遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』

2024-04-02 12:45:18 | 映画を見てきた

2024/4/2

・原爆の父と言われたオッペンハイマーの評伝劇。

・180分ある。家でサブスク視聴するには厳しい長さ。こういう作品こそ映画館がはかどる。

・せっかくの話題作なのでIMAXにしたけど、会話が9割だったので、そこまでこだわらなくてよかったかも。

・ただ、ロスアラモスの原爆実験はすさまじい。クリストファー・ノーランがCGを使わないということくらいは知っていたので、ますます凄みを感じる(実際にはちょっと使っていたらしい)。

・爆発時の数字を聞いて、単に大きな爆弾が炸裂したと思って喜んでいるライト層と、とんでもない異常な規模だとわかる専門家たちの表情の違いも見どころ。

・彼のキャリアの振り返りと、戦後の公聴会のシーンが切り替わりながら話が進む。

・最初、公聴会で調査しているのは人道的な意味での是非なのかな、ちゃんと検証しているアメリカはえらいなって思っていたけど、全然違っていた。

・セックス描写の必要性がわからない。特に公聴会中のシーンは、作り手側の悪ふざけに見えてしまった。そういうタイプの話ではないのに。

・冒頭にプロメテウスの説明。人類に火を与えた罪で永久に苦しみ続けるという神。そのまんま、この映画のオッペンハイマーを説明している。

・原爆を落とさないと日本は降伏しなかったのではないかという指摘。絶対ないとは言えないのがつらい。

・アインシュタインがイメージ通りの見た目と言動。

・科学者からの指摘を、決して正面から受けず、流して崩して倒す合気道の達人のような悪い政治家。

・なるほど、こうやって悪い政治家は正論と戦うのかと、暗い気持ちになる。

・一応、説明はあるので、オッペンハイマーと友好的な人、敵対者、この人たちは何をやろうとして何が問題になのか、最低限のことはわかるようになっている。

・それでも登場人物が多く、前提知識も足りず、何が進行しているシーンなのかよくわからない時間帯があった。

・映画や演劇を見るときは前情報なしが好きなんだけど、評伝劇に関しては展開に面白味があるわけではないので、下調べしてから見たほうがよかったかも。

・良くも悪くも戦争関連のグロい表現はないので、長時間のわりに見やすいタイプの戦争映画だった。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーティン・スコセッシ監督『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

