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いいピアノを弾きたい

シューベルト&ブラームス ピアノトリオ1番

2009年07月31日 | 演奏会
(・・・ちょっと見ない間にブログのレイアウトが変っていますね・・・なんでだろう?まーいいっか。)

昨夜指揮者のチョン・ミュン・フンのピアノ、ヴァイオリン樫本大進、チェロ趙 静のトリオの夕べを聴いてきました。久々の演奏会が「当たり!」で大変感動しました。
まずシューベルト。57歳の巨匠のピアノは音が美しく音楽もウィットとロマンティックが絶妙で、音楽的なもっていきかたは 「天才的」というのではないかなあ、と思いました。ベルリンフィルのコンマスが決まったので、是非今のうちにソロを聴きたかった樫本大進さまも伸びのある柔らかい音とフレージング、チェロも妹分のような感じで懸命に父と兄に着いていく。という印象ですが音楽的に樫本さまと似ていて(似てきた?似させた?)予想以上によかったです。
シューベルトの難しさというのは 力の入れ加減ではないかと思います。強すぎてもソフトでもいけない。その点が3人ともぴったしで、ピアノのどっしりとした土台に自然に気負わず(紀尾井ホールだったのに;)音楽が流れつづけていて あっという間に4楽章が終ってしまいました。私にとっての理想的なシューベルトを聴けました。

パウゼのあとは雰囲気が一変して巨匠も一杯やってきたの?と思うような(私は白ワインを一杯)ブラームスが・・・。
確かな情報によるとチョン氏はオーケストラの本番のあとの飲み会で靴下を脱いで「JINRO」を団員にお酌しまわるような・・・ただの酔っ払いに変貌するさまが好評らしいのですが。
この曲は「燃えるな」と云うのが不可能なくらいピアノ的には「燃えてしまう」曲ですが、やはりチョン氏のピアノも 燃えていた。他のふたりが「親父まってくれ~」と必死に追いかけて見事に一体になっていたように感じました。なんだか大変嬉しくなるようなライヴでした。②楽章の燃える場所・・・チェロは口がさけても「ピアノもう少し小さくしてください」とは云えない力関係なんだろうなあ(笑)3人の中で一番ピアニストが興奮していた(しかしホール後方席では全然うるさくはありません!)


生きいきとした、優しく美しい絶品のシューベルト、ロマン溢れるブラームス。
ピアニストが指揮者であるからこその 寛容で包容力のある演奏になったようなき気がします。
このプログラムを別府、大阪、東京と毎晩こなしてきたこのトリオの音楽と体力に圧倒されました。私の前の席にピアニストの小菅優さんが座っていらした。彼女の体の動きが私と同じようで・・。最高の演奏会でした。

アンコールにシューベルトのノットゥルノが聴けたら!というのはさすがに叶いませんで、メンデルスゾーンのトリオの2楽章。鳴り止まぬ拍手に3楽章。
今朝筋肉痛なのは拍手のし過ぎか?

ベートーヴェン 32の変奏曲

2009年07月28日 | 音楽教室
ハ短調のシンプルな勇ましい主題を8小節ずつ32曲も変奏した名曲。
36歳の時の作品、中期真っ只中。作曲の基本。王道。中学生の時 はまりました。
レッスンすることになりまた懐かしく弾いてみて 改めて曲の『サンプル一覧』みたいに技法が次から次へ・・・。技術的にも様々なテクニックが網羅されていて 実験的な曲かもしれません。今読むとかっこいいけれどあんまり心がこもっていない曲だなあ・・・;と感じます。(笑)
バッハのゴルドベルグの変奏曲やベートーヴェンのディアベリは予想もつかない展開ですが、これはそれらに比べればわかりやすい。昔夢中になったわけだ(苦笑)

シンプルゆえに一番大事なのは正確なリズムでしょうね。そして聴いている人と8小節の『サイクル』を共有できるまで弾きこなすしかないでしょう。32曲目まで辿り着くと急に世界が広がって 短いがハードなハ短調の旅が終る。めでたしめでたし。


