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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

ヤマザキマリ『ヤマザキマリの世界逍遥録』

2025-07-30 21:09:00 | 読書感想文

2025/7/29

マンガ家の著者が世界各地の思い出を綴ったエッセイ集。

ヨーロッパの国々が多く、ときどきキューバやタイ、ブラジル、中国などが出てくる。

著者の出身地である北海道も丸駒温泉、根室、のぼりべつクマ牧場など出てくる。

来場者に媚びを売るヒグマを著者らしい繊細でコミカルなタッチで描いているのが楽しい。

そういえば、『テルマエ・ロマエ』の続編でもやたら動物が出ていた。

グルメの章で出てきたフラメンキン(スペイン)や、黒豚の秘密(ポルトガル)、フィレンツェのパニーニはもれなく食べてみたい。

面白く書こうという意図は感じないんだけど、経験談をわかりやすく書くだけで、ちゃんと面白い文章になっているのはさすがとしか言いようがない。

掲載サイトを見ると、まったくネタが尽きているような様子がしない。

有名なマンガも書いているけど、著者の本分は旅人なんだと思う。

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渋谷 正信『地域や漁業と共存共栄する 洋上風力発電づくり』

2025-07-22 23:50:06 | 読書感想文

 

2025/7/22

・潜水士目線で洋上風力発電を推進していこうとする著者の、主張と実践を紹介した本。

・洋上風力発電は、発電量やコスト、自然災害への耐久性など、どちらかというと非現実的なイメージがあった。

・ただ、日本政府はわりと本格的に動き始めているし、ヨーロッパの一部の国では実用化されている。

・イギリスとドイツが強いらしい。イギリスはともかく、北のほう少しだけ海に面しているだけのドイツは意外。

・東日本大震災で、原子力発電のコストは、事故ると測定不能な規模になることを学んだので、本当に洋上風力でいけるならそれのほうがいい。

・再生可能エネルギーには懐疑的な人もいるけど、東京アクアラインをはじめ、様々な大規模工事で長年海中作業に従事し続けた著者の言うことなので、そのへんのネット論客風情が覆すのは大変だと思う。

・海に建造物を建てる際には、必ず海中で黙々と作業している生身の人間もいるという、わかりきったことを思い出した。

・会社を経営している人なので何かしらの利権もあるんだろうけど、そのあたり営利企業なんだからあたりまえで優先順位の話になる。

・ヨーロッパでは日本のような海焼けがないと書かれていた。

・本書で出ていたヨーロッパは、デンマーク、イギリス、オランダ、ドイツくらいなので、単に日本の対象エリアより高緯度という話ではないんだろうか。

・洋上にプロペラを浮かべることで、海焼け対策になるし良い漁場にもなるらしい。

・ちゃんと各所で獲れる魚の数を比較して見せて、地元の漁師さんから信用を得る。コミュニケーション大事。

・未来のエネルギー問題に向き合うスケール感と、目の前の漁師とスムーズにコミュニケーションを取る現場能力、両方の視点で語られていてよかった。

・読み終わってから色々検索すると、今は原材料や人件費の高騰で、洋上発電も伸び悩んでいるようだ。

・そういえば、台風や津波のような大規模な自然災害時の耐久性については語られていない。

・本書内の図が全部パワポっぽかったり、ヨガの内観体験とか、「地球に感謝」というフレーズとか、危なっかしさを感じつつ、半信半疑で応援していきたい。

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モリエール『病は気から』(鈴木力衛訳)

2025-06-19 16:56:48 | 読書感想文

 

2025/6/19

自らを病気だと思い込んでいる男が、自分の面倒を見させるために、娘の婚約者に医者をあてがおうとする話。

鈴木力衛(すずきりきえ)訳。

最初から薬が高いだの原価だの値切ろうだの言っているし、内容も横暴な父親が子供の恋愛を邪魔する構造なので、『守銭奴』とまったく同じ印象を受ける。

医者を筆頭に知識人とされる人たち全般に対する皮肉がテーマだと思われるけど、個人的には今の風潮と逆行していると感じる。どちらかと言うと、医者だって一生懸命やってるでしょという気持ち。