2024-03-02 22:55:05 | 映画を見てきた

2024/3/1

・仕事を求めてオクラホマ州に移り住むことになったアーネストが、地元の有力者である叔父の言いなりになって、オセージ族の連続殺人計画に飲み込まれていく話。

・実際の事件をもとに作られた3時間26分の大長編。

・アカデミー賞10部門ノミネートの記念上映で、実際見た人の評判もいい。それなのに、最初の20分くらいは何が起きているのかよくわからず、不安になる。

・徐々に登場人物の関係性、凶悪な行為、計画がわかってくるにつれ、話が加速していく。中だるみしなかった。

・後日譚の見せ方も好き。もうちょっと見たくなる。

・なので実時間ほど長くは感じないんだけど、それでも映画館の環境あっての作品ではある。

・オセージ族は、保留地から石油が採掘され、裕福だったため、白人入植者に権利を狙われているという背景。

・結構な数のオセージ族が殺されている。

・酷い話だけど、殺人シーン、人が生物から物になる瞬間の繰り返しがリズミカルでひきつけられてしまう。

・他の映画だと『アウトレイジ』の感じが近い。

・起きていることに比べて生々しさは薄めだけど、きれいごとで終わらせないという意思も感じる。

・オセージ族を善人として描かないバランスも好き。悲劇性よりも身近に感じさせることを優先している。

・アーネストは、オセージ族の女性と結婚している。

・当然、叔父と妻の板挟みに苦しむ話になると思いきや、アーネストはびっくりするくらい葛藤していない。

・叔父がオセージ族を殺せと言えば殺すし、オセージ族の妻のことは大好き、子供のことも大好き。

・何かを変えなければ、行きつく先はわかりきっているのに、叔父の言いなりになっているうちに、案の定、取り返しのつかないことになっている。

・どうしてこういうことができるのか、にわかには理解できないけど、やっぱり差別意識が根本にあるのかな。

・妻のことを愛しているのも本心なんだろうけど、同時に見下してもいる。たぶんこのへんは両立できる。

・自分自身が空っぽで、善悪の基準を持っていない。自分の感情よりもボスの言うことを優先する。

・遠い地域のまあまあ昔の話なのに、この主人公が全然他人に思えなくて困る。いまの日本人で彼のことを笑える人がどれだけいるのかと考えてしまう。

(TOHOシネマズすすきの)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブリッツ・バザウーレ監督『カラーパープル』

2024-02-24 20:19:26 | 映画を見てきた

2024/2/22

・父親や夫に虐げられながら生きてきたセリーが、いくつかの出会いを経て、自分の居場所を見つける話。

・場所はアメリカの海岸沿いにある田舎町。1909年から40年くらいの長期間の話。

・登場人物のほとんどが黒人なので人種的な差別は少ないが、とにかく女性の地位が低すぎる社会。

・差別される側の人間が差別しないわけではないという、当たり前のことが再確認できる。

・若い女性が問答無用で連れていかれるのは、知識としてそういう時代なのはわかっていても、実際に生身の人間同士のやり取りを見ると、相当キツい。

・姉妹が仲良しなのでより悲劇性が増す。妹側の視点でもうひとつ話が作れそう。

・人種差別描写が少ないと言っても、とても印象的な場面で出てくるので、これはこれで厳しい。

・ソフィアの変遷がすばらしい。絶望から復活のところがシーンとして強すぎる。

・ミュージカルなんだけど、問答無用に高揚させるような感じではなかった。

・虐げる人間が虐げられる人間に身を託せるの、一体どういう精神構造しているんだろう。

・一緒に寝たり、ひげを剃らせたり、追い詰めた結果、自暴自棄になられたら簡単に致命傷だろうに。

・個人の屈服と抵抗と回復、そして連帯していく様子が、社会における女性が人間性を徐々に回復させていく歴史とシンクロしている。

・悪事の限りを尽くし、後は不幸になるだけだと思われた彼にも、ちゃんと挽回の機会が与えられている。やさしい。変われる人もいる。

・終盤は夫婦というより親子みたいに見える。

・親子と言えば、疎遠になっていることが不自然なくらい、似たようなノリの神父とシュグの父娘。

・厳しさと楽しさがうまく調整されていて、141分という長尺なのに長さを感じなかった。

・悲惨な差別と向き合う話なのに、ここまで身を任せていいのか不安になるくらい。

・最終的にセリーはお店を持てたけど、たまたま運が良かっただけでもある。

・現実には、挽回の機会なく終わってしまった人生もたくさんあることは忘れないようにしたい。

(札幌シネマフロンティア)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガブリエル・アクセル監督『バベットの晩餐会』(1987年)