ベートーヴェン ピアノソナタ14番

2009年07月25日 | 音楽教室
いわゆる「月光ソナタ」として有名な曲です。
この曲はベートーヴェンのソナタの中で比較的弾きやすいと勘違いされてBGMみたいに弾いてしまう人が多くて そういう演奏を聴く度に「そんなんじゃないやい。」と心の中で叫んでいます。ベートーヴェンらしく!という表現があまりにも抽象的なので、使っても意味が通じないようですので、「楽譜をもっとよく読みこむことが大事」といいましょうか。表面のPPだけを守って音が抜けないようにだけ注意してさらりと進んでいく演奏は
読み込みが足りない うわべだけの安易な解釈だと思っています。
冒頭にsostenutoとあります。
これがクセモノでして 
tenuto・・音を保持して 
sostenuto・・音を保持して充分に 
という似たような説明をしていると音楽用語辞典があります。
しかしその両者は正反対の意味です。
・テヌートは「逃げないように引き留める」「梯子を押さえている」うるさくて眠れないときも 「騒音が私を眠れない状態に保った(テヌートした)」
それに対して
・ソステヌートは「下から支える」という意味「あの参加者はソステヌートされている」=「誰かのコネがある」学費を援助するも、ビタミンなどの栄養素も健康をソステヌートしている、友人を支える、橋は橋げたにソステヌート、近寄り難くえらそうな人もソステヌートな人!ですって。
下から支えるには緊張感や何倍もの集中力がいる。

・・・さて重要なのはこれを演奏に反映させるにはどうしたらいいのかということ。
月光ソナタに関して云えば①バスの動き、②分散和音、③ソ♯ーソ♯ソ♯ーーーの主題。(旋律)
この3種類の音量バランスは?フレーズはどこまで?中間部の上向して下降する音型は何を意味している?
考えて簡単に答えの出る問題ではありません。私もこれが正解ですなんて云えません。他の作品や前後のソナタとの系列も巨匠たちの演奏も多いに参考になると思います。
でも演奏を聴くとA「そんなこと考えもしませんでした。」という演奏かB「考えて考えてこれを選択しました」という演奏かどうかはわかります。

いろいろ考えてこういう演奏を選択した時、それが結局ひとりひとりの『ベートーヴェンらしさ』といえると思います。32曲の中で1番緊張感と集中力を要する1楽章です。ベートーヴェンが付けたのではないのに「月光」というタイトルが先行していますが、ただ美しいだけの曲ではないと思います。


本番の恐さ

2009年07月21日 | 音楽教室
中学生のYちゃんのピティナ地区予選通過は成りませんでした。
演奏終了直後「すごく下手に弾きました」とメールがあり、萎縮して表現どころじゃなかったようです。へなへなになった・・・。

来月の毎日コンクールも受けるので課題曲は両方で7曲あったし、昨年もどちらも予選通過しているので、「合格して当然」という雰囲気の中 本人のプレッシャーは大きかった。私自身も彼女が実力を出せないなんてこと考えていなかった。でもそういうこと(実力を発揮できないこと)は誰にでもあるし、長い目でみればこういう経験をプラスにするしかない。私もたいへん残念です。どう反省したらいいのか 考えます・・・。

朗報続く

2009年07月19日 | 音楽教室
6年生のMちゃんもピティナ地区予選通過しました。
彼女は私が受けてみたら?と推薦して それまではピティナの存在も知らなかった生徒さんでした。
充分合格のレヴェルでしたが コンクールというのは何がおこるかわからないので、結果が出るまでやはり心配でした。よかった。初めてのコンクール、よくがんばりました。

本選まで時間が少ないのでこれからますますがんばりましょう。

シューマン 幻想曲作品17 第3楽章

2009年07月17日 | 音楽教室
古典派との決別の1楽章で、たっぷり彷徨ったあと(しかし決して支離滅裂ではない)2楽章にいくのが順当ですが、これはあまりにベートーヴェンを意識しすぎて(後期のソナタの符点のリズム)爆発した楽曲。わたしたち女子供の手では「技術をさらいこむ」ことに最低20時間は費やすので、3楽章に進むことにしています。(笑)
『廃墟』『トロフィー』ときて3楽章は『棕櫚(しゅろ)』という原題があったそうです。「棕櫚」は椰子の木のことで 西洋では勝利、殉教というような意味の象徴だったそうです。

