遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

北海道余市紅志高校『被服室の変』

2024-07-25 15:12:28 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

 

北海道余市紅志高校『被服室の変』

2024/7/25

学校祭準備中、課題作成に取り組む男子生徒と、脚本を書きたい演劇部の女子生徒が、たまたま同じ部屋を割り当てられて、世間話を始める話。

知り合いの男女ではあるが、恋人ではないし、恋人になりそうもない、友達ですらない、お互いに対してそこまで関心の無い者同士の気の抜けた世間話が楽しい。

女子のほうの、プロの俳優だったら逆にできないような、独特のイントネーションもだんだんクセになってくる。

舞台上で実際にカタカタとミシンを操作している様子が斬新。

男子が延々と服飾の課題をやっていることで、どういう方向の話かはわかる。

無意識の差別表現や、おそろしくへたくそな寸劇(でもシュールでちょっと笑った)で不和がウヤムヤになっていく様子に不快感がなく、シンプルでスマートにまとめられていた。

実際、彼が演劇部に入ったら、今の悩みについては結構克服できそうな感じはするけど、別のストレスは増えるんだろうなと思う。

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埼玉県立芸術総合高等学校『Midnight Girlfriend』

2024-07-25 11:41:29 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2023上演④ 埼玉県立芸術総合高等学校「Midnight Girlfriend」

2024/7/24

中世の貴族風の男女が、幾多のすれ違い、障害を乗り越え、恋を成就させる話。

例によって録音環境の影響か聞き取れないセリフ多く、細かいことはわからない。

いきなりロミジュリ風のバルコニーが出てきてびっくりする。

象徴的な場所、ドア、廊下、高級そうに見えるソファと椅子。

デザインだけではなく、演劇としての機能性も高い舞台美術。

加えて他校と一線を画する衣装の作りこみ。

だてに校名に「芸術総合」をうたっていない。

演技はだいぶん様式的で、型にはまった演技は好き嫌いのわかれるところだけど、演技の質だけでもしっかり作品の世界観が構築できているのは大きい。

演者からも様式をつかいこなしてやろうという意思を感じるし、良い意味で個性の範囲だと思う。

今時その最後はどうなのと思わなくもないけど、話の組み立て方は良さそうだし、良い環境で観たかった。

カーテンコールをしっかりやるのも、作品の味になっていた。

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山形県立鶴岡中央高等学校『明日は救世主』

2024-07-22 23:24:33 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2023上演③ 山形県立鶴岡中央高等学校「明日は救世主」

2024/7/23

ヒーロー的なものにあこがれる男子高校生が、文化祭発表用に男子用ドレスを着せられてランウェイに臨むまでの話。だと思う。

ジェンダー観、いじめ、ウクライナ情勢、ちょっと節操無い感じもするけど、色んな問題に目を向けている。

ウクライナ情勢で声を上げるのはアリだと思うけど、本作では、自分の足元の見えていない理想主義者として描かれている。

個人のリソースには限りがあるので、個々で興味のあることに声をあげるのは別にいいと思う。共感が得られるかは次の話。

いじめられていた子は、あそこまで言えたならホントにあと一歩だったのに勿体ない。

衣裳をすごく頑張っている。見せ場なので、もうちょっとしっかりランウェイ見たかった。現場だと見え方違うのかな。

演技の思い切りの良さはわかるし、テンション芸として笑えるところもあるけど、この年の作品は一律、結構な割合でセリフが聞き取れない。

録音環境が残念。

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香川県立高松桜井高等学校『Gifted』

2024-07-19 22:18:39 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2023上演① 香川県立高松桜井高等学校「Gifted」

2024/7/19

先天的に優秀な生徒が、安易なネット利用で大失敗している同級生たちを見て、友だちについて考えてしまう話。だと思う。

滑舌なのか会場なのか録音環境なのか、だいぶん会話が聞き取りにくい。

加えて専門用語が多く、動きが少ないため、あまり話についていけなかった。

とりあえず、登場人物が全員ケンカごしで会話している。

むかしむかし、寝室で毎晩両親が延々喧嘩していて眠れなかった幼児期の気持ちを思い出した。

彼女を引き立たせるためなのか、彼女以外の登場人物が全員一般的な高校生よりもかなり頭が悪そうに描かれている。

学校の先生も相当ひどい。セキュリティ上、生徒にパソコン渡したら絶対ダメだと思うんだけど、意外とそういうことやっている学校あるのかな。

ギフテッドってもう少し限定的な分野で天才なんだと思っていたけど、本作のヒロインは結構なんでもわかる。千里眼。

ウクライナの話題を出してみたり、近未来に対する悲観的な予想など、時事性も意識した作品だった。

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精華高等学校『鵲の橋で二度と会わない』

2024-07-17 08:37:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

精華高等学校『鵲の橋で二度と会わない』

2024/7/14

夜の廃屋で関係性の定まらない高校生の男女二人などが語らう話。

夜の廃屋という組み合わせが持つ雰囲気に、場所、話題、二人の声質、うまく調和していて、名前の話、恋愛の話、かつての友人の話、対立要素がほとんどない会話なのに、しっかり緊張感が続く。

