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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

Boyoung Kim『獲物』

2025-08-06 23:53:19 | SAMANSAで見た

2025/8/4

小さな魚が水槽の外の世界に憧れる話。

見覚えのある絵柄。『インパーソネーション』と同じ監督。

人間も独特の見た目だったけど、魚も変。

くちばし部分が尖っているので、イルカを小さくしたような体型。謎のツートンカラー。

端的に美味しくなさそう。

その後の展開を考えても、たぶん実在する種類の魚ではない。

主人公は他の立派な体格の魚たちから餌を取られてばかりいる。

結果、魚とは思えないくらい表情が卑屈。

後半部分で彼らを取り巻く状況が明かされる。

そこで出てきた連中も全体的に不快で、意図してそうしていると思われる。

作り手のフェチズムを感じる。

じっくり見れば気になるところもあるんだろうけど、尻尾をつかむ前に逃げ切られた感覚。

前に見た作品も面白かったので、もう少しこの監督さん追ってみたい。

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「小松美羽 祈り 宿る Sacred Nexus: Resonating with Cosmos」

2025-08-05 01:02:00 | 今月のソロ活

2025/8/4

・小松美和さんの作品がマンガ『ブルーピリオド』にてある登場人物の作品として使われていたので、聖地巡礼感覚で見に行く。

・当然、小松さんの許可を得て作品を使わせてもらっているのに、マンガの作中で、「アートを知らない人のためのアート」「未熟な絵に見える」など、結構な言われようだった。

・もともと小松美羽さんは「美しすぎる銅版画家」としてメディアに出てきた。

・本展でも銅版画家時代の代表作、「四十九日」や「六道輪廻」も展示されている。水木しげるを思い出す。

・道案内人のウサギと毛めだまみたいな魂がかわいい。

・解説を見ると、四大要素、自然、魂、自然、瞑想と、やたらとスピリチュアルな言葉が出てくる。

・人間と動物は魂においては平等とか、大調和(グレートハーモナイゼーション)などの言葉が出てくると、このまま素直に鑑賞してよいのか不安になる。

・魂や死後の世界のような人間が勝手に考えた概念を動物に押し付けるのは違和感ある。

・美術館の外におおきな狛犬風のオブジェがある。かわいい。屋内にも少しずつバージョンの違う一対の狛犬風の動物が展示されている。

・動物が好きな人なんだということはわかる。

・ギャラリーツアーに参加できた。学芸員の方が薄めのバインダーの資料だけで40分強よどみなく解説する。すごい。

・西洋美術業界ではジャンルにヒエラルキーがあって銅版画は市場価値が上がりにくいという話、ダイマクションマップ、絵画内の聖獣が鑑賞者と正対していても目を合わせてないという指摘が興味深かった。

・小松さんはアメリカに行ったものの、銅版画では評価されず油絵を中心に製作するようになる。売れるための生存戦略として作品ジャンルを選んでいるようにも見える。

・スピリチャルな作品と、俗っぽい売り出しの共存がおもしろい。

・そんな自身の立ち位置を自覚するからこそ、ブルーピリオド内の表現も許容できるのかも。作中で言われているようなことは、実際に言われているんだろうし。

・六月のライブペイントも興味あったけど、こういう作品だといつ終わるかの目安がわかりにくいので、実際見てみたら結構しんどかったかもしれない。

・世田介くんがどの部分にシンパシーを感じたのかはよくわからなかった。

(2026/8/3 札幌芸術の森)


