2021/8/12
・小さな工場の工場長が期間工員を迎えてトラブルに巻き込まれたり、自らトラブルを起こしたりする話。
・舞台装置の実在感。巨大な鉄骨がむき出しになった、人間ではなく機械のサイズに合わせたようなガランとした空間。高さもある。
・特に中央のキャットウォークに続くハシゴが高い。役者さんは簡単そうに上り下りしていたけど、たぶん相当怖い。
・工場長役は納谷真大さん。陽気なところ、鬱陶しいところ、おっかないところ、みじめなところ、かっこいいところ、納谷さんのいろんな演技が堪能できる。
・自分は完成したものだけを見ているから当たり前のように感じるけど、その匙加減はかなり難しいと思う。
・自分自身、一年くらい出稼ぎ感覚で工場勤務していたことがあって、たしかにああいう感じのめんどくさいおじさんはいた。少なくとも二人いた。
・キレるポイントがよくわからないのも共通している。
・明逸人さん演じる丸川の胡散臭さも絶妙で、ずっと「どっちともとれる」感じをキープしていた。一瞬、すごむところが後半の展開にかなり効いている。
・観劇後にパンフを見る。賛否の分かれる作品みたいなことが書いてあって少し意外だった。
・初演は見ていないのでわからないけど、少なくとも今回はそこまで否があるとは思えない。
・たしかにハラスメント描写もあるけど、大体は作中の機能を失わない程度にコンパクトにまとめられていて調整がきいている。
・出来事を俯瞰して見ているポジションの次郎が、生演奏で印象的に干渉してくるのも、人間関係の生々しさを緩和する役割を果たしていたと思う。演者は山木将平さん。
・エンタメ作品である以上、できるだけ多くの人に楽しんでもらうことが前提になるし、それでもつらい人はいると思うので、その調整には終わりがない。
・あんなにどうしようもない工場長が最後ちょっとカッコいいのも気になると言えば気になる。
・ただ、本作で描かれているのは、人間は多面体であるという当たり前だけど、忘れがちなこと。
・どうしようもない人というレッテルを貼って済めば楽だけど、世の中だいたいそれでは済まない。
・人間関係も今回の作品作りも、その終わりのない調整の果てに成り立っているという、作品そのものの面白さに比べて、あんまり面白味のない感想に落ち着いた。
(8/9 19:30の回)
劇の登場人物は、
ひとつの特徴と個性を強く作者に当てはめられて、
劇が進行するんですよね。
その意味では一面的なんですけど、
そこから多面性を表すのは、
本当に、
役者さんの演技力ですね。
舞台の良い演技は、
観客を席に縛りつける迫力ありますね。
私は最近、
コロナ禍のせいで、
ホームシアター風に映画ブルーレイやCS放送ばかり見てますけど、
舞台劇ほど、
人間を感じさせるものは無いですね。
作品紹介、
ありがとうございました😊
多様な役割の人たちが現場にいると、混乱しやすくなる一方で、まとめ切れればそのぶん豊かになりますよね。
本作は作演出と主演が同じ方なので、本来はそういう多面性を出しにくいはずなんですけど、それでもちゃんと出せるのはさすがだなと思いました。
自分は演劇側の人間なので、演劇こそが人間を表現できるのだ…と言ってしまうと傲慢な感じになってしまうのですが、自分もちゃんと人間を感じさせる作品が作れてるようになりたいです。