piano class emi.i.

いいピアノを弾きたい

イョラン・セルシェル

2007年11月25日 | 演奏会
20年近く生の演奏を聴きたいと思っていたセルシェルを聴きました。
バッハのリュート組曲のCDは20年前から何回聴いたかわかりません。
11弦ギターによる彼のバッハは優しい自然な音楽性と柔らかい音で、どちらかというと落ち込んだ時に、疲れたとき、特に留学時代にしょっちゅうかけていて、部屋に来た友人に「またこれ聴いてるの?」とあきれられたものでした。留学時代の下宿部屋にすぐワープできるCDでもあります。

今日所沢という地で、望んでいた「小さな親密な空気の中」で、彼から3メートル?ほどの距離で(最前列)、彼の肉声(=ギター)を聴くことができるのは、(聴く前は少しコワカッタのですが)私にとっては大きな出来事でした。
期待を裏切られることなどを心配したことさえ申し訳ないと思うほど、素晴らしかった。
真近で見た初めての11弦ギターというのは形も美しいけれど聴きなれたCDの音よりもずっと神々しい音がしました。調弦の音で、ため息が出るほど。
オールバッハのプログラムの演奏会より、ホールの小さい事を優先に選んだ演奏会で唯一のバッハのシャコンヌ(セルシェル編曲)はやはり格別でした。(涙)
彼のバッハは球のように完璧だと思います。

楽器がうまいとか、音が良い、とかそういうことより、彼の人間性のようなものが表れてくるのか?真摯で、謙虚だけれど人を受け入れる寛容さが彼の世界を奥深くしているのでしょうか。他の名ギタリストに比べたら地味で、内向的かもしれませんが、本当に好きな演奏家です。
後半6弦のギターで聴いた最初の音は「地に下りてきた!」ようにも感じましたが、音色に慣れると ブリテンのダウランドによるノクターナルは圧巻でした。

はにかんだような優しい笑顔。ひかえめで無駄のない、充実した音を目指すという彼の音楽そのものの風貌でした。
演奏後購入したCDにサインをしてもらった。
夢のような瞬間でした。

オ-ルバッハの演奏会、もう泣きたくない という理由で行かないのはあほちんでしょうか・・・。




一週間に9通のラヴレター

2007年11月18日 | 演奏会
同い年の作曲家の作品を聴きに行ってきました。
バンドネオンとビオラ、をヴァイオリン2本とチェロが支えるという5つの楽章からなる。
作曲の町田郁弥さんがお仲間のご子息、17歳の将来有望な音楽家の為に書いた「たたずむ季節」という曲は 彼らしい美しく優しいサウンドでした。
バンドネオンという楽器はピアノのように一度にたくさんの音を出せる楽器なのですが、ピアノのように例えば10個の音のソプラノだけ、などというようにバランスを自由に何通りものパターンを奏でられる柔軟性を持った楽器なのに対して、オルガンのような構造のバンドネオンは実際「音にしてみると難しい」、と作曲者はおっしゃっていたのですが、そんなその「楽器の弱点?」ともいえる、融通の利かなさなど全く感じない楽曲で、バンドネオンの繊細さを発見できました。それは三浦一馬さんという演奏家の技術によるところも大きいかもしれません。なんとも人間的な?汗を感じるような・・・?(うまくいえません・・)楽器だと思います。
アンコールでピアソラのリベルタンゴのバンドネオンという楽器は血が踊るようで、違う面も楽しめました。

タイトルの「一週間に9通のラヴレター」というのは、5曲目の「手紙」という曲に作曲者がよせた文章の中の『17歳の息子たちよ、一週間に9通のラヴレターを書いたことがあるか?俺はあるぜ。見たくもないだろうが見せてやらないよ。第一持っているはずないじゃないか。手紙のいいところは、出せば確実に手元からなくなるということだ。でなきゃハズカシくて死んでしまう。』・・・からのものです。
この文章 わぁいったいどんな曲なの?と思わせる文章ではありませんか?
彼の「文才」もかなりなものだと中学生の頃からのファンなのですが・・・。
今このメール時代に9通もの手紙がきたら 受け取る相手次第では「ストーカー」よばわりされかねない行為・・・町田さんの解説によると「何度も同じことをいう」「同じ旋律を繰り返す」・・・は恥ずかしいけど楽しかったらしい。・・・という意味・・・だそうですが(ワイドショー的なものではなく^^;)、その文章から受けた私のイメージと初演を聴いた「やわらかいロマンティシズム」の印象・・・がちょっと違ったなあ。という感想を持ちました。
文章によってのイメージは私にはかなり「限定」されてしまうようです。
もともと表題音楽に面白さを感じないタイプ、だけれど詩や文章を読むのが好きであるという人間の分かり易い反応だと思います。「手紙」だけで聴くあの曲と、上記のような文章を読んだあとに聴く「手紙」はきっとちがった感想だったと思います。

