われるものでない取引 (自宅の家具などの売却)、保険金・共済金・利益の配当・寄付金・見舞金など
これぐらいでお許しください。
これからお忙しい時期故、お体にお気をつけください。
「不許可」が「許可しません」という現在から未来への時制にわたっているのに対し、「無許可」は「許可されていない」ということで過去から現在までの状況を指しています。
英語の受動態もそのあたりと関係があるんでしょうか?
お気遣いありがとうございます。
生徒も風邪やインフルエンザの子が増えてきました。ずいぶん長引くようです。
テツさんも申告時期が終わるまではお忙しいですね。くれぐれもご自愛ください。
さて「非課税」と「不課税」の違い、興味深く読ませてもらいました。やはり「非」の方が「判断の結果」という意味合いが強いようですね。参考になりました。
なるほど、時制との関係ですか。面白いです。
英語の受動態まで話が広がるとは思ってもいませんでした。
引き続き考えてみます。またユニークなご見解、お待ちしていますよ。
不実は事実でない、無実は事実がない。
不にはどこか意志が感じられます。無は意志もなんにもないって感じかな。
そうなんですよね。「不」には意志、主体性が感じられるんです。今までそんなこと意識したこともなかったので、今回調べたことによる新鮮な発見でした。