※ミュージアムショップで狛犬のキーホルダーを探したけどなかった。だいぶ残念。


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Boyoung Kim『インパーソネーション』

2025-08-04 23:43:47 | SAMANSAで見た

2025/8/4

道端で気になる男性とすれ違い続ける女性が、彼の犬好きを利用して一計を案じる話。

のちの展開を想像する猶予もない短い話で無駄なくまとめている。

少ない線にデフォルメとも言い難いクセのある絵柄。

頻繁にクローズアップされる小さな目口の存在感が気になるし、息が苦しくなる表現の生々しさで笑ってしまう。

展開の都合と言ってしまえばそれまでだけど、そんなに手間かけるなら普通に声をかければいいのにとは思わないでもない。

奥ゆかしさを履き違えている。

彼女の作戦が何の説明もなく成功しているのもおかしい。

おかしいだろとは思うけど、この絵柄でこの尺である以上、気にしたら負けという感じはする。

日本の作品かと思ったら、最後にハングル文字でタイトルが出てくる。時代を感じる。

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Christopher Yang『BTSの妻たち』

2025-08-03 23:16:24 | SAMANSAで見た

2025/8/3

夫が従軍している妻たちが集まってグループセラピーしているところに、BTSファンが紛れ込んでいる話。

BTSファンは「アーミー」と呼ばれているという知識くらいしかないけど、それで十分と言えば十分だった。

本当にケアが必要な人たちのなかに、男性アイドルのファンがいて、偶然どっちともとれるような言葉で場をざわつかせる。基本的なコメディの構図ではある。緊張と緩和。

タイトルから最初はオフ会みたいなことなのかと思ったけど、もっと切実なシチュエーションだった。

狙っているのはギャップによる笑い。実際に戦争に行っているかどうかはともかく、本物の軍隊と並べてギャグにしていいものなのかどうかはよくわからない。

BTSにも兵役はあったわけだし。

そのへんの許容ラインは日本人と海外の人では差があるんだろうなと感じた。

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Boris Paval Conen『ジレンマ』

2025-08-02 00:45:32 | SAMANSAで見た

2025/8/1

ジョギング中の男が、彼以外の時間が止まってしまった世界で、トラックにひかれそうになっている少年などを助けようとする話。

静止している人々の絵面が古い写真のような画調で凝ってる。

ジレンマをタイトルにしているとおり、主人公は最後に選択をするわけだけど、その選択に至る過程が自分にはわからなかった。

時間が止まっているという状況を彼が一瞬で受け入れていること、子供を動かすことを試そうともしないこと、止まった原因もわからないのにいつまでもトラックの正面にいること、トラックのハンドルとペンダントのようなものだけ簡単に動く理由、ポスターに意味があるのかないのか、一転して潰される自転車の映像、路傍の写真、車内の写真、なぜ止まったのか、なぜまた動き出したのか

理解をあきらめる程度に「なぜ」が出てきて気持ち悪い。

短い映像作品だし、何度か見ることを想定しているんだろうけど、すっきりしない。

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Clara Aranovich『マーダー・キャンプ』

2025-08-01 07:53:00 | SAMANSAで見た

Clara Aranovich『マーダー・キャンプ』

2025/7/31

殺人鬼としての人生に疑問を持ち始めた怪人が、仲間の殺人鬼と今後を考える話。

誰でもわかる範囲の既存の文脈を使って効率よく状況を説明しつつ、ギャップと会話の面白さで引っ張る。

傑作・名作と言うには軽すぎるけど、好みで言えばだいぶん好き。

序盤の若者同士のやりとりが急過ぎるのも明らかに意図的で実際フックにもなっている。

思えば、あとから会話に入ってくるあの人の「気が付いたらそこにいる」性質も後々の展開の伏線になっているのかも。いないかも。

だいぶん低予算で作っていると思うけど、登場人物がかわいらしくて、演者さんの魅力も作品を後押ししている。

登場人物をすべて日本人にしてもできるんだろうけど、よっぽど工夫しないと、作り物っぽさが前面に出過ぎて見てられない気がする。

洋物のホラー映画に沿った、多様な人種や文化、それぞれの土台があって初めて成立する話だと思う。

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Wesley Chan & Phillip Wang『サンタはアジア人』

