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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

ウィリアム・ワイラー監督『ベン・ハー 』(1959年)[2/2]

2025-04-29 07:59:00 | 映画を見てきた

2025/4/28

・前半の海戦。海賊と兵隊と奴隷たちが入り乱れるわ火がもえあがるわで、わちゃわちゃ。

・ガレー船のオールって外洋で役に立つんだろうか。動力としての費用対効果が悪すぎる気がする。

・ジュダが自分は逃げられるのに、ギリギリまで残って他の奴隷たちを助けようとしている。まさに英雄というか、主人公の行動。

・色んな意味で良くも悪くも野蛮。

・2000年前の話だから当然なんだけど、罪人とされる人たちの扱いが本当に酷い。

・岩がちの砂漠を長時間裸足で歩かす、ガレー船の動力扱い、年単位で牢獄に閉じ込めて食事だけ差し入れる、ただの洞窟でしかない「業病」の谷。死んだら捨てる。

・平和ボケした現代人に、人間の悪い意味の可能性を見せつけてくる。世の中、人権の一皮を剥けば、このくらい退行しかねないというのは心に留めおきたい。

・馬の統率が取れていない四頭引きの戦車のシーン。うまくできていない時のほうが撮影難易度は高そう。

・最大の見せ場は後半の戦車レース。観る前は戦争で戦車が活躍する話だと思い込んでいた。

・CGでなくても色んな映像技術を使っているから、見た目そのままの危険度ではないにしろ、普通に戦車から振り落とされて馬に轢かれている人が続出しているし、馬自体も暴れているし、動物愛護的な感覚も怪しいし、撮影現場もそれなりに野蛮だったんだと思う。

・そして、現代においては、その野蛮さが本作最大の魅力になっている。もうこんなの二度と作れない。

・レース中の救護班が活躍している。落ちたら次が来る前に運べという勢いがすごい。大変そう。

・メッサーラがクドいくらい鞭で馬を叩いている。そんなに悪党演出を強調しなくても。車輪の仕掛けもズルい。

・字幕上は「業病」。ライ病を指しているらしい。

・業病という言葉だと、前世の報いによる病気だから、今は使わないほうがいい言葉だと思う。

・恋人エスターの新興宗教にあてられた感じがちょっと怖い。彼女が言う「あなたは変わってしまった」も、お前ほどじゃないよと思ってしまう。

・最後は強引だと感じたけど、最初にキリストの話と出てくるので割り切る。聖書に似たエピソードあるのかな。

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ウィリアム・ワイラー監督『ベン・ハー 』(1959年)[1/2]