2024-01-20 13:42:00 | 映画を見てきた

2024/1/19

・フランスから亡命してきたバベットが、宝くじの当選をきっかけに、自分を受け入れてくれた老姉妹への感謝の気持ちと料理したい欲を解放する話。

・最初に年老いた姉妹の慈善活動で始まる。牧師だった父は亡くなっているが、姉妹は善行を続ける。

・姉妹それぞれの若いころに経験した、出会いと別れ。

・前知識がないまま同じようなことが2回あったので、竹取物語みたいな話かと思った。

・のちに将軍となる士官ローレンスと、落ち目のオペラ歌手パパス。どちらも残念な男だったけど、一線は超えない慎ましさもあって嫌いになれない。

・あの干し魚は、鳥に狙われたりしないんだろうか。

・宗教、貧しい、辺境の地、二人でひとつみたいな老姉妹、出自が謎のフランス人召使いと、不安な組み合わせ。

・そこでバベットの宝くじ当選というまさかの展開。そういうの、アリなんだ。

・彼女は、10年以上召使いを続けてきて、初めてのお願いだと姉妹を説得し、晩餐会を開こうとする。

・最初の召使いとして同居することが巨大なお願いだったのでは、と思ったけどスルーだった。

・生きたウズラやウミガメ、牛の頭と牛骨などを見て姉妹や村の人たちは心配になる。そりゃそうだ。

・遠方から来たローレンス将軍と彼の叔母を除き、晩餐会の客たちは、料理の話題には一切触れないことを誓う。

・でも、実際料理はおいしい。

・将軍が、料理の話題を振るたびに村人たちが関係ないこと答えるところ、楽しい。

・水戸黄門が印籠2回出してるような展開だったけど、あれでいいんだろうか。

・一歩間違えると敬虔なカソリックがおいしいものを食べて堕落しただけの話になりかねない。

・本作では、料理の話題をしないという約束が重要で、料理のおいしさだけではこの一体感は生まれていないはず。たぶんそのあたりの調整はうまくいっている。

・美食なんて宗教活動の真逆に思えるけど、例えば讃美歌だってみんなで歌って一体感を演出するものなので、そこまで離れているものではない。

・何の味付けもなく登場して的確に給仕するバベットの甥っ子が有能。まかないを食べているところかわいい。

・御者のおじさんも好き。あの役になりたい。

・得ることよりも与えることが重要という話。理想を求める宗教者と、美食という実利を求める職人の良さが、幸せに融合した作品だった。

(札幌シネマフロンティア)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

湊寛監督『新根室プロレス物語』

2024-01-09 00:44:51 | 映画を見てきた

2024/1/7

・プロレスのインディー団体、新根室プロレスの休止と再開を追ったドキュメンタリー。

・他に見なきゃいけない映画は結構あるような気もするけど、SNSの告知を見てすぐチケットを購入。

・最初に創始者であるサムソン宮本選手と所属選手の紹介。

・リングネームのほとんどが何かのパロディ。不穏さと語感の良さで「MCマーシー」と「ロス三浦」が好き。

・所属選手のほとんどがプロレスとは無関係の仕事をしている。

・「メガネのプリンス」というキャッチフレーズのTOMOYA選手は建築業。メガネ屋ですらないのか。

・団体のモットーは「無理しない、ケガしない、明日も仕事だ」。興行も必ずこの言葉で締めくくられる。

・作中、何度も何度も同じフレーズが出てくる。

・憧れではなく共感。華やかなメジャー団体とは異なる、インディーらしい地に足の着いた掛け声。

・新根室プロレスを全国区にした、アンドレザジャイアントパンダ選手も、こういう雰囲気の団体だからこそ起用できたんだと思う。

・序盤はサムソン宮本選手が中心。玩具店経営。別に顔真似しているわけじゃないだろうけど口元が猪木っぽい。

・入場でロープに引っかかってしまうコミカルな動きが面白いけど、お約束にしては難易度が高そう。膝とか首とかやらかしそうでハラハラする。

・味のプロレスさんの四コマ漫画がスクリーンいっぱいに出てくる斬新な映画表現は初めて見たかも。

・団体において、いかに彼の存在が大きいかが語られた後で、新根室プロレスに試練が訪れる展開。

・大砂厚選手の家。見てはいけないものを見てしまったような気持ちになる。仲間たちは動じるでもなく、食事を置いて少し世間話するだけ。不思議な関係性。

・所属選手は若いころにイケてなかった人ばかりらしい。

・鴻上尚史さんの本で、役者の存在感は「その人の耐えてきた量」だと書いていた。正直、言葉の意味は消化できていないけど、もしかしたら関係あるのかも。

・終わってしまったかに見えた人たちが再び立ち上がる、ドキュメンタリーらしからぬ泣ける構成だった。

・特にサムソン宮本の最期の仕掛けが見事としか言いようがない。死せる孔明だった。

・ナレーションにプロレス好きのヤスケンが入っていたのも、ちょっとしたボーナスポイントだった。

※パンフがとても充実している。おすすめ。

(シアターキノ)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ポール・キング監督『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

