幸せに生きる(笑顔のレシピ) & ロゴセラピー 

幸せに生きるには幸せな考え方をすること 笑顔のレシピは自分が創ることだと思います。笑顔が周りを幸せにし自分も幸せに!

島根いのちの電話公開講座 生きづらい時代をどう生きていくか ~精神科医からの提言~ 講師 香山 リカ 氏 ”2022年4月より、北海道むかわ町国民健康保険穂別診療所でへき地医療を”

2024-03-20 17:34:17 | 社会

 香山さんは精神科医として、評論、エッセイなど数多くの著書を執筆される中、立教 大学で教授も務められました。昨年からは東京から北海道に移り、総合診療医としてご 活躍です。なぜ都会を離れてへき地での医療に取り組むことになったのでしょうか。そ して誰かの役に立つとはどんなことなのでしょうか。体験に基づくトークです。  2023年9月17日-松江市くにびきメッセ(文責 島根いのちの電話広報委員会)

2022年、北海道むかわ町の診療所へ、転機となったのは・・・  
 東京には、お医者さんもたくさんいるし、 私がいなくてもと思っていたんです。同級生 には総合診療医となってへき地で働く人もい て、気になっていました。そんな中、2019年 にアフガニスタンで医療だけでなく、灌漑事 業などの指揮をとっていた医師の中村哲さん が銃撃され亡くなったんです。  その中村さんの記録映画を見て、衝撃を受 けたんです。このときラクしている自分が恥 ずかしくなったんです。必要とされるところ へ行きたい――とシンプルに考えたんです。 
 ちょうどその頃、プライマリーケア(総合診 療医)を学んでいた矢先で、本気になって考 えるようになったんです。  
 移り住んだ北海道むかわ町は、ししゃもで 有名ですが、私の住む穂別地区は、海岸から 離れた山の中です。人口は2,500人。へき地 診療所にも指定されている「むかわ町国民健 康保険穂別診療所」の常勤医は所長と私の二 人です。当直もあります。総合外来は毎日で、地域の医療と保健を担っています。 生きづらい現代人たち  写真は家の前で撮った鹿です。農作物への 被害も大きいんです。交通事故もあります。 大変なところへ来たなと、都会との暮らしを比べながら思います。 
 でも都会に住むのも大変だと、若い人たち と話をすると思うことがあります。
 生きづら さについて「自己有用感」「私らしさ」「比 べ合い」の三つで考えてみたいと思います 

①現代人を苦しめる「自己有用感」のワナ  
 自己有用感とは「私は誰かのために役立っ ている」という感覚です。「用いられてい る」「必要とされている」という感覚は大事 ですよね。私自身、都会では私なんか役に立っていない、と思っていたんです。それが、 へき地医療に舵を切るきっかけになったんで す。  
 以前、コロナ病棟で奮闘する医師、看護師 を見ているとき、「あ~私はあそこまでじゃ ないなぁ」と思うこともありました。そんなコロナ禍の中で、ある人は今まで通りに人前 で得意の手品をやっていくことが出来なくなってしまい、「自分は手品が好きでやってきたんだけど、一体何の役に立つんだろう、もう自分は世の中の役に立てないのでは・・」 と嘆いていました。「やっぱり私なんかいなくてもいい存在だったんだ」と深堀りしてしまい思い詰めていたんですね。これが今の時代です。これが現代人を苦しめる「自己有用感」というワナなのです。だれかに「ありが とう」と感謝されることは大事なことですが、その言葉を言われなくなったからといって生きる価値がない、という意味ではないで すよね。  
 水木しげるさんの奥さん・武良布枝さんが NHKの連続テレビ小説の原作にもなったエッセイ「ゲゲゲの女房」を書いておられます。この本の帯文に水木さんは「『家内は生まれてきたから生きている』というような人間です。それはスゴイことだと思う。」とメ ッセージを寄せておられます。これってすごいと思いませんか?「何のために生きている」とか、「誰の役に立つ」とかではないんです。さらにすごいと思うのは、水木さんが 奥さんのことを、そういう人間は「スゴイこと」だと評価していることです。この感覚か ら私たちは遠ざかってきているということです。
 ある人は明治になって西洋から入ってき た「自分とは」「生きるとは」といった考え 方に影響されたのではないか、といっています。たとえば、西洋の絵画には、自画像が多 く、欠点など自分のありのままの自分を描い ています。それに対して、日本の浮世絵などはデフォルメされており、そのような自画像 はあまり見受けられない、というのです。 