こういうのは程度問題なので、上演する場合は提供側の価値観がわりと表に出やすい気がする。

前に見たSPACの守銭奴では、原作を踏まえつつ、「今の価値観ではダメだよね、こいつ」みたいなまとめ方をしていたと思う。古典だとそういうこともできる。

理解できなかった笑いどころは多かったけど、女中のトワネットの(たぶん)真顔で繰り返す相槌はおもしろかった。

ただ、自らが医者のフリをする必要は全くなかったと思う。

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岡崎雅子『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』(実業之日本社)

2025-06-09 18:18:49 | 読書感想文

 

2025/6/9

・紋別市のオホーツクとっかりセンターに勤務する飼育員がその仕事内容を紹介する本。

・世の中に動物園や水族館はたくさんあるけど、アザラシに限定した施設は日本でここだけ。

・紋別で実際に見たときに色々疑問に思ったこともあり、中の人の本を読んでみる。

・もともとは1987年、民家の庭先に作られた小さなプールでアザラシを飼育したのが始まりだという。

・現在、施設の職員は紋別市から業務委託を受けている民間会社の社員という立場になる。

・アザラシの保護はもちろん、調査研究の場であるとともに、紋別の貴重な観光資源にもなっている。

・予想はしていたけど、保護したアザラシは個体によって野生復帰か飼育継続かが異なる。飼育方法も違う。

・このあたり、全て野生復帰させようとするオランダとは違う。

・野生復帰させたアザラシを追跡調査したら、すぐに死んでしまうことが多かったそうだ。それでは保護の意味がない。

・自分が現地で見ることができたのは、名前が付いていて人に慣れているようなアザラシだけだった。素人でもそういう個体を野生には返せないのはわかる。

・そもそもアザラシの保護が正しいことなのかどうかという、施設の存在意義にかかわるようなことについても、わりと率直に書かれている。観光、研究に有用ではある一方で漁業被害など悪い面もある。

・シンプルに弱っている動物がいたら助けたいという動機のほうが強そうだが、それだけでもないのもたしか。

・著者は小さい頃からアザラシが好きで、段階を踏んで、道外から紋別にやってきた。道外から紋別にやってくるのは結構勇気いると思う。「好き」は強い。

・中の人だからこそわかる、給餌のやり方や個体差の話がとても具体的。読んでいると自然とアザラシの解像度があがる。顔で個体識別できるのはさすが。

・自分は説明されてもゼニガタアザラシとワモンアザラシの違いが良くわからなかった。

・現地で見てきたキョロちゃんは、餌を食べるのがあんまり上手じゃなかったそうだ。そのわりにトレーニングができて、飼育員に褒められるのが好きっぽい。

・そういえば、餌やり体験の時に、当番でもないのに近づいてきてくれた。えさ目当てかなと思ったけど、もしかしたらホントに遊んでほしかったのかもしれない。

・アザラシ好きが書いた、読めば誰しもアザラシが好きになるような本だった。

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西寺郷太『始めるノートメソッド』

2025-04-26 22:34:49 | 読書感想文

 

2025/4/25

著者が様々な場面に作成したノートを紙面で紹介しながら、作成時のコツや練習の方法を説明した本。

出演されているラジオやポッドキャストでよく話を聞いていて、そのたびに彼の守備範囲の広さとプレゼンのうまさに驚いている。

一方で自分は学習ノートを取ったことがほとんどないまま大人になってしまったので、勉強しなきゃいけない時には毎回苦労している。

ノート術の本を読んでも長続きしたためしはなく、西寺郷太さんの本ならもしやと思いながら読む。

「学ぶ」「伝える」「生み出す」、何のためのノートか認識して書くことが大事。

最近の番組のプレゼン用から、高校時代の世界史の授業まで、たくさんの実例とともに説明しているので説得力がある。

積み重ねの大事さも伝わってくる。

目次の大切さやイラストを有効活用することも参考になりそう。

見習うには遅すぎる気はするけど、ちょっとやってみたいと思わせてくれるだけで有用な本だった。

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岸本 佐知子・三浦 しをん・吉田 篤弘・吉田 浩美「『罪と罰』を読まない」