2025-04-28 21:29:29 | 映画を見てきた

2025/4/28

・ユダヤ人のジュダ・ベン・ハーが、不運な事故により罪人としてエルサレムを追放されるが、獄中の母と娘を助けるため、どうにか帰還しようとする話。

・いわゆる貴種流離譚。追放された英雄が艱難辛苦を乗り越えて故郷に凱旋する話。

・前半が141分、休憩が10分、後半が80分。

・誰もが知る古典だけど、これだけ長いと実際に観たことない人は意外と多いかも。

・最初に無地のスクリーンのまま壮大な音楽だけ長々と流れる。あまりに長いので映像機器の故障を疑う。こんなことしているから4時間近くかかる。

・解説によると西暦26年。場所はローマ帝国のエルサレム。キリストも出てきて重要な役割を果たす。

・特別な存在であるキリストの顔は映さない方針で、遠近感で存在の大きさを示したりしていた。

・寝不足もあり、最初の15分の間に30回くらいあくびをしてしまう。体調的に厳しいかとちょっと後悔する。

・それでも旧友であり宿敵でもあるメッサーラがクソ野郎ぶりを発揮しだしてからは最後まで退屈しなかった。

・優れた悪党は良いカンフル剤になる。

・メッサーラが手持ち無沙汰になって、鞭で部下にちょっかいを出すのは、しょうもなくて好き。子供か。

・ジュダみたいな有能な人は仲良くなったほうが絶対得なのに、民族や出世のために排除しようとすることで、手痛い反動を招いてしまう。

・それにちゃんと現場検証もしたんだから、母と妹は許してやれよと思ってしまう。ジュダは追放したから交渉のカードにもならないし。

・本当に復讐のため戻ってくるのを心配したのかな。

・母と娘が本当にかわいそう。どんな人なのか作中でほとんど説明がなく、しかも物語上の役割が母娘同じなので、わりと存在感が薄い。

・建物がかっこいい。ガラスが一般的ではないようで、窓は格子を板状にしたものを組み合わせた形状。

・同じ場所を繰り返し見せる構成は巧い。

・『テルマエ・ロマエ』の影響でお風呂のシーンに既視感がある。

・ジュダになつく馬たちがかわいい。ちゃんと人間の声と掛け合いができている。賢い。

(札幌シネマフロンティア)

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S.S.ラージャマウリ監督『RRR ビハインド&ビヨンド』

2025-04-22 18:18:00 | 映画を見てきた

2025/4/18

・『RRR』のメイキング。名シーンの撮影裏や完成した作品が世界的に広がっていく様子を紹介している。

・本編から時間が経っているので結構忘れている。

・ラーマが暴徒と化した群衆に飛び込んでいくシーンから始まる。ああ、あったあったと気持ちが上がる。

・殺陣と言うには泥臭い乱闘で一人一人に演技は付けられない。エキストラがとても興奮しているように見える。そういうノリの良さも作品の質に直結するんだと気づく。

・総じて、主演二人の超人的な頑張りと、演者スタッフがこぞって指摘するS.S.ラージャマウリ監督のイメージの明確さによって成立している。

・もともと親友の二人が主演でこんな映画が作られたら、役者人生のゴールなんじゃないかという気がする。

・役者さんの名前をちゃんと認識していなかった。ビームは、N.T.ラーマ・ラオ・ジュニア。

・時々、「まだやるのか」とボヤきながらも最高のパフォーマンスを見せるところは素直にかっこいい。暴れ狂うホースに内心冷や冷やしながらも微動だにしない。

・子供を助けるシーン。二人は何日も宙づり状態が続くし、水中のシーンでは溺れかけながらも、力強く、少しだけコミカルなシーンを撮影する。

・ビームがイギリス総督の公邸に乗り込むところ。猛獣たちはCGなので、撮影現場には存在しない。

・それでも、野生動物ならではのスピード感を損なわず、かつ人間たちの目線に不自然さが残らないよう、撮影現場では様々な工夫をしていた。

・動物たちが飛び出していくところで、インドやアメリカの映画館の観客たちが、声を出して喜んでいる様子が日本と全然違う。日本だとわざわざ「発声OK」と書いてある上演でも拍手くらいまで。

・ナートゥのシーン。メイキングで見ても感動する。

・二人のシンクロにこだわる監督が何度も何度もリテイクする。ここのシーンに限っては個性を認めない。

・とりあえず、朝のアラームをナートゥにしてみた。

・本メイキングでは、音楽のM.M.キーラヴァーニが裏主人公的な立ち位置。カーペンターズの「Top of the wprld」のくだりが好き。

・メイキングとしてはシンプルな作りだからこそ、作品の持つパワーをそのまま再摂取できる作品だった。

(サツゲキ)

