松山櫨(はぜ)復活奮闘日記

失われてしまった松山櫨の景観を復活させようと奮闘していく日々の記録。

今年の灯芯草

2008-07-16 23:43:24 | 和ろうそく芯ものがたり
筑後市で灯芯草を生産している井口さんから連絡が入りました。
今年の灯芯草を収穫したとのことで、写真もいただきました。
ごらんの通り、青々とした立派な灯芯草です。

灯芯草については以前のエントリで書いているように、
栽培は平安時代にまで遡り、名前のとおり燈芯として使われてきました。
畳イグサとして使われるコヒゲは、この灯芯草を品種改良して硬く太くなったものです。
しかし「改良」というとまるで良くなったかのように聞こえますが、
こちらを見てください。
見かけは硬くて太くて立派な畳になるコヒゲですが、海面組織自体は灯芯草の方が優れているのです。

品種改良したからといって、良くなるわけでもないというのは、
例えるならば、親子の大工がいたとして、
子供が親の年齢になって親との技術を比較した場合に似ています。
どちらが優れているかを比べても、単純に甲乙つけるのは難しいでしょう。
どちらも一長一短の個性やクセがあるからです。

これは櫨の品種「松山櫨」についても言うことができます。
伊吉櫨は内山伊吉という人が松山櫨を品種改良して作ったものですが、
質が向上したのかというと、実はそうでもないのです。
色合いや粘りなどの個性が違うというだけで、単純に比較して質が上がったと断じることはできません。
伊吉櫨は、松山櫨から生まれた別の個性の品種ととらえなければなりません。

さらに話は続くんですが、竹弓についても同じ事がいえます。
最近は竹弓の中にカーボンを入れたものが主流になっているそうです。
こちらを見てください。
竹弓を強固にして、形を整えようとした挙げ句、
本来の竹の良さが半減した弓になりました。

こういったことは、まだまだ他にも言えることです。
昔は川の土手に多くの櫨や桜が植えられ、洪水から田畑を守ってきました。
ところが現在の川辺を見ると、味気ないコンクリの三面側溝になって、
櫨や桜は伐採され、川辺に生息していたメダカも消え、周辺の地下水にも影響を与えています。
これが「改良」なんでしょうか。

人間が苦労して技術改良したものが、
実際よく比較すると単純に「改良」にはなってないのだということを知ると
前進ばかりしていないで、たまには振り返る事も大切だなとつくづく思います。

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