声楽家以外の音楽家は「音符に解釈を勝手につけて自己満足する生き物なのかなあ」と思った演奏会でした。
ちなみに 一緒に聴いたやはり同い年の友人はその文章になんの反応も感想もないそぶりでした。(笑)
実は一週間に9通のラヴレターを書く、に等しいことを経験した自分がその頃にワープして独り陶酔していただけだったり・・・(爆)体験というのはまさしく「個人的」なものでしかないのですから。「共有」できませんから・・・。

そのほかにハイドンの「五度」とメンデルスゾーンの1番のカルテットも好演。久々にリフレッシュした午後でした。オペラシティのクリスマスイルミネーションも綺麗でした。



8番目の音 H.・・ハー。・・・はぁ。

2007年11月14日 | 音楽教室
昨日の宿題です。
どうしてドイツ語音名の2番目の音(ラをAというのでAから数えて、という意)が「H」なのか。
どうも転調とか和声というものが確立する前から名前をつけていた、さすがドイツ。音楽歴史が古い。
元々現在でいうシの音は♭しているのがふつうだったそうです。(シの音が低めだったということ)その♭している音に順番通り(素直に^^;)Bの音を当てていました。
後になって どうもBの音は半音上の方がいいということになり、ABCDEFGの次のHの音を・・・。
当時は♯も♭もなくて半音下を「柔らかいB]半音上の音を「硬いB]といって音符のとなりにそれぞれ丸く書いたb (Bの小文字だからだと私は思いましたが?)と角張ったbを書いて区別することにした。
角張った方がb→Hとなり シの♭をBという。

これが「定説」らしいです。そして丸いbが♭に、角張ったbが♯になりめでたしめでたし。パチパチ(^^)
(もう周知の事実だったかもしれませんんが・・。)

低めの音を「柔らかい」と表現する感性がここまで音楽を発展させる源のような。
これから音程をつくる楽器や歌の人に「その音ちょっと柔らかいかも?」という?
・・・いえいえそう云われてふつうは「音色のこと」と思うでしょうね。

さて宿題の2番目
なぜドからではなく ラをAとトップにしたか?
・・・最低音がラだった。という回答を見つけましたが、(ヘ音記号の第1間に記譜するラの音らしいけれど) その説は私を納得させてくれなかったので(爆) もう少し宿題とさせてください。

A’H’CDEFG

2007年11月13日 | 音楽教室
ドレミファソラシドはイタリアからきた日本語といってもいいと思いますが、ピアノ(音楽)を学んでいく中で、ハ二ホヘトイロハという古来の日本の呼び方について説明しないとハ長調、イ短調、という調性について学べません。
音楽専門学校では最初からドイツ音名で習うので、合理的でした。
C→がド、ドの♯はcis、レの♭がdes、という異名同音のややこしさがないのです。
ドがハ、またはCからですが、ハ二ホへト・・・イロハという順番、CDEFGAHC、というおかしな順番ですが、ラの音から学べば イロハニホヘト、英語圏ではABCDEFGという子供にも親しみやすい順番です。数字でも3456712、より、1234567の順番が自然です。
音楽は「ラ」から始まる!?
なのに「ド」から習う!!?

