前回、日本マクドナルドの戦略は、
「低コスト路線」なのか「おもてなし(顧客価値の増大)路線」なのか
という問いをまず立てました。
どうやら、マックの広告メッセージからは
「おもてなし路線」を目指していることがうかがえます。
ただ、そのためには、店長を筆頭にクルーのマインドの向上、
対応力向上が欠かせません。
その際に注目したのは、日本マクドナルドが、
フランチャイズの比率を急激に上げている事実です。
原田CEOの就任当時は3割だった比率を
7割近くまで増やしているというのです。
一般的に、フランチャイズと聞くと、本部のコントロールが効きにくい
というイメージがあるかと思います。
オーナーは「おもてなし」よりも利益最大化のために、
客数をさばくことや、低コストに目を向けて行動していくのではないか
と思われるからです。
実際、今回、参考にしている『ストーリーと競争戦略』という本では、
スターバックスでは、直営店にすることによって
「顧客が払いたいと思う価値」を上げていると分析していました。
そこで、「フランチャイズ化」と「おもてなしは両立できるのか」
という本題が浮かび上がってきました。
原田CEOの講演録をまとめた『勝ち続ける経営』には
フランチャイズの大改革をしたことが記されています。
2008年から2011年の3年間で440ほどのオーナーオペレーターを
200くらいまでに減らしてきました。簡単に申し上げますと、
マクドナルドの基準に満たないところは撤退をお願いしたのです。
これは大きな構造改革です。
講演の中で「年功序列・暖簾分け制度の延長で、フランチャイズ化されていましたから
改革はたいへんなものです」とありました。
相当な反発、反対圧力があったと思われます。
トップの強いリーダーシップがなければ、そうそう実現できることではありません。
次に、分かったのはフランチャイズのオーナーは、
ほとんどが社員出身であるということです。
フランチャイズオーナーは、日本マクドナルドのブランド強化戦略を理解し、
それに賛同する人たちが選りすぐられたのでしょう。
しかも元社員なのですから、もともと忠誠心は高いと考えられます。
それ以外に、原田CEOは、もう一つの懸案事項も解消しています。
オーナーのキャッシュフロー、資金面です。
1オーナー当たりの持つ店舗数を、
1~2店から8~10店舗まで大幅に増やしたというのです。
…きちんと基準を守り、すばらしい店舗経営をされるオーナーには
10店舗程度経営していただいて、成長戦略のルールに乗せる改革をしてきました。
オーナーに資金面のケアを十分にしておけば、隠れて利益に走り、
「おもてなし」をないがしろにする心配も減ります。
オーナーの半減といっても、
単に数字を減らしただけでなく質を変えたということですね。
フランチャイズという言葉を使っていますが、
実際は「形を変えた直営店」と言えるものだったのです。
今回、WEBで調べていたら、
日本マクドナルドの「フランチャイズ化に潜む経営戦略とは」
という記事を見つけました。
ダイヤモンドオンライン:なぜ減益必至のフランチャイズ化を推進するのか
日本マクドナルドの「店舗まるごとコストダウン戦略」
フランチャイズでもうかるのか?
外注であるフランチャイズで「ブランド認知の強化」は可能なのか?
という問いに、このブログとは全く別の観点から答えを導き出しています。
全文を読むには登録(無料)が必要な記事なので、
ネタバレにつながる引用は控えさせていただきます。
ここまで読んでいただいた方には、
日本マクドナルドの総会のプレゼンシートも面白く読めるかもしれません。
第40回定時株主総会
第39回定時株主総会
また、以下のエントリーも参考になりました。
FC化が、日本マクドナルドの「ロイヤリティ収入の安定」、「経営リスクの軽減」に
つながっているというのは見逃せない観点です。
ブログ:マクドナルド FC今期末六割超:フランチャイズ地獄からの脱出 藤原義塾からの報告書
さて、問いと答えは以上ですが、原田本が相当勉強になったので、
面白かったところをバラバラと記してみます。
まず、活動の柱のひとつである「アウトスタンディング」。
顧客の期待を超えていくには、やはりその企業しかできない
「らしさ」が大事です。
本当にそうですねえ。
先日、初めて吉野屋のカレーを食べたときにそう思いました。
松屋も(恐らく)コスト削減のため、ファンの多かった「豚丼」を止めたそうですし。
お客さまのおっしゃることと、実際の行動はまったく違うということです。
つまりお客さまの希望ばかりを聞いて、その通りにしていたらダメなのです。
お客さまの要望以上のことをやらなければならない。
しかも「自分らしさ」を忘れてはいけないのです。
この部分、感銘を受けました。
今後の自分の仕事のテーマにしようと決意しました。
お客さまの声を聞いて、お客さまのおっしゃったことに応えるだけでは、競争に勝てません。
やはり自分の信じるものをお客さまに提案することが大事です。
…リサーチというのは、自分が信じることが思った通り進んでいるかどうか
自己検証するためのツールです。
「お客さまの声」と言って、やたらに もてはやすトレンドに一矢を入れる言葉だ。
それから前回の記事 [その1] で「アーキテクチャ」について触れましたが、
これは今のマクドナルドには失礼な見当だったようです。
「お客さまをマニピュレート(操縦)するようなことは絶対にしてはいけない」
と言っています。…略…ですが、「ナビゲーション(誘導)はきちっとやれ」
と、くどいくらい言っています。
このマクドナルドの「ナビゲーション(誘導)」については、