2024-01-06 23:01:48 | 映画を見てきた

2024/1/3

・チョコレート職人で魔法使いのウォンカが、街の実力者であるチョコレート業者からの妨害を乗り越えて、自身のチョコレート工場を建てる話。吹き替え。

・同原作の別の映画作品は未見。先に見てからの方がいいタイプの作品だとは思うけど、そんなこと言ってたらどんどん先延ばしになってしまう。

・しっかりティモシー・シャラメの演技を見るのは初めて。非現実感を違和感なく体現している。

・リアリティラインが低く、話の自由度が高すぎて、作り手のセンスに身を任せるしかない。

・ウォンカとヌードルがたくさんの風船を持って屋根で踊っているシーンが白眉。

・一芸のある弱者が力を合わせて苦境を乗り切ろうとする話は好きだけど、自然にやるのは難しい。

・芸人がまるで役に立っていないのも、バランス取りの一つなのかも。そりゃそういう人だっている。

・文字を学ぶことが複数の役割を持っているのがうまい。

・チョコレートが、甘味であり、魔法を媒介するものであり、資産でもあるというところまではわかるけど、人を殺すための手段にしているところはよくわからない。他にいくらでも方法があるだろうに。異物混入。

・独特すぎる世界観でも話の筋はとても分かりやすい。誰が見てもそうそう展開迷子になることはないはず。

・船のウォンカ席と北極行き、ダイナマイトという徹底ぶり。悪党が心底悪党で、すがすがしい。

・動物園と金庫の門番ふたりの間で、心底どうでもいい奇跡が起こっていて笑った。

・ウンパルンパが電動ベッドみたいで寝起きしている間も笑った。緩急って大事。

・音楽パートになると吹き替えの違和感が強くなってしまうものの、一定の水準で最後まで見せ切っていた。字幕版も見てみたい。

・悪党が「いつかは捕まるが、今はそのときではない」と、ダメなトップガンみたいなことを言っていた。

・キリンを運ぶシーンで「ハングオーバー」の完結編を思い出したのは自分だけではないはず。 

・クリーニング屋の悪党二人。見た目が変わり果てても気にせず抱き合っていた。クソみたいな二人だったけど、お互いへの愛だけは本物なのかも。

(TOHOシネマズ)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

八鍬新之介監督『窓ぎわのトットちゃん』

2024-01-04 00:01:57 | 映画を見てきた

2024/1/2

・徐々に戦争一色に染まっていく世の中を背景に、後の黒柳徹子である少女トットちゃんがトモエ学園に転入し疎開先に向かうまでの話。

・見ている人の評判が軒並み良い。特に『この世界の片隅で』と比較している人が多いらしい。

・原作の『窓ぎわのトットちゃん』はたぶん読んだことがない。読んだとしても内容は忘れている。

・体調の問題なのかもしれないけど、序盤は話に入っていけず。

・つやつやした顔つきと、子供らしさを強調したような喋り方が、自分には苦手だった。

・ただ、黒柳徹子なら実際に小さいころからあんな話し方だったような気がしないでもない。

・トモエ学園の学校としての位置づけはよくわからないけど、少人数で通常の学校にはうまくなじめない生徒が集まっている感じ。

・wikiによると、日本で初めてリトミック教育を実践的に取り入れたことで有名な学校らしい。

・おそらく小さな子供のいる大人だったら、ほんとにハラハラするようなことばっかりやっている。

・基本的に自伝なので唐突に人が死ぬ。作中の匂わせはあるんだけど、人が死ぬのに理由はない(というか、見えない)という現実。