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ギンツ・ジルバロディス監督『FLOW』

2025-04-04 00:18:24 | 映画を見てきた

2025/4/1

・陸地が水に沈みゆく世界で、生物たちが生き延びようとする様子を、一匹の黒猫を中心に描いた話。

・水の表現にかなり力が入っているので、洪水に嫌な記憶のある人は気をつけたほうがいいかも。

・(たぶん)鯨類も出てくるし、あれは海水でいいんだろうか。透明度の高さがちょっと違和感。

・人間は一切出てこないのに、生活の痕跡は濃い。

・たくさん動物が出てくる。喋らない。行動と環境の変化だけで進行する。

・それがどれくらいの難易度になるかは、目的によって変わる。誰もが楽しめる長篇娯楽映画ならほぼ不可能。本作も基本アート映画として見る感じ。

・ラジオ番組のアトロク2で言及されていた「神話的」というのは同感。

・黒猫は、人が残した空き家を住処にしていたが、その家も沈み、たまたま流れてきた小舟に乗って漂流する。

・人類が一切出てこないのに、生活の痕跡が濃い。

・話が進むにつれ小舟の乗客が増えていく。カピバラ、キツネザル、犬(ゴールデンレトリーバー?)、ヘビクイワシ。

・成り行きでは一番仲間になりにくそうなカピバラをあらかじめ船に乗せている。

・猫や犬、サルまでならペットや介護で人と深く付き合うこともあるからまだわかるけど、カピバラが積極的に利他的な行動をとるのは作為的に感じる。

・おバカな犬、かわいいけど、イラっとはする。

・ヘビクイワシが同族から黒猫をかばおうとするのはさすがにありえないように感じたけどどうなんだろう。

・動物の動きの再現度が高いだけに、少しでも人間的なそぶりを感じるとノイズになってしまう。

・かといって、ナショナルジオグラフィックの再現をしてもしょうがないので、バランス取りは難しい。

・友達から、猫を助けたら家の玄関にお礼と思われる小動物の死体が置いてあったという話を聞いたことがあるので、黒猫が魚を配るシーンはあり得ると思う。

・最初は犬、次がげっ歯類、そして猿が行動を共にする。次がちょっと離れて鳥類。最後のほうで、ついに植物までも助力してきたように見えた。

・危機に直面し異なる属性の者たちが団結していく、熱い展開に見えなくもない。

・一方で、動物らしく、彼らはたまたまそこに居合わせただけで、それぞれが自身に都合よく動いたら、結果的にうまくいったと見るほうが自然ではある。

・アカデミー長編アニメーション賞受賞作と言われると身構えちゃうけど、前知識なしにいきなり出くわしたら強く印象に残りそうな作品だった。

(TOHOシネマズすすきの)

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ジョン・M・チュウ監督『ウィキッド ふたりの魔女』(2回目)

2025-03-24 02:17:00 | 映画を見てきた

2025/3/22

・2回目。今回も字幕版だけど、声出しOK上映。

・シングアロング仕様。歌唱シーンになると英語歌詞が表示され、歌の進行にあわせて該当部分がキラキラする。

・歌詞の日本語訳は出てこないので、すでに歌を聴き込んでいる人や、一度は別ver.で見た人向け。

・歌詞は長くないので事前に調べておくべきだった。

・本仕様にあわせて、開演前に、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデによる特別映像。エルファバじゃない時はこんな感じなんだと少し得した気になる。

・アトロクの映画時評を聞いて、1939年の『オズの魔法使』も見たので、少し落ち着いて見ることができた。 

・発声OKと言っても、一緒に唄うような雰囲気の曲でも映画でもないのでほぼ普通の映画として見る。

・序盤、エルファバが崖のふちまで出てきて歌ったところで客席から最初の拍手が出た。

・黒人白人その他、動物からカカシ人間まで存在する社会で、緑色だけ忌避されるのは不思議な感じがする。

・実際、クラスの人気者が仲良くなっただけで、他の生徒もあっさり同調するのは良くも悪くも軽い。

・「言葉を奪い、檻に入れる」が、動物に限って効果的という話ではない。人間だって同じ。怖い。

・自転車のカゴの扱いが1939年の『オズの魔法使』との対比になっている。排除と解放。この過去作の組み込み方はかなり好き。

・図書館のパート。本を足蹴にするのは自分もイヤ。いかにも指や腕を挟みそうな本棚も怖い。什器で遊ぶな。

・いい年のオズの魔法使いが、どことなく幼稚。二周目だと、手紙を運ぶミニ気球も子供だましに見える。あのペンギンの種類なんなんだろう。

・この規模の映画だから当たり前だと思っていたけど、アリアナ・グランデの演技がうまい。うまいというか、その人そのものにしか見えない。最初の含みのある表情から見入る。

・エメラルドシティにいる人たちの生活感の無さ。完全に舞台のショー演出として見せている。そういう割り切り方もあるのか。

・初回も二回目も、最後の二人の会話に停滞を感じたけど、溜めの時間なのかも。クライマックスへの自信の表れともとれる。実際、二回目でも「すげえ」となった。

・車いすの車輪、メガネの形状が好き。線路の下の歯車は何に使うんだろう。メンテ大変そう。

(3/21 札幌シネマフロンティア)