ある帰国子女の生徒さんのアメリカでの教材をそのまま使ってレッスンを始めましたが、その教材はとても面白い導入の仕方をしています。
五線紙にシ、ラ、ソ、という音符があり、「この音符は何の音?」という音楽ドリルになっています。英語で書けばそれらの音はB,A,G
となり「bag」という単語になって子供が喜ぶ→音符を読むのが楽しい。という好循環になります。スペルもいっしょに覚えることもできます。・・・私もその問題の中でわからない単語があり、子供にこれ何の意味?と教えてもらいました。・・・とその単語を今忘れてしまって・・・・。

さて、バーナムやバイエルの教材も進んでいくと、日本語で「変ロ長調」の曲も勉強します。シの♭から始まる調です。♭を「変」♯を「嬰」と漢字で表すという説明は子供によっては スルー・・・。
あとでその曲は「へんくちちょうちょう」と読んだりしても 苦笑するしかないですよね。

小学生からドイツ音名で教えようといつも思うのですが、ドレミという親しみ易さは重要で、「この音はね、ツェー、という音なんだよ。」なんてはじめてもなあ・・。と思ってしまいます。
やはりある程度「音楽」に興味が出てからの知識ですね。

しかし、ドイツ語もシの音がなんでHなのか。シの♭はB(べー)というのですが。
次回までの宿題としましょう。・・と日記には書いておきます。
ドイツ音名で、コーリュ-ブンゲンをうたうソルフェージュの時間
「シラソ♪」を
「HAG♪」とうたうのはいつもいつも笑いをこらえられなかったです。
「ハアゲ♪」と読むので・・・。

貰い手 現る

2007年11月08日 | 音楽教室
先日の[カバレフスキーの夢]の続きです。
弾いてみたい!という子がいました。
私が弾いてみて、「なんか かっこいいでしょ?」
こっくり 頷く。(無口な4年生)
「やってみる?」
こっくり 頷く。しかも笑顔。(なかなか笑顔をみせてくれない女の子なのに!)

最初はペダルなしで、譜面どおりゆっくりきちんと弾いて、だんだん揺らして、ペダルを入れて・・・。
楽しみです。
がんばりましょう!

カバレフスキー 夢 OP.88

2007年11月02日 | 音楽教室
来年2月と3月の発表会のために子供たちの曲を選んでいます。
大変です。
さすがに自分の5才の頃から出演していた、そして先生になってからも長~い間の 発表会歴。私の「聞き飽きた曲」と子供の「やってみたい曲」の中のおりあいをつける作業・・・。
ピアノをスタインウェイのフルコンとヤマハのフルコンの2台を借りて、ブラームスの「ハイドンヴァリエーション ピアノ版」や「動物の謝肉祭」からプロもゲストに呼んで数曲演奏するという例年に無くパワフルな会を計画中ですが 肝心なソロ曲は毎年難航です。

今年春のピティナの課題曲集から カバレフスキーの「6つの小曲集 こどもの夢 作品88(の1曲目)」という曲を見つけました。小学5,6年生向けの課題曲で、2分くらいの短さで、ペダルを使用、テクニックより、表現力、構成力を勉強するのにもってこい、の素敵な曲です。
ハ長調からハ短調へ転調、という譜読みも比較的簡単なわりに、一丁前の「聴かせる」曲です。
・・・しかし、しかし、子供には「ピンとこない」「何がいいたいのかわからない」と却下・・・。なんという一人前な感想!
そんな子供たちに「・・・はあ なるほど。」と妙に感心しながら「じゃ 他の曲をさがしましょう。」とひきさがる私でした。
きっと私も子供の頃先生に「この曲どう?」と訊かれたら そう答えていたかも・・・と思ったり。
でも今の「先生歴 長」の私には「うわァ この曲子供に弾かせたい!きっと上手に弾きこなせるだろう。背伸びしすぎない度からみても文句なし」と思う、なにより みんなが知らないし、子供たちがやりたがっている曲(ショパン^^;ベートーヴェン・・)より、弾きやすいのだ。
まったく もっとメジャーで難しい曲に決めて、ちゃんと練習してくれるんでしょうね。と思いながら・・・。

小学生の初めての「カンタービレ」を経験させるにはもってこいの曲だと思います。
「カンタービレ」をしやすい曲です。(到達点が上向型の先にあるので、感情移入いやすい)
是非一度お聴きください。
くやしいので、私がレッスンの合間に弾いてます。誰かが「その曲なんですか?」と尋ねてくれないかなあ・・・。