②現代人を苦しめる「私らしさ」というワナ  
 「私らしさ」とは何でしょう。個性、多様 性が大切だといわれるんですけど、これもクセものですよね。自分にとって大切なものが見つかっている人はいいですよ。就職先など もそうですよね。大企業、有名企業に就職し ても、今の時代、大企業でも10年先安定企業であるとは限りませんよね。そうすると私にしかできないことは、一体何だろうかと考えてしまいます。つらくなりますよね。私らしさが見つからない人は、自分なんかいない方がいいんだ、とか思うようになってしまうんですね。私って個性もないしと思い、転げ落ちてしまい、だからダメってなりやすいんです。昔はそこまで考えなかったんです。平凡が一番だったのです。平凡でどこででも生きるという価値観が変わってきてるということですかね。
 本屋さんに行くと、「私らしさ」 を見つける本があると思えば、「私らしさはいらない」というのもあるんですね。もうどうしていいかわからなくなるんです。 

③現代人を苦しめる「比べ合い」というワナ  
 比べ合いという手段が膨大になったんで す。昔なら比べ合おうとしたって、方法がないから同じグループか、近所の人とか、会える人ぐらいしかなかったんですね。ところが今は、スマホを使えばインターネットを使っ て、世界中の人たちがどんなことをしているかわかるような時代になって来ましたね。これは素晴らしいことなんですよ。簡単に、住 んでいる国、時間とかに関係なくいろんな人 と知り合えるのは素晴らしいことですよね。  
 たとえばね、私は山奥の病院にいるんだけど、お陰で全国の同じような環境の医師とネ ットワークを通じて、難しい症例にアイデアを出してもらう、専門医を紹介してもらうとか、助けられることもあります。昔なら専門 書で調べてやるしかなかったんです。だからとても助かっています。  
 ところがですよ。例えば「今日こんな弁当を作りました」と写真を撮ってSNSにアップします。そうすると、「おいしそうですね」 と誉めてくれる。それは嬉しいですよね。でもここからです。同じようなお弁当を作っていますよと紹介されるんです。そうすると、 日本中、もしかしたら世界中のお弁当を作っ ている写真を見られるわけですよ。自分なん かよりもずっときれいに作る人とか、美味しそうに作る人も中にはいますよね。そういうのを見てしまう。そうすると「あぁ私なん か、まだまだダメなんだ。上には上がいるな ぁ。私みたいな弁当でいい気になってちゃダメなんだ」こんな風に思ってしまう人もいますよね。いわゆる「天狗」になれない。「井の中の蛙(かわず)になるな」。これは戒めの言葉だけど、ときには私たち、「井の中の 蛙」になりたいですよね。町内では一番うま いとかいわれて良い気分になることも必要で す。小さな井戸「井」の中で一番になりたく てもならせてくれない。他の人たちがどのような状況なのかわかるから。せっかく動画をアップしても良い気分にもなれない。これはツラいですよねぇ。  
 SNSの登場で日々自分をだれかと比べ、みんなすごいなぁと、劣等感を感じたり、自分を卑下したりして、一直線に落ちてしま う・・、という落とし穴があるわけなんですよ。あぁ、これでいいんだ、わたしの生き方 は間違ってないんだ。私なりに知っているか ら、これ以上のことはできないと思えないん ですね。これは真面目な人とか、謙虚な人ほ ど生きづらさを感じるんです。 

私からみなさんへのおすすめ 
①誰かの役に立つのは「ほんの少し」でよい  
 北海道新聞に東日本大震災被災地支援とし て、余ったセーターとかをほどいて、靴下と靴下カバーを送り続けている人が紹介されて いました。 
 「10年間コツコツと編み上げ、これまでに千足を送り届けています。」  居間で家族とおしゃべりしたり、テレビを見たりしながら編み棒を動かしながらが日課 になっています。「親の出身地が福島だか ら、人ごととは思えない」「仮設住宅で暮ら している人がいる限り続けたい」としみじみと語る。「やるのが楽しいし、ほんの少しの 力だがそれで喜んでもらえれば十分」とせっ せと心を込める――こんな形の生き方もあり ます。 

