火垂る

田植えから２０日を過ぎた
苗の分結が始まって 小さかった苗はたくましく育っている
除草剤の散布の時期だ
一反あたり1袋づつ　撒く量の加減を注意しないと忽ち足らなくなってしまう
散布器が肩に食い込んで痛い
畦を歩く足も重い
4枚の田の散布を終えるか終えないうちに急に雨が降り出した
蛙がうるさく泣いている
今日の作業はこれでもう出来ない
疲れた身体にとっては良いタイミングで雨になった
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夜　キムタクのMrブレインを見終わって外に出ると
雨はすっかり上がっている
クレソンの白い花で埋まっている小川の上を 
源氏蛍がぽっぽっ と飛んでいる
もうそんな季節か?
昔はもっと夏に近づいた頃見ていたような記憶がある
竹箒を振り回して捕っていた
当時 東京のちんざんそうに売るのだというアルバイトで
何匹も捕って 学校に行く途中 仲買の家に持ち込んでいた
いったい一匹幾らで売っていたのか記憶に無い
今はそんな無粋な気分にならない
しばらく時間を忘れて魅入っていた
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その夜更けは
蛙の鳴き声だけ聴こえる家でゆっくり1Q84を読む
誘惑のない静かな時間が過ぎていった