2025-04-16 07:44:00 | 読書感想文

 

2025/4/9

・ドストエフスキーの『罪と罰』を読んでいない四人が、断片的な情報から、おそらくこういう話だろうと想像して語り合う話。

・『罪と罰』を読んでから読めばいいのか、読まず読めばいいのか迷う。ちょっと読んでみて、読んでから読んだほうがいいように感じたので先に読んだ。「隣の竹垣に~」みたいな文になってしまった。

・世界的な名作なので、読まずとも全く情報がないわけではない。加えて、限定的にテキストを読んでもいいというルールが設けられる。

・四人が即興的に話しながらルールを決めていく。高度な知的遊戯なのは間違いない。

・それぞれがおぼろげな知識となけなしの情報から予想を立て、自らが勝手に予想した作品の内容に対して、それなりに感情が動かされているのがおもしろい。

・吉田浩美さんが事あるごとに影絵版『罪と罰』に言及する。かなり昔に見た、大長編を15分くらいにまとめた心もとない情報なのにちょっと誇らしげに話している。

・三浦しをんさんの1の情報を100にするスピードが速い。《あ、私、わかっちゃったんですけど》と言いながら、全然関係ない方向に全力疾走している。創作者としての馬力が違う。

・登場人物としての魅力の話ではなく、結婚相手にスヴィドリガイロフがいいと言う三浦さんは相当ぶっ飛んでいる。

・河出書房の『世界文学全集10』によると、スヴィドリガイロフが副主人公と書いてあるらしい。読んでいるうちはそんなこと思いもしなかった。

・《本書においては、主に「馬」と呼んでいる》の一文で、誰が登場人物紹介を書いたのかがわかる。

・少ない情報から話を想像するので、たまに出てきた登場人物を無理やり組み合わせて、エンタメの形式に落とし込むような予想になる。本家はより混沌としている。

・「捨てキャラ」という言葉が多い。あんまり小劇場系の劇作家からは聞かない言葉。ドライ。

・さすがにここまでやって読まないというわけにもいかないので、実際に作品を読んだ後にも座談会が行われている。ラスコとスヴィの対比は指摘されるまで気づかなかった。

・鋭い解釈や見立てが出るほど、今までいかに両手両足を縛られた状態で戦っていたのかが伝わってきた。こういうアナログゲームができそう。

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モリエール『守銭奴』

2025-04-07 00:01:56 | 読書感想文

 

2025/4/2

ケチな資産家のアルパゴンが、息子の思い人と結婚しようとしたり、貯め込んだ金を隠されたりする話。

彼がお金だけに執着しているならわかりやすいけど、自分が気に入った女と結婚しようともしている。

欲望の方向性がちょっとブレている。金持ちならどんな女と結婚しても構わなさそうなのに。

人間の多面性の表現なのだろうか。

言い換えると、アルパゴンの欲望を何一つあきらめない姿勢は強い。

娘と父のオウム返し的な掛け合いや、ある「宝物」をめぐるアルパゴンと執事のすれ違い、コメディっぽい掛け合いはあるものの、今のコメディとして見せるのは大変そう。

実際、前に視聴した上演作品でも、そのあたりのコミカルなシーンも笑えるシーンとしては見せてはいなかったと思う。

戯曲では、最後あっさり終わる。

自分が上演する予定はないけど、どうやったら戯曲の良さを引き出せるのかちょっと考え込んでしまう。

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中村元『みんなが知りたい水族館の疑問50 イルカは楽しんでショーをしているか? 水槽が割れることはないのか?』

2025-03-27 12:42:00 | 読書感想文

 

