「羊と鋼の森」 最初は変わったタイトルと思ったが
おいらはあまりそそられなかった それが
2016年度本屋大賞受賞?と聞いて読む事にした
タイトルの意味は最初の数ページで判読するからさほどひねっているとは言えまい
羊→繊維→フェルト(ピアノのハンマーに貼り付けてある繊維)
鋼はピアノの弦(ピアノ線)を指す ようするにピアノの森だ
作者サイドは一色まことのコミック「ピアノの森」 とかぶるのを嫌って
こんなややこしいタイトルにしたのだろう か?
その「ピアノの森」で思い出した事がある
私の田舎の隣家は夫婦二人共亡くなって空き家になってしまった
その隣家の老夫婦は貧しかったが敬虔なクリスチャンで
住まいとは別に 我が家の向かいの山影に
小さな教会の様なものを建てていた
田舎なのでほとんど信者が訪れることも無いほんのささやかな 教会だが
親戚の娘のお下がりだという アップライトピアノを
古い足踏みオルガンと並べて据えている
讃美歌を唱う時に使っていたのだろう
田舎でもあり持ち主が亡くなった今
勿論 調律などされるはずも無く
弾く人もないまま 何年も捨て置かれているのが
なんともピアノが可哀想でもったいなく
一度 私の友人が歌謡教室に使うピアノを探していたので
故人の身内に譲ってほしいと打診したのだが 良い返事を貰えなかった
(本当のところ手間を考えるとどうでもよかったのだが)
そのささやかな教会の建物は
裏山からの木の枝や雑草に覆い隠され
今にも山に取り込まれそうになっているのだが
それでも未だ 親戚の方がピアノを引き取って行くようすもない
結局 件のピアノは山の教会と共に朽ち果ててしまうのだろう
まあそれもまた仕方ない
話を「羊と鋼の森」に戻そう
今回 この本を開いてるあいだじゅう何か幸せな気分だった
それは ストーリーのせいかもしれない
が
それより この本の作者が人の深層心理をうまく捉えて
文章を紡いでいるせいだろう
自分が欲しかった言葉を見事にみつけてくれているから
幸せな気分になるのだ
この作家の次の作品を楽しみに待とう