・戦時中の様子で勘違いしがちなのは、昔だからあんな貧相な恰好をしているわけではないこと。

・下手したら今よりも華やかな恰好してたような人たちが、わけのわからない国家の倫理観を押し付けられてああいう風になったということ。

・お父さんは音楽家としての魂を売らなかったけど、裏返せば、おかしいと思いながら魂を売ってしまった人も多くいたはず。

・なので、あの風景は未来の自分たちかもしれない。

・そんな中でもトットちゃんは彼女らしく明るく元気で、はっきり言って浮世離れしている。

・彼女が変わらなくても、時間がたつにつれ、どんどん戦時色の強い背景になっていく。

・遺骨を抱えた女の人とか、ホラー系のゲームみたいな差し込まれ方だった。

・変わらぬ彼女と日本の社会がどんどん人間らしさを失っていく様子を対照的に見せるような作品だった。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン監督『ウィッシュ』

2023-12-23 20:33:26 | 映画を見てきた

2023/12/22

・魔法使いの治める国に住む少女アーシャが、王に捕らえられた「人々の願いの力」を解放する話。

・国民は成人すると国王に自らの願いを差し出す。国王は毎月一人の願いを選んで大衆の前で叶える。

・この魔法使いの国王が、欧米のリアリティーショーでよく見かける圧の強いタイプの審査員みたい。

・一見、いいことをしているようにも見えるけど、願いを差し出した国民は、その願いを忘れてしまうから、国を支配するための仕組みでもある。

・外から見ているとこんな危なっかしい仕組みもないんだけど、内側から見るとわかりにくい。

・観たのは字幕版。小さな島国の一少女の歌がとにかく上手い。声質から違う。

・ただの状況紹介なのに、最初のロサス王国を紹介する歌からすごい物語が始まった感じがする。

・国王の正体を知って、追い込まれたアーシャが星に願いをかけると、星の化身みたいな何かが現れる。

・この星の化身、見た目が他となじんでない感じがするのと、ヒロインにとって都合が良すぎるので、あまり好きになれない。

・ヒロインを取り巻く若者たちがほどほどの存在感でよいバランス。口が悪いだけで結局いいやつだった彼と、ステルス性能を持つ彼女が好き。

・ニワトリのシーンは笑った。

・どんなに窮地に陥っても、スターが超自然的なパワーを発揮するか、ヒロインが歌えば何とかなる。

・特に歌が強い。悪役の国王がどんなに強い魔法を使っても、歌の前では力負けしている。

・脚本家がちまちま知恵を絞って強力な魔法を考えても無意味。かなしい。

・普通なら通らないけど、実際に音楽がすごいので通ってしまう。これで通るから話のスピード感もすごい。

・歌こそ真の魔法である(しかもそれは実在する)という作り手側の確固たる信念を感じる。

・ただ、本質的に音楽と悪は対立しないので、音楽が戦意高揚のプロパガンダに使われることだってあるし、結構あぶなっかしいテーマ性をはらんでいる。

・国王がヴィラン化する過程に説得力がある。守る意識が強すぎて、少しでもそれを脅かす存在があると、極端に攻撃的になる。

・完全に悪党扱いされていたものの、出発点は使命感や臆病さだったと思う。なので、何かしらの救済がほしかったけど、甘いんだろうか。

(TOHOシネマズすすきの)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

金子修介監督『ガメラ2 レギオン襲来』(轟音上映)

