エルソル飛脚ブログ ~Run 4 Fun~

四万十川周辺をチョロチョロしている飛脚の記録です。

エルソル大阪物語■40■「怖い人でも髪の毛は伸びる」

2018年01月24日 | エルソル大阪物語

■40■


秋になり、
仕事にもすっかり慣れていた頃、
不意をついて『イッチョカミ藤』がお店に現れました。
(噂で聞いたらしい)
一旦修行から離れ、一年間バーテンをした後で
心斎橋の理美容の店(結構近所)で働いているらしく、
同じく一年以上遠回りした僕は「同志」のような安心感がありました。 

 藤「関美の岩下覚えてるか?」
  「ドイツ人とのハーフとかワケ分からんこと言うとった・・」

上田「ああ、チャーリーか」

 藤「アイツ今、すぐそこのアメ村で服屋の店員やってるワ」
  「誘って食べに行こか?」

「チャーリー岩下」はド派手な真っ赤なモヒカン頭で現れました。
足元のウエスタンブーツの後ろには馬を蹴るトゲトゲの車輪が付いていて、
歩くと「カチャカチャ」とうるさい音がしました。

岩下「上田ぁ~久しぶりやなぁ~」
  「ブーツ格好ええやろ?」

上田「・・・」(トムとジェリーでしか見た事ないぞ)

居酒屋でそれぞれの近況を話たりして盛り上がりました。

岩下「ちょっとええかー」

何やら紙を巻いて巻きタバコを作り、それを吸いました。
タバコと違い、変な臭いがあたりに充満しました。

上田「藤、・・アレちょっとヤバいんちゃう?」
 藤「アカンな、危険やな・・」

岩下は突然立ち上がり、片足をテーブルの上に乗せました。
「ガチャン!!」
ブーツの鉄が激しく音を立てました。

胸元から小さなハーモニカを取り出しました。
「ファーーッ!!ファラリラファラファラファ~♪」
ワケのワカラン演奏を始めてしまいました。
客・店員の視線を一斉に集めました。

上田「アカン、帰るか!?」
 藤「アカンな、出ろ、出ろ!」

意外と岩下もあっさりと一緒に出てきました。

上田・藤「ほなね~!」
【危ない岩下】を帰しました。


ターニングのお客さんには一人の【危ない大物】がいました。
組長のUさんでした。

黒塗りのベンツがお店に横付けされました。
チンピラ「おう!!今、空いとるか!?」
    「親父ぃー!!空いてまっせ!」
後部ドアから大柄な組長が出てきました。

従業員一同「いらっしゃいませ!」
深々と下げた頭を元に戻すと、マスターと後輩は素早く雑用に取りかかっています。

U組長「おい、お前、顔剃りしてくれ!」

唯一何もしていない僕が指名されました。
マスターも後輩も目を合わしてくれません。

上田「どうぞこちらへ・・」
仕方なく毛剃りの準備に取りかかりました。

客待ちソファーにはイカツイチンピラ2人がこちらを睨んでいます。

椅子を横に倒すとU組長は横になりながら週刊誌を読みました。
ただでさえ緊張する状況なのに、
週刊誌を支える手が邪魔になり剃るのに苦労します。

蒸しタオルでヒゲを蒸している間に、読んでいる週刊誌を覗き見しました。
開いているページには「U組長本人らしき人」が出ていました。
「ゴクリ」と唾を飲み込み集中しました。

その時、店のドアが開きました。
組長の小学生の息子が入って来ました。(本妻の子供ではない)
息子は小学2年とは思えないくらいの巨体でした。
何処かで拾ってきたのか「こん棒」を持っていました。

息子「何してんの父ちゃん!バシッ!」

何と!息子は「こん棒」で組長の足をシバきました。

組長「う”っ!!」
  「痛いやないか~」

上田「・・・!!」(コラ!クソ坊主!大人しくしとけ!)

息子「やっつけてやる~!エイ!バシッ!!エイ!バシッ!!」

組長「う”っ!!う”っ!!」
  「痛いからヤメロって」

「こん棒」から発せられる鈍い音からすると、
結構なダメージがあると思うが・・組長は怒りません。

上田「・・・」
  (同じ事をオレがやったらすぐに南港に浮かぶんやろうな・・)

息子「トドメや~、エイ!バシッ!」

何と急所に入りました!

組長「ブホッ!!」

ついに立ち上がった大柄な組長が、
息子にではなく僕にグッと近寄り言いました、

組長「ハナ出たワ、ティッシュちょうだい!」

何が気に入られたのかワカランが、
以後組長は毛剃りに僕を指名してきました・・。

■40■


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