piano class emi.i.

いいピアノを弾きたい

脱力

2007年12月30日 | 音楽教室
やっと久々のお休みで、体も頭もそして顔までも!のびきっております・・・。
生徒さんたちにも(自分にも)おしりをたたきつづけた年でした。
・・・思い返せば厳しかったかなあ・・。
といいつつも「大奥にはクリスマスはない(古っ)」じゃないけどピアニストに年末年始はありません。とーぜん。一月に試験、コンクールがあること多いですし・・。年明けのレッスン楽しみにしております。

今の私の体調で思うのは このように力を入れたくても入らない体調・・(発熱時、ほろ酔い時にも。)いいピアノを弾くための課題でもある「脱力」を疑似体験できるチャンスです。
ピアニッシモやフォルテッシモを出そうとしてかえって力んでしまい そばなり、やぬけぬけになってしまいがちです。力みが筋肉の硬直を呼び手のひらや腕の筋肉を強ばらせて結果音は死にミスも呼び、、いいことは何一つありません。この疑似体験を体のどこかに記憶させておきたいものです。なるべく余計な力が入らないように、重心移動や打鍵ポイントで音を作っていきたいものです。
ヨーロッパの名演奏家たちの音は指先から出ているのではなく まるで後頭部から空気を震わせているように感じます。指や楽器はあくまで道具でしかなくこういう音を出そうというイメージが音を引き出しているようです。
音を出すのも指だけではなく 体全体だというイメージをもつ事が大事だと思います。
でもこういう物理的ではない言い方もなんだかなあ。とも思いますが、ある程度の準備ができたら、(イメージをもてるほど弾けたならば、)(もっと言及すればきちんとした技術の裏付けがあれば)あとはどういうイメージを明確に表現できるかが勝負の分かれ目だと思います。実際のイメージの持ち方は自由でそれが個性だと思っています。
どこかのスイッチひとつで、豊かなフォルテや芯のあるピアニッシモが出せるわけではありませんから。様々な要素をまとめるのもイメージすることだし。本番に悔いない演奏をするための精神力も普段の「本番状態をイメージする能力」が問われると思います。
指と耳を駆使してそのイメージが共感を呼ぶことができるかどうか・・・。

疲労が抜けにくい、一年が過ぎるスピードがどんどん速くなる、といういわゆる「年取った証拠」を目の当たりにすると 私もこれから謹んで新しい年を迎えなくてはと思います。無駄のないプロセスとそれなりの?結果を。
読んでくださったみなさま ありがとうございました。みなさまにも実り多き年が訪れますように・・・。










女 子供にも・・・

2007年12月19日 | 音楽教室
ブラームスという作曲家はひとつのフレーズを思いつくと、それにバスを加え、旋律とバスラインが適切かどうか、熟慮に熟慮を重ね、仲間の前で演奏し、意見を訊き
また検討して やっと世に出す・・・。という謙虚な努力家です。
「激情は人間のものではなく むしろ自然のものです。
 つねに例外であるか または奇形であるかです。
 激情が節度をこえた人間は病人とみなされ、生命と健康を守る薬を与えられるわけで  す。
 立派な真の人間は 喜びにあっても、苦しみや悩みにあっても平静なのです。
 激情はじきに過ぎ去ってしまうものですし、さもなければ追い払ってしまわなければ
 なりません。」
・・・ブラームス24歳のころ、シューマンの死から1年後のクララに送った手紙です。

こういう人物です。そしてクララのピアノの弟子の女性がブラームスにピアノを特別レッスンを受けたときのことを記していますが、
「ブラームス先生の作品は強い筋力と強力な掴みが必要です。女の私にでも弾けるような曲を作ってもらえませんか?」とお願いしたという。(大好きなクララの弟子なので、ブラームスはとっても彼女に親切に接しています。)
「僕もそんな曲を書きたいが、なぜか頭の中には そういう音楽がやってくるのだよ。それ以外は無理なんだよ。」と答えたという。

というわけで、たとえ弾けたとしても『ブラームス』の望む 彼の音を再現するのに、女、子供にはかなりのハンディがあります。
でも あのねちねちとした、女そのもののような回路を持っているとしか思えない作品は男女問わず魅了されます。
私も、ブラームスを弾く時だけは男に生まれたかったと思います。

レッスンで小柄な女子中学生が(3大Bが大好き)ラプソディ1番を練習していますがもっと手が大きかったら、もっと体重があったら、と思いつつ重ねてきたレッスンです。音を鳴らすため ゆっくり掴む、ゆっくり押し込む練習をと云い続け やっと楽器を鳴らせるようになってきました。
とうとう今日テンポにのせて弾いたときはけっこうじーんとくるほど私のブラームスに近くなって嬉しかった。とても嬉しかった・・・。
彼女に「本人的にはどう?」と訊いたら
「70%出せたかな」と満足げです。
「あと30%は何がたりないの?」
「最初から キレタカッタ」