しかし勝利?殉教の意味を隠し持っているのか、この3楽章はロマンティックな分散和音の上にひそやかに美しいメロディが支配して転調を繰り返し高揚し穏やかに幕を閉じる。・・・とこんな説明文が陳腐の骨頂、私はこの曲の楽譜を電車の中で読んでよく涙します。実際弾いても初回は必ず泣いてしまい、2回目は涙はなく 血液が栄養を全身に廻らせてエネルギーに満ちてくるのを実感します。(3回目以降はふつうの状態に戻る)
へたな小説より 気持ちの整理になります。1楽章を弾き②楽章も逃げずに弾いたらもっとその感動は大きいでしょう・・・。2楽章を弾けないことは残念ですが、跳躍大好きな人におまかせして おいしいところだけ楽しみます。

写真は最後のC-durのⅠ度の和音の続く中 終止を前にⅣ度の和音のラの音を♭にしてシューマンの粋なメッセージと感じるところです。この30分近くかかる大曲の最後にこの和音を使うなんて!クララさんこういうところに惚れちゃったんだろうなあと勝手に思って弾いています。(笑)
Ⅰ楽章といいこれといいシューマンの終り方は格別優しい。


遊び心

2009年07月15日 | 音楽教室
ドビュッシーのケーク・ウォークのレッスンで、無邪気に遊ぶ子供を微笑んで見守るパパ。の心境・・・と中学生に説明しても リズムのとり方で「ちょっと間を空けて!」「体もswingする」・・・私も必死に理想の雰囲気をおおげさにやってみせても どうも『とってつけた感』はぬぐえません。コンクールだから何度も何度も弾いてしまうからますます「遊んでます!」と真面目に遊んでるとそれは遊び心から遠のいてしまいます。大人でも「遊べないプレーヤー」はたくさんいます・・・。
先週「まじめに遊ばないで。」とお互い苦笑いのレッスンを終えたのですが そんなこと云われても困るだけですよね。だってほんとうにまじめな女の子なんだもん・・。

そこで昨夜パッと気付いたのが 75年に売れた録音「冨田勲の月の光」シンセサイザーでドビュッシーの名曲をアレンジした素晴らしい作品。♪ポポっぺポっぺっぽー♪
です!夜中に主人が持っていたレコードを聴いてみたけど、特にケーク・ウォークは大笑いしてしまった。電子音を何種類も重ね合わせた録音で聴いてもドビュッシーの原曲の素晴らしさが全面に出て逆に人間味を感じるアレンジです。昔聞いたときも驚いたけど充分聴き応えがありました。
レコードがもう擦り切れているので、完璧なものは聴けませんがこれを彼女に聞かせてみようと考えました。これぞ名案ではなかろうか(笑)きっと驚いて笑い転げると思います。夜中に藁人形に釘を打ってるような演奏(爆)・・・を変身させてくれるかも
このレコードを思い出して弾けば 自然と笑顔で弾けるのではないでしょうか?
悪影響を及ぼすことは決してない。