実体験を踏まえ、いろいと思うところがあるのです。
このテーマについては、
もう少し考えが熟してきたらアウトプットしてみたいと思います。
それから、「新世代デザイン店舗」。
新世代デザイン店舗 mcdonald's Japan
これも、マックが新しい顧客価値の増大に向けて試行錯誤していることの
ひとつかと思います。「実験店舗」とも呼ばれているとか。
続けます。
厳しい状況の日本で成功している企業は、
(…略…)価値と価格を上げる戦略を貫いているのではないかと思います。
…そしてさらに重要なのは、顧客の期待を超える、経験値を超える価値の提供です。
…顧客の経験値、期待値を超える独自性がなければ価格競争にしか行かない
「グランドキャニオンバーガー」、食べました。
自分は「ビッグマック」とかデカイのは好きではないので
食べるつもりは全くなかったのですが、
ケータイクーポンのナビゲーションに誘導され、
ついつい頼んでしまいました。
確かに、期待を超える味でした。実は、また食べたいなと秘かに思っているくらい。
たくさん引用してすみません。きりがないので最後にひとつだけ。
お客さまはコモディティの価格には非常にセンシティブになって、
同時に何か新しいもの、心を豊かにするもの、自分の生活を充実させるものには
対価を払う傾向にあるのです。
原田さんの著者は、まだ何冊かあるようなので、今後読んでいきたいと思います。
余談になりますが、
今、『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』(プレジデント社)を
読んでいます。
副題は「世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者」。
どんだけマックに興味があるんだ、俺は。
でも、これは面白いです。
本書を読む中で、さらにマクドナルドについて書いてみたいことが
出てきたのですが、それは機会がありましたら。
自分は食品とは全く違う業界で働いている人間ですし、
こういう企業研究のようなエントリーを書くのも、ほぼ初めてです。
ただ、昨年から家族で毎週のようにマックに足を運ぶようになり、
どうしてハマッてしまったのか…という自身の経験から
マクドナルドという企業に興味を持ちました。
それが、このエントリーを書くきっかけとなったように思います。
長いつぶやきになりましたが、これにて終了します。
「低コスト路線」なのか「おもてなし(顧客価値の増大)路線」なのか
という問いをまず立てました。
どうやら、マックの広告メッセージからは
「おもてなし路線」を目指していることがうかがえます。
ただ、そのためには、店長を筆頭にクルーのマインドの向上、
対応力向上が欠かせません。
その際に注目したのは、日本マクドナルドが、
フランチャイズの比率を急激に上げている事実です。
原田CEOの就任当時は3割だった比率を
7割近くまで増やしているというのです。
一般的に、フランチャイズと聞くと、本部のコントロールが効きにくい
というイメージがあるかと思います。
オーナーは「おもてなし」よりも利益最大化のために、
客数をさばくことや、低コストに目を向けて行動していくのではないか
と思われるからです。
実際、今回、参考にしている『ストーリーと競争戦略』という本では、
スターバックスでは、直営店にすることによって
「顧客が払いたいと思う価値」を上げていると分析していました。
そこで、「フランチャイズ化」と「おもてなしは両立できるのか」
という本題が浮かび上がってきました。
原田CEOの講演録をまとめた『勝ち続ける経営』には
フランチャイズの大改革をしたことが記されています。
2008年から2011年の3年間で440ほどのオーナーオペレーターを
200くらいまでに減らしてきました。簡単に申し上げますと、
マクドナルドの基準に満たないところは撤退をお願いしたのです。
これは大きな構造改革です。
講演の中で「年功序列・暖簾分け制度の延長で、フランチャイズ化されていましたから
改革はたいへんなものです」とありました。
相当な反発、反対圧力があったと思われます。
トップの強いリーダーシップがなければ、そうそう実現できることではありません。
次に、分かったのはフランチャイズのオーナーは、
ほとんどが社員出身であるということです。
フランチャイズオーナーは、日本マクドナルドのブランド強化戦略を理解し、
それに賛同する人たちが選りすぐられたのでしょう。
しかも元社員なのですから、もともと忠誠心は高いと考えられます。
それ以外に、原田CEOは、もう一つの懸案事項も解消しています。
オーナーのキャッシュフロー、資金面です。
1オーナー当たりの持つ店舗数を、
1~2店から8~10店舗まで大幅に増やしたというのです。
…きちんと基準を守り、すばらしい店舗経営をされるオーナーには
10店舗程度経営していただいて、成長戦略のルールに乗せる改革をしてきました。
オーナーに資金面のケアを十分にしておけば、隠れて利益に走り、
「おもてなし」をないがしろにする心配も減ります。
オーナーの半減といっても、
単に数字を減らしただけでなく質を変えたということですね。
フランチャイズという言葉を使っていますが、
実際は「形を変えた直営店」と言えるものだったのです。
今回、WEBで調べていたら、
日本マクドナルドの「フランチャイズ化に潜む経営戦略とは」
という記事を見つけました。
ダイヤモンドオンライン:なぜ減益必至のフランチャイズ化を推進するのか
日本マクドナルドの「店舗まるごとコストダウン戦略」
フランチャイズでもうかるのか?