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ジョン・M・チュウ監督『ウィキッド ふたりの魔女』

2025-03-14 18:00:09 | 映画を見てきた

2025/3/14

・生まれつき皮膚が緑色の女性エルファバが、学校の新生活やオズの魔法使いとの出会いをきっかけに魔法の才能を開花させる話。

・演劇で有名な作品とのことだけど、未見。

・それどころか「オズの魔法使い」すらウロ覚えだったことに、見始めてから気づいた。

・体の特性起因で消極的だった若者が、外ならぬ自身の能力で解放されていくというシンプルな話として見た。

・ラジオ番組のアトロクで「元トモ」映画だと強調されていたのがノイズになってしまった。二人のシーンを観ていると頭の中に流れてもいないあの曲が流れる。

・父親や黒幕組はひどいけど、雰囲気に流されるままのクラスメートもだいぶんひどい。思ったよりエルファバいじめの時間が長い。

・ささいなことで距離がぐっと縮まるのは若者らしくて好き。

・エルファバに対するグレンダの言動は、最初失礼な同情にしか見えなかったけど、エルファバを下に見ていたんじゃなくて、自分以外すべてを下に見ていたんだとわかって、ちょっと印象が変わった。

・彼女の名前に関するエピソードは人物描写、作品の進行、作品テーマと、とても巧く使いまわされてる。

・グレンダは全然いい人ではなく、二人が仲良くなったきっかけも、ちょっとしたすれ違いから。

・実際、鼻持ちならないイヤな奴なのはたしかだけど、彼女の圧倒的な小物感が嫌悪感を中和している。人間が浅い。

・なんか既視感があるなと色々思い出してみると、一番近いのはマンガ「ろくでなしブルース」の中田小兵治。

・自己評価高い。自己顕示欲も強い。実は努力家で基本スペックは高い。結果小器用。人望はそこそこ。本人が思っているほど頭はよくない。友達のために体を張ろうとする気概はあるが、いざという時には役に立たない。おまけに写真部中島みたいな髪ファッサ。

・こういう役を現実では大スターのアリアナ・グランデがやっているのが味わい深い。歌は歌で抜群だし。

・明らかに何かを暗示している動物たちの扱いは辛い気持ちになる。

・エルファバが覚醒するシーンはすごい迫力だった。パート1だから続きはあるだろうけど、これで十分お腹いっぱいだった。

・Dolbyで観たのは大正解だったと思う。

(TOHOシネマズ札幌すすきの)

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吉村愛監督『ベルサイユのばら』(歌唱付き上映会)

2025-03-04 00:27:44 | 映画を見てきた

2025/3/2

・18世紀のフランス、男装の女騎士オスカルが、自身の特異な生い立ちや、奔放なマリーアントワネット、荒廃していく民衆に翻弄されながらも、自身の正義を全うしようとする話。

・フランス革命という人類史屈指の大イベントを描いた少女漫画の古典中の古典。

・原作、アニメ、舞台など、色々なジャンルに翻案されているのにほとんど接したことがなかった。

・それでも登場人物の役割や個性がはっきりしているし、ナレーションも手厚いので初見でも迷子になることはない。

・ショックなときに目のあたりに縦線の影ができたり、眼球が小宇宙みたいになっていたりと、半世紀前の少女マンガの絵柄を前面に出す一方で、衣服などの装飾がびっくりするくらい細かい。認知できないところでも色んな工夫が入ってそう。

・見せ場であるはずの歌唱はやや線が細め。

・民衆の生活が困窮している状況で、愛だの恋だの言っているベルサイユ宮殿の連中。完全に違うレイヤーで生きていてイラっとする。メロドラマやってる場合か。

・ただ、アントワネットは望んで王妃になったわけではない。この人は王妃でさえなければ、幸せになれたのかもしれない。

・変わってしまったアントワネットが悪いというような見せ方だったけど、問題は夫だと思う。作中の存在感が希薄過ぎる。世襲は行き過ぎると非合理。政治は志のある人がやったほうがいい。