②「自分らしさ」なんて自分じゃわからない  
 私は精神科医ですので、少し触れておきま す。フロイトと並んで精神分析で有名なユン グは、心の中には自分が押し殺してきた「影 (シャドウ)」という部分があるといっています。シャドウ=影とは、「そうはなりたくない」とか、自分が無意識に毛嫌いしているものです。ところが、年を取ってくると(中年期以降)、出来ないと思っていたことに目を向けられるようになってくる。そうすると避けてきた人たちと仲良くしようとしたりして、「自分が知っている私」に無意識に息づく「シャドウ(影)」が統合・統一される。 そうすることによって、それまでとは違う自分に成長していくことができると述べています。こうありたいという本当の自分って、若 いうちは遠ざけていて、わからないものなのです。 

③人生には勝ちも負けもない、「自分の人生」 があるだけ、“いいかげんさ”も大切に   
 例えば犬が足をケガしたとします。犬専 の車いすに乗せますね。これを使って移動する犬は、どうしてこんなことになったんだ、 なんて思ってないですよ。ワンちゃん自身が自分の飼い主はセレブだとか、収入がどうとか気にしてないですよね。というのは他と比 べることがないんですよ。先のことを考えて元気がなくなるとか、これからどうなるとか犬はクヨクヨ考えないんです。人だけが恥ずかしいとか、勝ちとか負けとか考えるんです。
 今日出来なかったことに悩むより、出来たことに感謝することが大事です。これも出来た、あれも出来たと――そう思うことが心の回復につながります。 

みんなで生きる必死の町づくり (ユニークなアイデアいっぱい) 
(へき地の穂別にしかできないこともあるんです。)  
 日本の一番大きな社会問題は、「少子高齢 化」です。穂別も同様で、高齢化率はさらに高い。しかし穂別の高齢者は、なぜか元気です。90代の独居も珍しくもなく、高齢者住宅 には100歳独居も。
 「這ってでも」と野菜づ くり、花づくり、をしている人が多いんで す。映画づくりで活躍した高齢者たちもいます。そのタイトルが奮っていて、イージーラ イダーをもじって、「いい爺ぃライダー」、 また「田んぼdeミュージカル」など意気盛んです。「生きていて何が悪いんだ」と仲間の 連帯意識が強く、「映画が完成するまでは葬式は禁止」が合言葉になっているんです (笑)。  
 「生きるぞ、生きるぞ、生ききるぞ!わしらは持続可能な高齢者SD爺s」と挑戦とユーモアを忘れない――こうした人たちがいる町なのです。置かれている状況を逆手に取っ て、ご厄介にならない高齢者になって迷惑を かけない、という姿勢に考えさせられるものがあります。  

大事な声掛け 
 ――命をつなぐ「いのちの電話」の存在  
 36人が犠牲になった京アニ放火事件は、大変痛ましい事件でした。全身の93%を火傷し、絶体絶命の青葉被告を救った火傷の専門医・主治医が今鳥取大学医学部附属病院にいらっしゃいます。「他人なのに、こんなに自分に関わってくれる人がいたんだ」「僕のことを聞いてくれる人がいるんだ」面会時のやり取りで青葉被告はきっとそんな思いでいる はずです。  
 誰も自分のことなんか思ってくれていないと思っている人がですよ、いのちの電話に掛けてきて、「どうしましたぁ?」と返事があると、命がつながったと思う瞬間ですよ。話 ができて良かった、と声があれば、相談員さんは、だれかの役に立っていると実感できると思うんです。皆さんもいのちの電話の情報にもっともっと触れてほしいなと思います。 これからも自分を大事に、仲間や家族を大事 に、そして今を大事に生きていきましょう。 

 香山リカ氏・プロフィール  
 1960年札幌市生まれ。東京医科大学 を卒業後、精神科医となる。臨床のかたわら帝塚山学院大学教授、立教大学教授などとして教育活動にも携わる。  50代になってからかねてからの夢だった総合診療医としての勉強を始め、 2022年4月より、北海道のむかわ町国民 健康保険穂別診療所でへき地医療に取 り組んでいる。学生時代に始めた執筆活動、週末の東京での精神科医としての臨床はいまも継続中。北海道と東京、二拠点生活を楽しむ日々を送る。  

感想
 北海道で、へき地医療にも取り組まれていることは知りませんでした。

 全国のいのちの電話センターではそれぞれに広報誌を出されています。
良い記事もたくさんあり、それをそれぞれのセンターのHPで見るのは大変です。
HPにUpされていないセンターもまだまだあります。
 そこで、せめて全国のセンターで広報誌をHPにUpされているものをまとめたページがあれば便利だと思い、一覧のページを作成し、3~4か月のペースで更新しています。
 その中で、この記事が良かったので紹介しました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