CDになって今も発売中です。

ピーナツバター

2009年07月14日 | 音楽教室
軽やかな16分音符と対照的なねばっこい音を出したいとき、手の平全部を使ってでも「重さ」を鍵盤にのっけたい。しかし鍵盤に接触するのは「指」なので、「指の腹」の部分を(たくさんの面積を)使って弾いています。でもそこを使って弾いても出したい音色のイメージをしっかり持っていなければなかなか聴いている人に伝わりません。
上半身や手の重みを利用することも実践できるようになるまでは楽器と一体になるくらいの経験、練習時間がないと難しいと思います。
昨日 青柳いづみこさんのテクニックの本『指先から感じるドビュッシー』に「ピーナツバターをすくうような感触」という表現を見つけました。さすがですね。生クリームではなくピーナツバター。
子供の細い指ではある程度 よいしょっと指に力を込めないと「おいしい」と感じる量をすくって舐めることはできません。(パンといっしょや、中華や煮込み料理に隠し味程度に入れるとおいしい。でもカロリー多いので注意が必要。)
この表現で伝わるかな?と想像してみる。
「ピーナツバターって何?」「すくったことないからわかんない。」という答えが返ってきそう・・・。
鍵盤を一本の指で強めに撫でてみましょうか。5本全部で試してみる。おまじないをかけるみたいに。
自分では『無意識に』「こんな音を出したい!」がために いろんなことを指にさせながら弾いているもんだと・・・子供に説明しようとして改めて認識しています。

Gott sei Dank!

2009年07月12日 | 音楽教室
ピティナ地区予選 もうひとりのMちゃんも予選通過いたしました!
去年の夏の終わり 『来年は予選通過したい。』という目標を持って私のところに教室を変えたお嬢さん。・・・一年弱で結果が出せるか?という不安と、私のところにきたからにはレヴェルアップさせたい。という女の意地(爆)で週一のレッスンを重ねてきました。
厳しいことを要求しても急にはできない。でも土台を作らなければうわべだけ整えたって審査員にはお見通し。良きライバルがいたことも大きく なんとか予選通過のレヴェルに達しました。
明け方はなんと『私が課題曲を弾く状況で、暗譜ができてない!』とウナサレテ目が覚めるというこわ~い夢をみるし、今朝のレッスン後も祈るような気持ちで送り出しました。
でも
「通過しました!」のメールをもらって涙が・・・。
嬉しいというより 役目を果たせた安堵感が大きいかもしれません。よかったです。
4年生という小さな子供の大きな目標。泣きながら練習した日もあったでしょう。でもそのくら辛かったから今日はとっても嬉しいよね。がんばったからです。Mちゃんママもご苦労さまでございました。仲良しふたり地区本選に向けてがんばりましょう。

さてさて来週に本番をひかえた6年生と中1のふたりの心境は・・・?

先日の「弾きっこ」に参加しなかった『予選通過はまったく考えてない』という小2のKちゃんは、来週の予選を「大きな会場でたくさんの人の前で新しいワンピースを着て弾けるのが楽しみ。」とマイペースで練習しています。そういうスタンスもあり。

伝説の音

2009年07月07日 | 音楽教室
シューマン 幻想曲の第1楽章の中の「伝説の音」について それまでrit、rit、a tempo、 またrit、rit・・・と揺れ放題 彷徨う。弾き手も乗ってくるし、聞き手もどこへ行くのか、と同乗していく幻想中、そこへ「ちょっと古典にもどろう、正気に戻ってみる。(又は戻りたい)」という気持ちで、弾き手も少しクールになった方がいい。というシューマンのメッセージが「昔ながらの音で、伝説的な・・」と楽譜に書き込んだのでしょう。だからあまりべたべた弾かない方がいいのではないかと・・・。
でもそれも束の間でまたまたじわじわとアクセルを踏み込んでいく、興奮、高揚してしまうのですが・・・。いったん落とした方が効果が大きいですしね。
(以前「伝説の音とは?」と書きっぱなしだったのでその答えのつもりです・・。)

毎週毎週 譜読みからどんどん仕上がっていき ついにこれからは「削ぎ落とし」作業に入ります。最初はう~んどうやってまとめるんだっけ?と思って人生3度目のこの曲、読めば読むほど面白い。他にも学生時代こんなこと考えて弾いていなかった、とか忘れているのか 発見か、生徒さんのレッスンを通じていろんなことを思います。思い入れのある曲は色付きの映像としてその当時が再現されてきて つい感傷に浸ってしまいます。
・・・そんなことしているからなかなか新しい曲にチャレンジできないんですね・・。
とりあえず 「伝説の音」は今のところ解決です。