・ジャンル映画でもない限り、最近は恋愛の扱いが難しくて、安易に使うと嫌われてしまうけど、全くないというのもちょっと違う。

・そういう意味でオスカルの行動は納得いくものだった。

・立場と正義の板挟みでしっかり正義を取る強さを持っている。なんでもかんでも相対的に見てしまいがちな今の世の中ではとても新鮮だった。素直にかっこいい。

・多少総集編っぽい感じはするものの、最終的にはトリコロールが意味する博愛、平等、自由を感じさせるようなすごいバランスでまとめていた。

・本編のあと、衛星中継で平野綾さんと加藤和樹さんの歌唱とアフタートークがあった。アントワネットとフェルゼンの声優さんが人前で歌っても違和感がないということの違和感がすごい。

※パンフと入場特典

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デビッド・リンチ監督『マルホランド・ドライブ』

2025-02-26 01:45:00 | 映画を見てきた

2025/2/23

・女優になるべくハリウッドにやってきたベティが、マルホランド通りの追突事故で記憶を失ったカミーラと出会い、行動を共にする話。

・デビット・リンチ作品は初めて。古典感はあるけど2002年の作品。わりと最近。

・好きな人の感想ですら、難解とかよくわからないとか言われがちで、自分には合わないなと避けていた。

・見てみると、話の筋のようなものもあるし、身構えていたほどは混沌としていない。

・考えてみると、成功しているのか失敗しているのかもよくわからない小劇場系の観念的な作品と比べれば、巨匠の代表作という一定の評価があるぶん安心感はある。

・オープニングの事件に事故を重ねて混沌を上塗りしていく感じも、うまく機能している。

・とはいえ、ベティとダイアン(+ファミレスの店員)の関係性とか、わからないことも多かった。というか、余韻を残すための意図的な不整合はあるのかも。抽象画として見たほうがおもしろいんだと思う。

・序盤は色々なシーンが脈絡なく出てくる。適当に見えてのちのち意味が出てくる感じ。まさに布石なんだけど、出来上がるのが抽象画なので結局よくわからない。

・wikiには監督自らによる作品を理解するためのヒントが掲載されていた。公式サイトにも載っていたらしい。

・とりあえず『パーフェクト・ブルー』みたいな感じだったのかなと一応の理解をする。ダイアンにとっての理想の自分。

・誰も頼んでない、まずいとわかっているのに頼んで、案の定まずいエスプレッソ。

・ドジっ子の殺し屋の仕事ぶりが、唯一のわかりやすいコミカルなシーン。めちゃくちゃ。

・アメリカでも身近な鈍器と言えばゴルフクラブなのか。

・役者さんの演技に価値を置いているように見える。オーディションの時の演技や歌はもっと記号的にやったほうが見やすいはずだけど、そうしていない。

・現実社会であのオーディションやリハーサルを見て勘違いする監督や演出家はいそう。

・役者さんの肉体を通した表現を信用しているのか、たまたま出てきた演技に作品を合わせているのか。

・おじおばコンビがダイアンに迫っていくところ、怖いと言えば怖いけど、撮影現場はたぶん楽しそうだなと思いながら見てしまった。

(サツゲキ)

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アリ・アッバシ監督『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』

2025-02-10 10:55:10 | 映画を見てきた

2025/2/10

・青年ドナルド・トランプが辣腕弁護士のロイ・コーンとの出会いをきっかけに不動産業界で成功していく話。

・たくさんの人が行き交うなかで微動だにせず、トランプへ視線を向けてくるロイ・コーン。いかにも運命の出会いという感じ。

・こういう強調の仕方、ヒッチコックの『見知らぬ乗客』にもあるらしい。観てないけど。

・最初はオドオドしていたトランプ青年が、彼の三か条の教えにどんどん感化されていく。「攻撃攻撃攻撃」「絶対に非を認めない」「勝利したと主張し続ける」(大意)

