深キ眠リニ現ヲミル

放浪の凡人、中庸の雑記です。
SSなど綴る事アリ。

秒速5センチメートル

2007年05月03日 | 感想

 もう、見てから一ヶ月以上経って、ようやくこのことについて語ることができる。別に、シャーロック・ホームズでお馴染みの、この話をするのが、依頼人の名誉etcによって阻まれているわけではなく、語ろうと思えばいつでも語ることができたのだが、私の中でどうせ書くならば、いつものように軽く書きたくはないという思いがあった。その為に、ためにためて今になっているわけである。
 さて、前置きはこのあたりにして、早速「秒速5センチメートル」(以下「秒速」)の話をしたい。
 その前に、そもそも「秒速」ってなんでしょうか。という方もいるであろう。私がいろいろ述べるよりも、公式(ブログ)もしくはyahoo(掲載期間2007.06.30まで)を見に行かれるとよいだろう。簡単に説明すると、「ほしのこえ」や「雲のむこう、約束の場所」の監督である新海誠の新作で2007.03(先月)に公開された。ちなみに「ほしのこえ」の作画及びシナリオは彼一人によって手がけられたことでも話題を呼んだ。
 今作は前作の「雲(以下略)」の長編に対し、短編である。正確には短編S,である。三本の短編の集合である。第1話「桜花抄」、第2話「コスモナウト」、第3話「秒速5センチメートル」いう順序であります。

 第一話の「桜花抄」が私としては一番好きです。タカキが豪徳寺から岩舟に辿りついたあたりは、何気ないことのはずなのに、とてつもないことが行われたような気すらしてきました。「秒速5センチメートルなんだって」「桜のおちる速さ」(こんな雰囲気だった)そのイントロがとても印象的でした。一応予告編でタイトルの意味は既に知っていたけれど、その「桜のおちる速さ」が何を意味するかほとんど検討がついていなかった。
 第一話は主人公の目線で描かれていて、とっても青春?な話しでした。見所は各所の背景。桜の描写も電灯一つでさえ美しく、そのリアリティによって、よりいっそう主人公たちのいる世界に入り込むことができた。まだ、携帯の一般的でない時代、遠くに住むということは、永遠の別れにも等しかったなぁ、と本当に思います。私も昔のあの人は、今どこだろうなんてことをふと思ったりします。携帯の番号も知らないし、繋がりは私たちが昔交わした言葉や、見せ合った表情、それらの思い出だけだ・・・。人のつながりは本当に頼りない僅かな糸のようなものです。だからこそ、タカキが彼女に会うために、必死で時刻表や地図を引っ張り出して、その一日に想いをかけるという行為が、本当に心に響きました。
 

 第二話は打って変わって、主人公が鹿児島に越した後の高校時代の話。題名のコスモナウトというのは、アストロノートと同一の意味らしいです。視点は主人公に恋焦がれる少女で、三篇の中では色が少し違う。主人公は見られる存在としてのポジションで、他人からみた主人公の印象というものを感じることが出来た。
 それにしたって、やはり風景の描写がとても美しい。なんだか、鹿児島に住みたいなとか少し思ってしまいました。今住んでいる横浜とも、自分の実家とも全然違う雰囲気で、長閑さと南国的な温かさが漂っていて、その世界を堪能できました。
 なんだか、すでに見てから一ヶ月以上経っているので、忘れ気味なので、こんなことしか書けないのが残念である。

 第三話は社会人になった主人公が描かれている。なんかSEやっとりました。仕様書締め切りみたいな付箋があったりして・・・。家に持ち帰って仕事か。最近はいろいろうるさいので、出来ないと思いますけれど、現場によれば、そうするところもあるのでしょうか。見た感じ、タカキ君的には満足した日々を送っていない様子で、付き合っている彼女ともすれ違っている風な描写もあってっけ。
 第三話は短く、そのほとんどが山崎まさよしの「one more time,one more chance」に合わせてタカキとアカリの軌跡が凝縮されています。私としても大好きな曲で、そのせいもあって、コップの中の水が零れそうに揺れるように、胸の中の何かが揺れました。

 「どれほどの速さで生きれば、君にまた会えるのか」とは、ポスターに書いてあるキャッチ。その言葉に触れた瞬間、私は昔思った人の事を少しだけ思い出したような気がした。私は、どれだけのあいだ、そんな気持ちを忘れていたのだろうか・・・。
 またその人に会えるかは分からないけれども、そんな誰かに今の自分をみせられたら、そして見せられるような自分になろう、と思えた日でした。