外注であるフランチャイズで「ブランド認知の強化」は可能なのか?
という問いに、このブログとは全く別の観点から答えを導き出しています。
全文を読むには登録(無料)が必要な記事なので、
ネタバレにつながる引用は控えさせていただきます。
ここまで読んでいただいた方には、
日本マクドナルドの総会のプレゼンシートも面白く読めるかもしれません。
第40回定時株主総会
第39回定時株主総会
また、以下のエントリーも参考になりました。
FC化が、日本マクドナルドの「ロイヤリティ収入の安定」、「経営リスクの軽減」に
つながっているというのは見逃せない観点です。
ブログ:マクドナルド FC今期末六割超:フランチャイズ地獄からの脱出 藤原義塾からの報告書
さて、問いと答えは以上ですが、原田本が相当勉強になったので、
面白かったところをバラバラと記してみます。
まず、活動の柱のひとつである「アウトスタンディング」。
顧客の期待を超えていくには、やはりその企業しかできない
「らしさ」が大事です。
本当にそうですねえ。
先日、初めて吉野屋のカレーを食べたときにそう思いました。
松屋も(恐らく)コスト削減のため、ファンの多かった「豚丼」を止めたそうですし。
お客さまのおっしゃることと、実際の行動はまったく違うということです。
つまりお客さまの希望ばかりを聞いて、その通りにしていたらダメなのです。
お客さまの要望以上のことをやらなければならない。
しかも「自分らしさ」を忘れてはいけないのです。
この部分、感銘を受けました。
今後の自分の仕事のテーマにしようと決意しました。
お客さまの声を聞いて、お客さまのおっしゃったことに応えるだけでは、競争に勝てません。
やはり自分の信じるものをお客さまに提案することが大事です。
…リサーチというのは、自分が信じることが思った通り進んでいるかどうか
自己検証するためのツールです。
「お客さまの声」と言って、やたらに もてはやすトレンドに一矢を入れる言葉だ。
それから前回の記事 [その1] で「アーキテクチャ」について触れましたが、
これは今のマクドナルドには失礼な見当だったようです。
「お客さまをマニピュレート(操縦)するようなことは絶対にしてはいけない」
と言っています。…略…ですが、「ナビゲーション(誘導)はきちっとやれ」
と、くどいくらい言っています。
このマクドナルドの「ナビゲーション(誘導)」については、
実体験を踏まえ、いろいと思うところがあるのです。
このテーマについては、
もう少し考えが熟してきたらアウトプットしてみたいと思います。
それから、「新世代デザイン店舗」。
新世代デザイン店舗 mcdonald's Japan
これも、マックが新しい顧客価値の増大に向けて試行錯誤していることの
ひとつかと思います。「実験店舗」とも呼ばれているとか。
続けます。
厳しい状況の日本で成功している企業は、
(…略…)価値と価格を上げる戦略を貫いているのではないかと思います。
…そしてさらに重要なのは、顧客の期待を超える、経験値を超える価値の提供です。
…顧客の経験値、期待値を超える独自性がなければ価格競争にしか行かない
「グランドキャニオンバーガー」、食べました。
自分は「ビッグマック」とかデカイのは好きではないので
食べるつもりは全くなかったのですが、
ケータイクーポンのナビゲーションに誘導され、
ついつい頼んでしまいました。
確かに、期待を超える味でした。実は、また食べたいなと秘かに思っているくらい。
たくさん引用してすみません。きりがないので最後にひとつだけ。
お客さまはコモディティの価格には非常にセンシティブになって、
同時に何か新しいもの、心を豊かにするもの、自分の生活を充実させるものには
対価を払う傾向にあるのです。
原田さんの著者は、まだ何冊かあるようなので、今後読んでいきたいと思います。
余談になりますが、
今、『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』(プレジデント社)を
読んでいます。
副題は「世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者」。
どんだけマックに興味があるんだ、俺は。
でも、これは面白いです。
本書を読む中で、さらにマクドナルドについて書いてみたいことが
出てきたのですが、それは機会がありましたら。
自分は食品とは全く違う業界で働いている人間ですし、
こういう企業研究のようなエントリーを書くのも、ほぼ初めてです。
ただ、昨年から家族で毎週のようにマックに足を運ぶようになり、
どうしてハマッてしまったのか…という自身の経験から
マクドナルドという企業に興味を持ちました。
それが、このエントリーを書くきっかけとなったように思います。
長いつぶやきになりましたが、これにて終了します。