・トランプが賢そうに描かれているし、特に批判的な表現も多くないので、結果、一昔前の伝記マンガのような印象。

・一回だけ「自分に都合の悪い科学は信じない」と言い張ったり、女性の扱いはほんと酷いけど、今さら過ぎて、それくらいではイメージダウンになりそうにない。

・表舞台の陰で周囲の人々の表情が曇っているのも「彼にとっての敵役」くらいの位置づけだし。

・優しい映画に影響を受けて実社会でも他者に優しくなる人がいるように、この映画を見て実社会で攻撃的になる人もいると思う。

・実際、この三か条が流行ってるのかと思うほど、似たような方針で行動をする政治家やインフルエンサーは、日本でもすでに多く見かける。

・なので、トランプが成功していく様子を無感情に眺める時間がどうしても多くなってしまう。

・ロイ・コーンの気の毒な顛末にも全然心が動かない。

・気になるのは、彼がどうしてトランプのためにここまで尽くしたのか。単純に好みだったのかな。そんなに浅い理由なんだろうか。

・トランプが今の感じになっているのは、かつて父親から軽んじられていたこと、家賃の取り立てで困窮者との付き合いを経験していることが、悪い方向に影響したように見える。

・彼が大統領になる前に終わるとは聞いていたので、どういう風にまとめるのかなと思っていたけど、納得できるように締めていた。汎用性高そうな構成。

・学びは多く見て損したとは思わないものの、自分の感覚では楽しい映画ではないので時間が長く感じる。終盤に突然直接的な外科手術シーンを入れるのも勘弁してほしい。

・経年変化していく二人を演じた俳優さんの卓越した演技に集中することで、何とか最後まで見ることができた。

・たぶんトランプが再選してなかったら、もう少しいいバランスで見られたと思う。

(2025/2/9 サツゲキ)

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ジェシー・アイゼンバーグ監督『リアル・ペイン~心の旅~』

2025-02-08 22:13:14 | 映画を見てきた

2025/2/7

・アメリカ在住でいとこ同士のデヴィットとベンジーが、ポーランドにあるかつての祖母の家を訪ねる話。

・ざっくり言うと、堅物の人間と奔放な人間が同じ時間を過ごすことで影響を与え合うかもしれないという、よくある話ではある。

・祖母がホロコーストのサバイバーで、二人はアウシュビッツの収容所をめぐるツアーにも参加する。

・ベンジーが奔放担当。とにかく自分に正直。その奔放さで、他のツアー参加者との距離を軽々と縮めていく。

・一見、細かいところは全然ダメだが、本質をとらえるタイプのように見える。

・ただ、それにしても雑なところが多すぎるし、たくさん失敗して傷ついて、このバランスに落ち着いたんだろうなという感じがする。

・実際、隣にいたら楽しいけど、面倒を見ろと言われたらとてもイヤ。

・その面倒を見る役が同行するデヴィット。そして、ツアーガイドの人。

・記念写真のところ、「敬意に欠けるのでは」と心配する気持ちはとても共感できる。

・ガイドの人がベンジーの指摘で機嫌を損ねている。

・彼の言うことはそこまで変なことではないし、むしろ貴重なご意見の範囲だけど、そういう言い方をしなくても…という葛藤しながら対応している様子。

・アウシュビッツのガイドだから、事務的であっていいはずはないし、そんなことは百も承知だろうけど、それでも言われないと気付けないこともあるようだ。

・ルワンダから来た青年。傾聴の姿勢が好き。

・デヴィットとベンジーはよく口論になるし、よく険悪な感じにもなる。

・この危うい関係性が作品の緊張感を保っている。

・決定的に決裂すれば、話のクライマックスにはなるんだけど、そういう話の作り方はしていない。

・最後、デヴィットの突飛に見える行動も、人付き合いの苦手な彼なりに、相手のことをよく見て感じて最善だと思った結果なんだと思う。

・若干、芯を外している感じもほほえましい。

・ベンジーは変わっていないという感じもするけど、大丈夫だと言わせることができたのはこの旅の成果だと思う。

・話の大枠は想像の範囲内でも、二人や他者との関係性、言葉や行動、情報の出し入れで、十分成立している。脚本と俳優の腕を感じる作品だった。

(2025/2/7 札幌シネマフロンティア)

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