エルソル飛脚ブログ ~Run 4 Fun~

四万十川周辺をチョロチョロしている飛脚の記録です。

エルソル大阪物語■19■「芸術祭」

2018年01月17日 | エルソル大阪物語

■19■


「芸術祭」といって
中ノ島フェスティバルホールで「カットコンテスト」がありました。
関美が誇る一大イベントです。

当日は施術タイムが15分という事なので、「モデルの頭」は前日に仕込みます。
本気で入賞を狙っていた僕は、
高校時代の友人で京都の大学生「アキラ」をモデルに雇いました。

高校時代のアキラは、
壊れてしまった携帯音楽プレーヤーを手渡すと、
翌日色も違う新品になって返してくれるという「マジシャン」でした。
マジシャンアキラの髪質の良さには当時から一目置いていました。

アキラを迎えに羽衣駅に行きました。
僕に気付き片手を挙げたアキラは、料金不足なのか自動改札に「バタン」と堰止められました。
「おぅ、うっとうしい!」
アキラは「バリバリ」と音を立てて平然と突っ切りました。

上田「相変わらずやな~」

部屋に連れて行き、創作ヘアーにとりかかりました。

「えひめ福嶋」から電話があり、
「モデルが見つからん・・、誰かおらんか?」と困っていたので、
同じく高校時代の友人で調理師専門学校生の「イケダ」に連絡をとりました。

上田「舞台に立っているだけで構わんからモデルやってあげて・・」

夜遅くまでかけて「パイナップル頭」を完成させました。
うたた寝するアキラを起こしながら(ヘアーが潰れる)、ついに本番の朝を迎えました。

「芸術祭」は「やしきたかじん」のライブや「ハイヒール」の漫才もあり、
とても派手なコンテストでした。

舞台裏で待機していたときから
アキラの「パイナップルヘアー」はとても目立っていました。

無事15分の施術時間も終了し、審査タイムに入りました。
審査員の皆さんもアキラの前で立ち止まりました。
「もう上田に決まりやな」
そんな声が周りからチラホラ聞こえてきました。

ところが・・入賞したのは「福嶋」でした。

「福嶋」のモデルといえば・・ただクシを通しただけの「イケダの頭!」

福嶋「オレのクシの通し方がエがった(良かった)ケンのぉ~」
  「スゲーのぉ~オレ」

上田「アホか!イケダが昨日慌てて行った散髪屋の勝利や!」
  「くそ~」


一年を通して学校の授業内容はとてもシンプルで、
・「刈込準備」(タオル・カットクロスを巻き、髪の毛のクセをとる)
・「日本刀研磨」(カミソリを砥石で研ぐ)
・「シャンプー」(相モデルでシャンプー)
・「鋏操作」(クシにあてた鋏をひたすら開閉)
などと反復作業が多く、唯一努力とセンスで差がつきそうなのは「ロッド巻き」ぐらいでした。

「ロッド巻き」は「ウィッグ」という人工毛の頭で練習します。
フロント・トップ・サイド・クラウン・バックなど九つのパートにブロック分けをして、
タイムを計りながらロッドを巻き、美しさも競います。
いわゆる「パーマ」の練習です。

「パーマ」は関美が唯一他の専門学校に誇れる科目で、
「関美卒の新人はパーマが巻ける」は関西では有名でした。

「堀江ネエさん」「イッチョカミ藤」はすごく上手でした。
僕はいつも3番手でした。

「恐竜辻神」のウィッグは黒人でした。(マジック塗り)

「学科」は、
「公衆衛生」「伝染病学」「消毒法」「物理化学」など、名前だけ聞くととても難しそうですが、
中卒もいるので教科書どおりの事をやっていれば楽勝でした。

冬になれば学校の単位も一番に終わり、「ただ通うだけ」の快適学園生活。

それどころか学校帰りにバイトもせず難波で毎日遊んでしまう堕落の日々。

・・・卒業時になると優秀な成績に自惚れ慢心。

「大阪」という街を見下してしまった僕は「東京進出」(就職)を長島先生に相談しました。

  上田「先生、東京に行きたいんですけど・・」

長島先生「アホか?東京なんか無いワ!」
    「それやったら最初から東京の専門学校行かんかいっ!」
    「お前には玉造(西成区)のお店を紹介する予定やで」
    
しかし数週間後、偶然にも東京池袋から募集が関美に舞い込みました。

長島先生「信じられへん、学校としては全く面識の無いお店やけど・・どうする?」

  上田「行きます!」

興奮して答えました。

しかし僕以上に興奮していたのは古尾先生でした。
関美理容部からは「初めての東京就職」らしいのです。

古尾先生「何と東京就職、学校としても誇らしいワ~」
    「それが上田やったら自信持って送り出せるしな~」
    

学校は卒業式を迎えました。

「香るシャンプー光る髪~♪」
この変な校歌も最後の合唱です。

校長「カロコロ(入れ歯)・・みなさん、ご卒業おめでとう」
  「最後にちょっと年寄りの話を聞いてやって下さい・・カラコロ」
  「~~~」

横に座っていた「玉居おばさん」がヒソヒソと話しかけてきました。
玉居「上田君、このままみんなとお別れって寂しいからな・・」
  「女の子達と『お別れ会』しようって言ってるんよ」
  「男の子の出欠をお願いしていいかしら?」

上田「いいですよ、でも集まるかな~?この連中・・」

玉居「ウチは千日前やから今度寄ってくれる?地図書くから・・」
  「話詰めましょ」

■19■


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