強いて言えば、一時間近くにおよぶ会話の積み重ねの果てに二人の淡い関係性がどこに行きつくのかという部分だけど、少なくとも見ている間は大きい要素ではない。

抑制のきいた掛け合いは玄人好み。

袖を使った唯一のギャグはおもしろかったけど、この雰囲気でよくこのギャグだけ残したなというくらいミスマッチではある。

装置の建て込みもしっかり雰囲気を出している。

全体として、夜と廃屋の掴みどころのないソワソワワクワクする感じをしっかり抽出し、いい感じの温度感に仕上っていた。

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福島県立あさか開成高等学校 『いとしのレイラ』

2024-07-16 22:16:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

「2022上演8」福島県立あさか開成高等学校 『いとしのレイラ』

2024/7/14

援助交際グループに入っている女子高校生レイラが、同じ学校の男子に、お金を払うから友達になってほしいと頼まれる話。

コロナ禍の影響で大阪大会では映像参加。

「援助交際」という言葉を久しぶりに聞いた。

露悪的な女子グループ描写は「女子同士はギスギスするもの」とか「女の敵は女」という古めのテンプレ表現に見えるので、どういう風に受け止めればいいのかよくわからない。

ヤンキー漫画を見るような感覚で見ればいいんだろうか。

高校演劇の往年の名作とされる『チェンジ・ザ・ワールド』のオマージュ的な作品らしい。※

登場人物の行動や、エピソードのつなぎかたにちょいちょい違和感がある。

同世代の高校生が見たら、ちゃんと受け止められるものなのかな。

盗んだお金を受け取り続けることは、ちゃんと善意の第三者扱いしてもらえるんだろうか。 

※ ↓ 参照しました。

大事なことなので2度言いました。「高校演劇2021 第16回春季全国演劇研究大会 3日目」

 

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作新学院高等学校『Passion』

2024-07-15 06:29:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

作新学院高等学校『Passion』

2024/7/14

男女2グループが一緒に修学旅行の計画を立てているうちに、女性が直面する社会的な負荷があらわになっていく話。

序盤の会話。ありがちな言葉選びが少なく、内容はどうでもいいのに聞き続けられる。

世の中の男性から女子高校生がどう見えているのか、直接的に語られている。

短い時間でエピソードを詰め込み過ぎな感じもするけど、個人ではなくて、社会を描こうとすると必要なのかもしれない。

だいぶん物事をわかっていなさそうな彼は、姉の存在がなかったら、一生こういう問題に気づくことはなかっただろうし、実際そういう人は多いんだと思う。

なので、設定上の都合の良さは感じるものの、「いつかわかりあえる」という希望を語るのも、あるべき立ち位置ではある。

高校演劇だと展開上の都合で使われがちな恋愛の要素を、茶化さずに表現として見せているのも好き。

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星稜高等学校『神様の放送室』

2024-07-14 10:31:04 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

「2022上演6」星稜高等学校『神様の放送室』

2024/7/14

放送法の理想を掲げて一人校内放送を続ける放送部員のもとに、有能で訳ありの生徒が入部する話。

社会問題を学校生活に置き換える手法で、本作品は放送法の話。

コンセプトがはっきりしていて見やすい。

加えて、抽象表現も取り入れ、演劇として、うまく題材を表現しようとする意思を感じる。

高校生活のフィルターをひとつ挟むだけで、政治と放送の関係を直接的に風刺している。

普遍性のあるテーマなので、時代を問わず長く上演される可能性がある戯曲。

本作は友情を着地として気持ちよく終わるんだけど、本当に現実に対して誠実に作ろうと思ったら、映画の『新聞記者』みたいな薄気味悪いラストにしかなりえないのが悲しい。

現実に負けっぱなしの大人には作れない作品とも言える。

客席から頻繁に手拍子が起きているように聞こえたけど、現地はどんな状況だったんだろう。

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ナイロン100℃『ゴドーは待たれながら』

2024-06-17 22:42:33 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2024/6/17