2025/3/21

水族館プロデューサーの著者が、水族館に関する素朴な疑問に答える本。

水族館の水槽は割れないのか、どうしてシャチは人を襲わないのか、という本当に素朴なところから、水族館の水はどこからどうやって運んでくるのかという言われてみれば一筋縄ではいかなそうなところまで、色々ひとつまみずつ紹介されている。

動物園のように種類ごとではなく、地域ごとに展示されているというのは言われるまで意識してなかった。

海獣ショーのくだりで餌のことを代償とか賄賂とか言っていたり(報酬でよいのでは)、ちょっと筆者の言葉選びが独特な感じはあるけど、読み始めると止まらない興味深い話題が収録されている。

イルカの訓練のくだりをもう少し読みたかった。

本著はあくまで導入なので、自分の興味にあわせて深堀りしていけばいいんだと思う。

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田中慎弥『共喰い』

2025-02-11 23:34:43 | 読書感想文

2025/2/10

表題作と『第三紀層の魚』の二作品。

『共喰い』は、川辺の町で暮らす青年が、暴力と性欲で生きているような父親の影響下にいることに悩む話。

田中慎弥作品は初めてだし、現代作家の純文学もほとんど読んでいない。

年代的に作者の青年時代の実体験もそれなりに入っているんだろうなと思いつつ、描写の細かさと事象の非現実感とのギャップに戸惑う。

陰鬱とした話だなと読んでいるうちに、後ろから表題が追いかけてくるような構成。

文字だけでここまで描けるのはすごい。説明と描写はだいぶん違う。

『第三紀層の魚』は、同じように少年と曾祖父との交流と別れの様子を描いた話。

交流と言っても心温まるようなものではなく、他の家族との距離感の違い、人を亡くしたときの心の動きが細かく書かれている。

作者=主人公ではないにしても、鏡をしっかり見た、ごまかしのない自画像のような作品だった。

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筒井康隆『残像に口紅を』

2025-01-13 23:04:45 | 読書感想文

 

2025/1/13

・小説家の佐治が、ランダムに選ばれる一文字とその文字を含むものが徐々に消去されていく小説を書いて、作者自身がその登場人物となり、仕事や日常生活を続けようとする話。

・例えば「あ」という文字が消えれば「朝」がなくなるので、「昼、夕方、夜に続く一定の時間を表現することばでさ、四季を通じて爽やかさ、新鮮さを伴うたいへん好ましい時間のこと」と言い換える。

・文字に余裕のある序盤のうちは、念入りにそのルール作りに充てられている。読者の先手先手を打っている。

・それでも無理はあるはずなんだけど、小説の場合、受け手は書かれていないことに意識が向きにくいという特性があるので、なんとなく押し通されている。

・文字とその文字を含むものが消えていく世界に自分がいたらどう行動するかという見せ方で、現実とフィクションの境界線を曖昧にしている。

・「現実が虚構を模倣し始めた」という視点。

・超虚構というスタイルにつながるらしい。詳しいことはよくわからなかったけど、虚構が現実に影響を与えることはあるし、アバターを使った動画投稿サイトでも似たようなことはできるのかもしれない。

・三人の娘に続いて妻も消滅したときにはちょっと寂しそうにしていたが、そんなに長続きはしていない。

・どんどん文字が減っていくにつれ、世界から物も減っていくが、言葉のプロである佐治は言い換え表現を巧みに利用して語り続ける。冗長な表現からも余裕を感じる。中盤くらいまで不自然さをほとんど感じない。

・作者が作中人物として本小説を書いているというスタイルなので、こちらが読んでいてダレてきたなと思うタイミングで作者も同じような心配をしている。

・佐治は、文字を失い、うまく話せなくなくなった庶民を見て馬鹿にしている。性格が悪い。

・本筋ではないけど、執筆の快楽ゆえに絶頂感が迫ってくるとそれを先延ばしにして愉悦に浸るという、職業作家でもないのに共感できる思考回路。

・最後の一文字が消える時まで、佐治は語り続ける。

・他のことには、そこまで強い関心を持っているように見えない彼が、今際の際まで表現に執着している。

・シメられる直前まで暴れまくる魚みたいだった。

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