2023-12-01 13:52:11 | 映画を見てきた

2023/12/1

・巨大怪獣ガメラと人間たちが宇宙から飛来してきた怪獣レギオンを撃退しようとする話。

・TOHOシネマ、轟音上映初体験。せっかくなのでワイドコンフォートシートを選択。轟音効果は結構感じた。

・最初の舞台は札幌市。すすきの。まさに今見ている映画館の建物(当時はロビンソン。懐かしい)が粉々にされていて楽しかった。

・ここまで一地方都市にスポットを当ててじっくり描いている映画は多くないと思う。

・たしかに「TOHOシネマズすすきの」でのこけら落とし的な上映にはふさわしい(ただ仙台の人は複雑かも)。

・レギオンは札幌→仙台→東京と移動していく。だんだんスケールが大きくなっていように舞台を整えられていく。

・前作では若干のチープさが客側の安心感につながると思ったけど、今回は身近な場所が舞台になって、臨場感強め。

・いつもお世話になっている地下鉄で、運転手さんが襲われているのを見ると必要以上に悲しくなる。

・地下鉄が一世代前の型で懐かしい。

・すすきのと、青少年科学館や支笏湖との距離感おかしい感じもするけど、あまり気にならない。

・よく怪獣映画は人間ドラマとの相性が悪いという話を聞くけど、人間側のドラマは必要なくて、ありえない事態に遭遇した責任ある人々の関係性をきっちり描いていれば、十分なんだと思う。

・前回は人間たちが完全に足を引っ張っていたけど、今回はかなり人間側も貢献していた。

・行動している人たちに頭の悪い人がいない。意見が対立することはあっても、それぞれ理解できる範囲。

・ありえない事態に対して、必死で頭を使ったり、時には体を張って、しっかり事態終息に貢献している。

・「終わったらおごらせてください」という、ちょっとした掛け合いも好き。

・それはそれで大事ではあるものの、何事にも時間と手間のかかる人間の社会的な生き物らしさとは一線を画す、ガメラの存在が気持ちいい。

・有事のとき、大通公園はああいう風に使われるんだということを視覚的に見ることができた。

・なぜ生体兵器なのに亀をモデルにしてしまったのか。

・どうしてガメラは人類の味方をするのかという、見る側も気になる疑問に対して、学者が解釈を提示して終わるところ、無駄なエピローグもなく切れ味がよかった。

(TOHOシネマズすすきの)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』

2023-08-25 00:17:47 | 映画を見てきた

※これから見る予定のある人は先に読まないのがおすすめ。

 

2023/8/24

・公開から時間がたって徐々に内容が耳に入ってくるようになってきたので、追い立てられるように見に行く。

・火事で母親を失った少年眞人が、不思議なアオサギに誘われて、神隠しにあった義理の母親を探す話。

・タイトルが今まで見てきた映画作品の中で一番面白くなさそう。ジブリじゃなきゃ見なかった。

・戦時中、本土決戦前の日本から始まるので、『風立ちぬ』のような淡々とした話なのかなと見ていたけど、おばあちゃんたちが出てくるあたりから楽しくなってくる。

・遠くにモゾモゾした何かが見えてくる初登場シーンからすでにおもしろい。

・おばあちゃんが多すぎる。7人の小人みたい。

・せっかく豪華な声優たちなので、全員の若いころの姿を期待したのは自分だけではないはず。

・で、アオサギが喋り出すあたりから加速がついてくる。

・眞人の表面上の凛々しさと愛嬌がないところ、好奇心と冒険心、その時代の少年らしさがあって好き。

・アオサギがハチドリみたいに羽ばたいていた。ブーン。

・子供を運んでくるというペリカンが実は子供になる前の何かを食べていたこと、オウムが賢くて社会性が高いところ、空気読まずフンをするところ、何気に鳥描写の気が利いている。

・大叔父の価値観はいろいろ考えがいのあるところだと思うけど、とりあえず生態系の問題的にはアウト。

・ヒミ様。出てくる作品を間違えたのかと思うくらい、かわいいしかっこいい。

・とは言え、実際母親は非業の死だったので、眞人にとって都合の良すぎる存在になっているのは気になる。

・彼の夢だったとも言えそうだけど、同行者がいるのでちょっと苦しい。

・義理の母親の葛藤を描いているのはよかったけど、やっぱり女性を聖なる存在として描きがちなのは仕方ないところなのか。

・よく老年の映画監督が攻めた表現を好むのはガマンができなくなったからだと思っているけど、本作は作家性も残しつつ、エンタメとしての気配りと抑制が利いている。

・ここまでちゃんとエンタメとして作るなら、もう少しタイトルを練ってもよかったんじゃないかとは思う。


※おばあちゃんの人数が記憶違いだったので直しました。すみません。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする