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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

アルフレッド・ヒッチコック監督『サイコ』(1960年)

2020-07-30 21:46:59 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

サイコ Psycho 1960

2020/7/30

・会社の顧客の金を持ち逃げした女が何者かに殺され、彼女の恋人と妹が犯人を突き止める話。

・ぼんやりと話は知っていたものの、おそらく初見。

・最初はジャネット・リーが演じるマリオンを中心に話が進む。

・ホテルでの逢引から始まって、結婚するしないで彼と意見が合わず、頭痛に悩みつつ、面倒くさい客をやりすごす。

・この中でサラッと出てきた借金が展開を進める燃料になるとは。

・見る人を共感させる要素をしっかりすぎるほど描写して、いざ逃走。

・誰が見たって成功するわけないんだけど、誰が見ても持ち逃げにチャレンジしてほしいと思うはず。映画だもの。

・物語からの要請は理屈を超えることがある。

・やたらと存在感のあるハイウェイの保安官。サングラスが強い。Wikiでみたけど、役名ないのか。死ぬか殺すかしてほしかった。

・曲の煽りが強い。たとえ休日にのんびり家族で流しそうめん食べてるようなシーンでも、この映画の曲が流れたら誰か死ぬと思う。

・個人情報の取り扱いが雑。時代が違うと言えばそれまでだけど、強めのカルチャーギャップを感じる。宿泊者名簿まで他人に見せちゃう。

・事件現場の鍵もかかってないし、全体的に管理が甘く見えちゃうのは今の感覚で見るから。

・であれば、一昔前の設定にすればこういう描写できるのかというと、よっぽどうまくバランス取らないとやっぱりノイズになると思う。良くも悪くもその時代だからこそ作れるルーズさ。

・殺害シーンの迫力のなさが逆に怖い。ちょっと笑いそうになるくらいチープ。あえてそうしてる部分もあるんだろうけど、そのものを描くのはやはり難しい。

・ジャンルで言うと、サスペンスでいいんだろうか。途中でミステリーとホラー演出が入ってくるので、全体で見ると分類しにくい。

・途中で観客の緊張感を担う依代みたいな存在がいなくなってしまうので、前半と後半で別の話になっているようにも見える。

・たぶん、「母親」とか「ここではないどこかへ」みたいなことが作品全体のテーマになってくると思うけど、うまく結びつかず。有名作品なので、探せば先行研究もありそう。

・真似してみたい構成ではあるけど、使いこなすのは大変そうな作品だった。

(Netflix)


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劇団コヨーテ『君が笑えば僕も笑う』

2020-07-23 21:52:00 | 演劇を見てきた

2020/7/17

一人の笑い屋を軸に、本人と笑い屋の話し相手たち4人がそれぞれの身の上話をする話。

構成的には一人芝居×5本。すべて透明な相手と会話する形式。

各話の中で次のエピソードの登場人物の説明を出してつないでいく。

全部ではないけど、笑い屋がリレーのバトン代わりになって、それぞれの過去へ遡っていくような感じ。

なので、形式とは別に、五人の役者さんによる一本の作品として考えた方が良さそう。

会話形式とは言え、一人芝居の場合は、写実的にやるより語りの延長としてやってもらったほうが聞きやすい。

落語を聞くことに慣れているせいかも。

ナガムツさんのおばあちゃん。すっかり認知が進んでるように見えて油断してると後ろから刺されそうな感じが面白い。

歌謡曲のくだりで笑ったり。

全容が把握できたとはとても言えず。

映像と組み合わせた作品も制作するそうなので、追加の発見がありそう。

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「プレイタイム ライブ配信のための演劇」

2020-07-13 23:50:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)
シアターコクーンライブ配信「プレイタイム」

2020/7/13

付かず離れずの男女が愛を受け入れる受け入れないと語り合う話。ライブ配信を視聴。

岸田國士『恋愛恐怖症』を元に構成されている、森山未來と黒木華の(ほぼ)二人芝居。

とは言え、主役はシアターコクーンという劇場。

動画が始まると何かの機械内部のような狭い場所をウネウネ移動していく映像。

ちょっと知ってる人なら劇場の舞台裏だとわかる。

そのまま仕込みの様子、演者のウォームアップが映り込み、(おそらく)ワンカットで終演まで。

ミスがないどころか移動や画角の切り取り方にも違和感がない。

一体、撮影はどうやっているんだ。

劇場の裏側を見せることは、作品世界への没頭感が目減りするので諸刃の剣でもある。

それを圧倒的なカメラワークの技術で美しく見せる。

仕込み中に見えていた仕掛けが上演中に発動するところ。

前振りと回収の気持ちよさは、おそらく『カメラを止めるな』の面白さに近い。

映像ならではの魔法の掛けかたで、役者、戯曲の言葉、テクニカルを全てを使って、劇場をカッコよく見せていた。

多くの人が劇場という場に飢えているこの時期だからこそ、より効果的に楽しめる作品だった。


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キンバリー・ピアース監督『ボーイズ・ドント・クライ』(1999年)

2020-07-09 22:40:51 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

ボーイズ・ドント・クライ (字幕版)


2020/7/9

男性として生きたいトランスジェンダーの若者ブランドンが、生き急いでしまう話。

男性と言われれば見えるギリギリの見た目と声。顔の情報量が多くてずっと見ていられる。

肉体は女性でも髪型や服装は男性だし、やることがいかにもな不良少年っぽい。

彼は、体が女性であることを隠したまま、ある女の子と恋をする。

カラオケ周りのシーンの生々しさと世間知らずな痛々しさが好き。

言動は普通にいいやつなんだけど、アメリカの貧困層だからか、犯罪との距離が近い。

若さ未熟さを考えると、トランスジェンダーでさえなければ、ただの青春の過ちで済んだかもしれない一連の出来事。

気の毒としか言いようがない。

wikiによると日本ではPG12らしいけど、不快になったり変に影響されたりしても、作品のせいにせず、自分自身で責任が取れる大人だけ見たほうがいい感じの作品。

もしかしたら、劇場公開時には何らかの加工をしていたのかも。

(U-NEXT)



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黒澤明監督『七人の侍』(1954年)

2020-07-08 23:47:00 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

七人の侍(プレビュー)

2020/7/8

・戦国時代、侍たちが百姓とともに野武士から村を守ろうとする話。

3時間26分(途中5分休憩含む)。長い。密度が濃いので見ると短い。

・仲間集め、村人との交流、野武士との決戦と、ほぼ1時間ずつ3パートに分かれる。一般的な三幕物と考えるとちょっと不思議なバランス。

・ジャンルはアクションでいいと思うけど、本当に派手なところは後半1/3のみ。残り2/3はじっくり人間関係を描くことに使っている。

・特に侍と百姓との不思議な関係。付かず離れず決して相容れない。

・共に野武士と戦う時ですら、その距離感はあまり変わらない。

・その二つの身分を繋ぐ菊千代という存在。村に到着した時や、落武者狩りの件、水車小屋が燃えた時と、とにかく繋ぐ役割を担っている。

・旗印の△が、○と「た」の間にあるのも、そういう意図なのかも。

・勝四郎の逢引の時には菊千代は出てこない。最終的にはやっぱり相容れないという落とし所には真実味と悲哀がある。

・勘兵衛。激昂する相手を「いや、失礼仕った。拙者~」となだめる言い方。クレーム対応もうまそう。

・「良い城にはきっと隙が一つある。その隙に敵を集めて勝負する。守るだけでは城は持たん」。今後城を作る機会があったら参考にしたい。

・仲間になるところ、極力、説明的な掛け合いを省略している。結果を見せれば過程は省略していても想像で補える。

・何気に初期から息のあっている勝四郎と久蔵。

・菊千代は何がどうなったらああいう役作りになるんだろう。

・馬の使い方が荒い。落馬して馬に踏まれたり、引き摺り回されたり、水溜りに馬ごと突っ込んでいったり。馬も役者もすごい。

・侍たちが姿勢良く全力疾走する様がカッコいい。様式ではない剣と馬の戦いに迫力がある。

・見ていれば、騎馬と銃の厄介さが説明なしに伝わる。

・主要人物の死に方があっさりしている。周囲が取り乱すところは見せても、編集で強調するようなことはしていない。無常感が強い。

・予定調和の感じもしないので、初見で見たら誰が死ぬのかなかなか予想がつかないと思う。

・最期に刀を投げつけるところがそれっぽい。

・敵ボスのあの三日月兜は目立ちすぎてかえって危ないのでは。

・今にも死にそうなのに言うことがいちいち過激な長老と、侍でも抑えられない興奮状態の群衆を存在だけで黙らすばあ様。

・敵も味方も野山をほぼ半裸泥まみれで駆け回ってる。生傷も絶えないだろうし、勝手に衛生面が心配になる。

・長くても何度見ても苦痛にならないし、発見のある作品だった。

(U-NEXT)

 

※唯一うまくいったつもりの似顔絵。

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弦巻楽団『出停記念日』

2020-07-06 01:31:00 | 演劇を見てきた

2020/7/3

クラスの大半が出席停止になった教室で、残った生徒たちがそれぞれに時間や気持ちを持て余す話。

望む望まないにかかわらず、クラスから、学校から、友人関係から、人生から、それぞれの枠からはみ出した、どちらかというと多数派に入っていない人たちの話でもある。

各役を複数の役者さんが交代しながら演じる。椅子取りゲームのようだった。

一人一人を追おうとするとよくわからなくなるので、抽象度高めで見守る。

結果、個人の人となりや、人と人との会話劇を見るという感じではなく、各人の境遇に共通する要素が浮かび上がってきて、作品全体が一枚の絵のように見えてくる。

なので、作家性を強く感じる仕上がり。

演者の自由度は高いと思うけど、「同じ役を複数人で演じる」ことを、制約と取るか、面白味と取るかで出来が変わりそう。

誰もが多数派であり、誰もが少数派でもある。

その枠組は自分たちの周りにもたくさん重なっていて、うんうんうなづきながら楽しんだ。



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樋口薫『受け師の道 百折不撓の棋士・木村一基』

2020-07-05 23:50:00 | 読書感想文




2020/7/4

木村一基九段が46歳で初タイトルを獲得するまでの半生を、本人や周囲のインタビューで振り返る本。

帯には「最年長・最遅・最多挑戦」とある。まさに百折不撓。

最初に観たときは単に解説の面白いおじさんという印象だった。

あだ名も「将棋の強いおじさん」。

そりゃプロなんだから当然と思いつつ、ちょっと調べてみると、プロの中でも相当強いほうのおじさんだとわかる。

飄々とした語り口の解説と、その内側にある勝負師としての熱量。

今回の王位戦まで、タイトル戦を六回も経験している一方で、すべて負けている。

三連勝の後の四連敗など、負け方も結構ひどい。

体の衰えと若手の台頭を感じつつ、それでもトップ戦線に戻ることができた要因のひとつが、将棋ソフトの研究。意外。

悲哀とユーモア、そして情熱の人だった。

藤井聡太七段が挑戦者となった今年の王位戦、どうにか踏ん張ってほしい。

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LOFT PROJECT「せやろがいおじさん&プチ鹿島“これでもか”トーク!」

2020-07-02 21:49:00 | レポート

せやろがいおじさん&プチ鹿島“これでもか”トーク!


2020/7/1

時事ネタを扱う2人の芸人が、ネタを披露するのではなく、お互いの活動の愚痴や悩み、普段の心掛けを語り合う配信。

普段は飄々とした語り口のプチ鹿島さんも、有料配信のホーム感覚か、同じジャンルの仲間への親近感か、結構、手の内を晒して率直に語ってくれる。

ライバルはsnsのスピード感、検察リーク情報を扱う事への逡巡、森まさこ議員の起死回生の一手案、一言で「姑息」と言える案件をどう面白く表現するか。

プチ鹿島さんの、「根は野次馬」と言いつつ、プロレス、ゴシップ雑誌から大手新聞社まで網羅する視野の広さと、普段は見えにくいネタ作りの丁寧さがよくわかる。

せやろがいおじさんは、どちらかと言うと先輩へのお悩み相談感が強かったけど、正しさを求められすぎる窮屈さ、切実さが伝わってきてしみじみする。

ただおじさんが語らうだけの配信で3時間があっという間だった。

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