・誰かに待たれているゴドーという男が、いつどこで誰と会えばいいのか思い出そうとするが、最後まで思い出せない話。

・ゴドーを待つ人々を描いたサミュエル・ベケットの古典的名作『ゴドーを待ちながら』。本作は待たれる存在であるゴドー目線で作られた話。一人芝居。

・アイディアだけなら誰でも思いつく範囲だけど、実際に104分の戯曲を書いて上演するところまで持っていけるのがすごい。

・初演は1992年で東京シティボーイズのきたろうさんが演じたらしい。

・本作は大倉孝二さん。

・一人芝居なので、ごく一部に「声」との会話はあるものの、ほとんど全て一人で喋り続ける。

・当然セリフの量は膨大になるんだけど、それ以上に、わかりやすいあらすじはなく延々と堂々巡りを続ける話なので、これほどセリフ覚えが大変な作品はないのではないか。

・解説に「KEARが10年以上にわたり大倉を口説き」とあったけど、演者にとっては相当な覚悟がいる作品なんだろうと思う。

・最初の1分。髪の毛をセットする動きだけで客席から笑いが起きていた。

・このくらいの小さな笑いが最初から最後までずっと続く。お客さんもよく反応している。

・内容は靴が上手く履けない、毒の実を食べるか迷う、舞台後部の箱に何が入っているのか見てみる、窓のそばで思考をめぐらす、訪ねてきた誰かと不条理な会話を繰り返す、こんな感じ。

・ようやく部屋の外に出たのかと思ったら、部屋の中で外出時のシュミレーションをしているだけ。

・人間は誰しも何かを待っているものだという原作の主題(多分)から転じて、次第に待たれているのか待っているのか混乱していくところ、人間が誰からも待たれなくなることへの恐怖心が描かれる。

・何度となく自身の妄想に飲み込まれては苦悩する。

・待たれていること自体、彼の妄想ではないのかと考えさせる仕組み。

・原作がそういう話だから軽々しく解釈しにくい話ではあるけど、小さな部屋で思考を堂々巡りさせるだけの話を、緊張感を途切れさせることなく描き切った作家と演じ切った役者、まとめ切った演出がすごいのは間違いない。

(U-NEXT)

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青森県立青森中央高等学校演劇部『もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』

2024-06-06 01:46:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2024/6/4

・青森にある高校の弱小野球部が、中途入部した熱血女子マネージャーと、東日本大震災で被災した元野球部と、イタコのおばあちゃんとともに甲子園を目指す話。

・最初に出演者が舞台に集合してウォーミングアップするところから始まり、シームレスに本編に移行する。

・出演者はおそらく30人弱。

・完全素舞台、照明も最低限。小道具や舞台装置は肉体、音響効果は声ですべて表現する。

・時々なんでそこにいるのかよくわからないモチーフの人たちもいたりするが、それも含めて楽しい。

演劇博物館の説明によると、被災地など、どんな場所でも上演できるようにこの形態になったとのこと。

・実際、2011年~2020年5月時点で104ステージ上演されている。高校演劇史上、屈指の話題作であり、名作と言っていいと思う。

・戯曲は読んでいたけど、やはり映像は印象が変わる。

・野手がエラーするだけのシーンも、スローモーション演技で見せる。演出の手数が多い。

・夕方カラスが飛ぶシーン。最初は二羽、次が変な鳴き方のカラスを加えて三羽になるところも、細かい。

・被災地から来た転校生に、イタコが往年の名投手沢村栄治の霊をおろすことで地区大会を勝ち進む。

・ズルいと言えばズルいんだけど、イタコの修業自体がハードで誰にでもできるわけではないという条件でバランスをとっている。

・マネージャーが元野球部を勧誘するところ、表面的な説得ではなく、自身の経験を踏まえたお願いにしている。

・既視感ゆえの安定感がある話だからこそ、調整をしっかりきかせた脚本と演出に、技術の高さを感じる。

・結果、東日本大震災のサバイバーズギルドを扱った作品なのに、生々しさの少ない娯楽作に仕上がっている。

・戦争で野球人生を全うできなかった沢村栄治の気持ちまでフォローしているのもすごい。

・現実でこんなに簡単に立ち直るのは難しいのかもしれないけど、イタコが出てきて死者をおろすような有り得ない事象を通して回復していく話なので、当事者の方が見ても不快感は少なそう。

・逆に、そこまでしないと傷は癒えないのかもしれないという視点を、非当事者としては持っておきたい。

(早稲田演劇博物館JDTA)

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