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Mo.の事件簿 A diary of Mo’s trips

事件簿などという大層なタイトルだが、実は単なる旅行記です。

12・クノッソス宮殿。

2008-07-25 | ギリシャ/Greece:2008
いやいや、レストランでの食事がメインイベントじゃありませんよ。
クレタ島へ来た最大の目的はクノッソス宮殿。


話が長くなるが、なぜクノッソス宮殿に来たかったかというと……きっかけはギリシャ神話。

(ウィキペディア・ミノタウロス再掲)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%AD%E3%82%B9

ミノタウロスがかわいそうなんだよ。
義憤を感じる。だってミノタウロスは悪くない。悪いのは牛の子を産んだお母さん。
というより、根本的にはミノス王がケチったのが悪いんじゃないか!
それなのに、異形の者として生まれてきただけのミノタウロスを迷宮に閉じ込めてしまうなんて……。
外見が醜ければ心も醜いと決めつけるのか。

それに、9年毎に14人の少年少女を生贄にって、なんなんだよ。
だいたい牛は草食動物だから、人間の生贄は要らん。
干し草の山でも貰った方がなんぼか嬉しかろう。(人間部分は雑食かもしれんが……)
気晴らしとしての生贄ならなんで9年毎かわからない。間があき過ぎ。
彼のためを思うのであれば、せいぜい隔年だろう。
9年なんて。残りの8年は、彼は一体何で遊んでいたらいいのだ。
……まあ、伝説の話にムキになっても仕方ないんですけどね。



それはさておき、クノッソス宮殿について書かれた本を読むと、
巨大な宮殿でとても部屋数が多かった、と説明をした後で、
「いわゆるミノタウロスの迷宮の伝説は、この宮殿の複雑な構造が影響して成立したのかもしれない」
などと書いてある。

ずっと昔から、この内容に違和感を持っていて。
――クノッソス宮殿が複雑な構造であるのはいいとして、それと迷宮はそう安易に結びつくもん?
宮殿と迷宮。迷いやすいという点では似たものに見えるけど、根本的な部分が違う。
宮殿は多数の人間が暮らす、あるいは利用するもの。
迷宮は、迷わせることを、あるいは閉じ込めることを目的にしたもの。
ある意味では相反する建造物ではないか。

いくら宮殿の構造が複雑でも、宮殿にアリアドネの糸はいらない。
伝説は史実をある程度反映しているという考え方に異論はないが、
そういう結びつけ方は安易なような……

この部分がクノッソス宮殿研究において重要ではないのは重々承知している。
(というか、どんな意味においても重要ではないのは承知している。)
が、わたしは行って自分で試してみたかった。
この宮殿遺跡に、迷宮を感じるどうか。


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というわけで、いよいよクノッソス宮殿に向かう。
イラクリオンのバスステーションから、バスで片道25分。
降りた場所はなんだかとても普通の道端。土産物屋が並び――日本みたいだなあ。定義山っぽいよ。
遺跡はちゃんと塀で囲まれて、それなりの構えなんだけれどね。





Knossos Palace.

残念ながら、遺跡全体の雰囲気をつかめる写真がない……








クレタ島屈指の観光地なだけに、ここには団体客が山ほど来ている。
入口の係員が「コンニチハ」などと言っていたので、日本人の団体さんもずいぶん来ているのだろう。




"Lily Prince"

壁画(復元)「百合の王子」。ガラスがあるため、反射が写りこんでしまっている。




He(she?) lives in restored house in Knossos ruins.

遺跡の中に巣を作る燕。クノッソスにはなぜか燕がよく似合う。





猿の復元壁画。物寂しげな青い猿。ただし実際に出土しているのは一部分で、あとは想像による加筆。





階段。この巨大な宮殿は、一部3階または4階として建てられた部分もあったらしいということだ。


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さて、わたしはここで何を感じたのか。
長年の疑問だった、「迷宮」をこの場所で感じられたのか。


……それどころじゃなかったんだよっ。
もうとにかく暑くて。遺跡なんて日陰はないし、石の照り返しはきついし、
朝から歩きまわって足は疲れてるし。ただひたすら「楽になりたい」と思うだけ。
いやこんなんじゃ駄目だ、せっかく来たんじゃないか、もう少ししっかりと見ないと。
しかし人間、暑さには勝てません。勝てる人もいるかもしれないけど(快川紹喜とかね)、
少なくともわたしは勝てませんでした。


というわけで、前振りが長かったわりには、クノッソス宮殿はとりとめなく終了。
そこはかとない敗北感を、花の写真を撮って癒す。









Flowers in Knossos Palace.

きれいだったな。


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ところでクノッソス宮殿ですけどねえ。
復元されている部分はあちこちにあるけれど、実はこの「復元」、まだまだ疑問アリという
段階らしい。ほんとにこんな感じだったかどうか、学問的にはまだ決定出来ないと。

今ある赤い柱とか壁画とか、写真に撮って“絵になる”ような感じの部分はみな復元。
本来の遺跡はただの石の積み重ね部分のみ。
復元部分は、クノッソスの最初の発掘者であるアーサー・エヴァンズが、
勇み足的に作ってしまったもののようだ。そうすることで一般人がより興味を持ち、
自分の発掘活動にも後援が得られるという狙いもあったのだろう。

それを考えるとあまり強く責めるのもかわいそうかと思うけど、
でも視覚情報ってけっこう強力な印象を残すから――
復元を目の前にしながら、「いや、実際はもっと別なものだったのかもしれない」と
自分に言い聞かせるのは少々徒労感がありました。始末が悪いのは、言い聞かせても
その映像が目にどうしても残ってしまうところ。
しかも本に「疑問アリ」と書いてあっても、わかるのは「疑問がある」ということだけで、
ではどういう感じだったのかという代案は出てないわけですから。

功罪で言ったら罪の方が大きいんじゃないでしょうか。
エヴァンズはシュリーマンと違って、どちらかといえばまともな部類の考古学者らしいが、
学者は慎重すぎるくらい慎重でもいいと思うよ。
でもあんまり慎重すぎても面白くないんだけどね。その兼ね合いが難しい。



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