もうレッスンはいらないかな?と感じました。
一足早いクリスマスプレゼントをありがとう。

縦と横

2007年12月12日 | 音楽教室
ピアノの譜面やスコアは音楽の流れは横へ動き 和声の響きは縦に見ます。
横に音符を追って最後まで弾けるようになったら 縦に音符を切り取り和声を聴きます。
縦の和音をバランス良く鳴らす、どの声部を立たせて「バランス良い」と選択するのか。即決はできないし、それを確実にタッチするにも反復練習が必死。
横の流れから派生する縦の音なので、切り取った音だけを勝手に色づけできるものでもありません。

流れ重視だと音楽は安っぽくなってしまいます。
音楽の流れを中断し(気持ちは歌いつづけたくても)一度立ち止まり、和音の響きにこだわる練習をしているとまるで作曲家と会話をしているような錯覚を起こします。こういう作業(練習)が私は好きだし、生徒さんにもそうあってほしいと願います。

itunes store

2007年12月05日 | weblog
「ぶらあぼ」という月刊クラシック音楽情報誌をぱらぱら見ていたら巻末の『brabissimo!』のページにiTune Storeにて好評発売中というライブ録音や、CDが紹介されていて、その4CDの中の一枚に私とクラリネット伊藤裕悦とのブラームスクラリネットソナタの録音が載っていました!! ぶらあぼの音楽配信ブランドです。
http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa

 『ブラームス晩年の悟りの境地を余すところなく描く』
というコピーがついていて、ちょっと嬉しい・・・。

このブラームスを録音してくれた友人が(録音専門家)この夏から、たくさんの演奏会に行っては録音し、それをチェックして、彼のお耳にかなったものをアップルに推薦する仕事も始めたという話を訊いて、私達の録音はもうちょっと古い話ですが、それも推薦していい?と訊かれたのでした。なんとなく云ってる意味がわからなかったのですが、こういう意味だったのですね・・・ブラームス クラリネットとピアノのためのソナタ全2曲をダウンロードするのに、930円かかるそうです

たまに自分でも確かめるために 過去の録音 として聴くのですが、今のところ人様に聴いていただいても お金を支払っていただいても そんなに恥ずかしくないないなあ。と思います。ひとりでも多くの方に聴いていただきたい、と思います。

過去の録音が恥ずかしくなるくらい もっと成長しなくてはいけませんね。




イョラン・セルシェル 2

2007年12月01日 | 演奏会
オールバッハプロ行って参りました。
昨夜横浜で演奏して翌日の上野のマチネ演奏会。
・無伴奏チェロ組曲1番
・サラバンド&ジーグ ~リュート組曲ハ短調より
・無伴奏チェロ組曲2番
パウぜのあと
・サラバンド&ガボットⅠ.Ⅱ ~チェロ組曲6番より
・サラバンド&ブーレ リュート組曲ホ短調より
・シャコンヌ ニ短調

サラバンドはどの曲も素晴らしかったです。彼のリュート演奏の真骨頂です。チェロやヴァイオリンのために書かれた曲の中でも「サラバンド」はリュートという楽器が一番合っているように思います。
バッハが唯一人間だったことを正銘してくれるような気がするのです。


しかし全体にちょっとミスが多くて彼のバッハ=完璧な球 を聴けると思い込んでいた私は集中しきれませんでした。
勿論先週の所沢での演奏会を聴いて、20年前の録音CDより更に今の彼のライブは素晴らしかったからこその今日の感想です。
残念ながらちょっと疲労が隠せなかったと思います。
どの曲も超絶技巧であるし、ミスなんか大きな問題ではないところに彼の音楽はある。
そんなこと百も承知の上で、あえて私は彼のバッハは完璧でなければならないと思います。1ミリの隙もなく緻密なもの。なのに自然な語り口であるという・・・。
演奏者が全面に出ない演奏・・・。
先週のシャコンヌはそうだったのですから。

彼の演奏を初めて聴いた若い男性はめちゃめちゃ感激していました。
そういう聴衆が多かった。「彼の世界」は伝えられる演奏会ではあったのだと思います。
テレビカメラも来ていたのに、もしあれが放送されたら 私は「あれは彼の本当ではないです!」と弁解したいところであります。
ファンなので、かなり好意的に聴いていました。
依然ファンをやめるつもりはありません。
・・・彼も不本意なのではないかと心配しています。


セルシェルさま 
ハードなツアー お疲れ様でした。