2025-07-31 01:25:00 | SAMANSAで見た

2025/7/28

プレゼントを置く現場を押さえられたアジア人のサンタが、子供に追及される話。

最後はこうなりそうと思っているとおりの展開になる、3分くらいの話。もう一ひねりするには尺が足りない。

構成よりも大人がいかに子供を言いくるめるのか、若干自虐も入れつつ、アジア人としてのサンタ像を必死で語るところが見どころ。

自分はサンタを信じていた時期がほとんどないので、わりと今の家庭が「いつまで子供にサンタを信じさせるのか」問題が実感としてよくわからない。

髭も髪の毛も明らかに偽物だし、いくら子供でもさすがに気づきそう。

気づいたうえで、空気を呼んでいるのかなと思ったりもした。言いくるめたのか、言いくるめられたふりをしていたのか。

子供はわりと空気を読むから、翌日の行動も「こういうことを言えばパパは喜ぶんじゃないか」くらいは思っていても不思議ではないかなと思う、

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ヤマザキマリ『ヤマザキマリの世界逍遥録』

2025-07-30 21:09:00 | 読書感想文

2025/7/29

マンガ家の著者が世界各地の思い出を綴ったエッセイ集。

ヨーロッパの国々が多く、ときどきキューバやタイ、ブラジル、中国などが出てくる。

著者の出身地である北海道も丸駒温泉、根室、のぼりべつクマ牧場など出てくる。

来場者に媚びを売るヒグマを著者らしい繊細でコミカルなタッチで描いているのが楽しい。

そういえば、『テルマエ・ロマエ』の続編でもやたら動物が出ていた。

グルメの章で出てきたフラメンキン(スペイン)や、黒豚の秘密(ポルトガル)、フィレンツェのパニーニはもれなく食べてみたい。

面白く書こうという意図は感じないんだけど、経験談をわかりやすく書くだけで、ちゃんと面白い文章になっているのはさすがとしか言いようがない。

掲載サイトを見ると、まったくネタが尽きているような様子がしない。

有名なマンガも書いているけど、著者の本分は旅人なんだと思う。

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Jeong Da-Hee『グレート・ウンコ・ガール』

2025-07-29 13:22:00 | 異邦人

Jeong Da-Hee『グレート・ウンコ・ガール』

2025/7/28

過敏性腸症候群の少女が便意を克服する話。 

たぶん間違った要約ではないんだけど、ホントにこれでいいのかと不安になってしまう。

韓国のアニメらしい。韓国は暴力映画のイメージが強いので、こんなしょうもない作品もつくるのかと親近感がわく。

絵柄もかわいらしく、作中の文字がハングルなだけで国籍による違いを感じさせない。韓国でも学校のトイレでうんこするとイジメの心配があるらしい。

実際、過敏性腸症候群の人はいるし、本作は14歳だけど、誰だって年齢を重ねれば、似たようなピンチになることはありうる。笑える話のようで、共感が勝つ。

最後のほうの展開は、「30歳まで童貞でいると魔法使いになれる」みたいなことなのかなと思った。

コーギーがウンチしたときに、飼い主が「うんちたれねえ」と声をかけていた。そう聞こえる。韓国語でそんなソラ耳がありうるんだろうか。

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Nicolas Panay『アラーム』

2025-07-28 21:56:00 | SAMANSAで見た

2025/7/28

建設現場の責任者ピエールが、無理なスケジュールや近隣住民からのクレームの対策を押し付けられて、現場作業に必須の安全アラームを切るように求められる話。

そんなに大変だったら逃げ出したらいいのにとは簡単に言えない状況だけど、それでも逃げ出すしかないのではないかと思ってしまう理不尽さ。

正気を保つためには感情を消すしかない。ピエールはそんな中でも人間らしさを失わないので、理不尽を真正面から受け止めることになってしまう。見ていてしんどい。

どちらかというとドキュメンタリー的な見せ方だし、殺人も精神異常者も出てこないのに、ジャンルで言うとサスペンスとして成立している。ずっとハラハラさせられる。あと、手持ちカメラの手ぶれ注意作品でもある。

現場はフランス。現場仕事は東西問わず本当に大変だし、同じような構造はどこにでもあるんだと思う。

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