・マグワイアはその斬新な研究を行って、タクシー運転手の脳のある一部分が一般の人よりも大きいという驚くべき事実を明らかにしました。つまり、その脳部位では神経細胞の数がふつうの人よりも多いというのです。この事実は、人によって脳の大きさや形はそれほど変わらないというこれまでの常識を真っ向から否定しています。・・・
マグワイアはさらに詳細な研究を行って、この疑問を明らかにしています。つまり、タクシー運転手でもベテランであるほどその脳部位が発達していることを示したのです。
この発見は脳研究社にとって二つの意味で衝撃的でした。
①減る一方であると思われていた脳の神経細胞が、じつは、増殖して数が増えることもありうるという事実です。
②脳を使えば使うほど神経細胞が増えるという事実です。
・豊かな環境と豊かな記憶
一方のネズミは刺激の多い環境で、もう一方は刺激の少ない環境で育てようというわけです。
こうして、成長したネズミの脳を詳しく調べてみると、なんと、玩具を入れた環境で育てたネズミのほうが、海馬がよく発達していることがわかりました。豊かな環境のネズミのほうが海馬の神経細胞の数が15%も多かったのです。
・グループを作ってものを覚えることを専門用語で「チャンク化」といいます。
5390467281 ⇒ 「53」「9046」「7281」という大きく三つのグループ
・自分の過去の経験(エピソード記憶)
・記憶の階層システム
エピソード記憶(顕在記憶)
短期記憶(顕在記憶)
意味記憶(潜在記憶)
プライミング記憶(潜在記憶)
手続き記憶(潜在記憶)
この階層は人間の成長過程にもあてはまります。
・歳をとると記憶力が衰え健忘をきたす人がいますが、この場合は階層の上の記憶から消失していきます。まず、エピソード記憶が衰えると「置き忘れ」など日常的な行動を忘れ、ひどい場合には「今朝食事した」などの経験すらも忘れてしまいます。これは痴呆症の初期的な症状のひとつです。さらに症状が進んで、意味記憶まで失われると、自分の身内が誰なのかわからなくなります。それでも最深層の手続き記憶は比較的よく残っています。服を着たり、歩いたり、箸を使ったりといった記憶はなかなか失われないのです。
・フグの毒として有名なテトロドトキシンは、チャンネルの外側からフタをして、ナトリウムイオンが通過するのを遮断してしまう毒であることが、1964年デューク大学の楢橋敏夫によって明らかにされています。つまり、フグ中毒とは、神経細胞の活動電位が抑制されるために体が麻痺してしまう症状であったのです。
・「オペラント条件反応」
・失敗や間違いは臨機応変にものごとに対応するための『汎化』という大切なはたらきと表裏一体であって、ある程度はやむを得ないということが理解できます。
・記憶の3箇条
①何度も失敗を繰り返して覚えるべし
②きちんと手順を踏んで覚えるべし
③まずは大きく捉えるべし
・『ヘブの法則』
「強力性」「入力特異性」「連合性」
・小田は、LTPを使って金魚に記憶を植えつけることに成功したのです。動物に記憶を人為的に植えつけた実験はこれが初めての例です。
・人は「歳のせいで覚えが悪い」と嘆きます。この嘆きはたいへんな間違いで、私から見れば、そういう人は単なる努力不足であるように思います。そしてまた、昔自分がものを覚えるために、どれほど努力したのかを忘れているのです。勉強がその生活の大半を占める学生時代でも、ひとつのものごとを習得するのに、かなりの時間と労力を必要としたはずです。こうして苦労した経験を忘れ、ただただ老化を嘆くのはとても愚かな行為です。
一方、「物忘れがひどい」とグチをこぼす人がいますが、それもまた、忘れてしまって思い出せないのではなく、単に初めから覚えていないということではないでしょうか。覚えたつもりになっている、その勘違いは記憶力の停滞を引き起こすことがあります。もし、皆さんが、いままでこうしたグチをこぼしていたとしたら、それは誤解ですから、ここであらためてください。
このようにマイナス方向に自己暗示をかけてしまう行為は、正常な記憶力を妨げてしまいます。
・「絶対音感」という能力をもっている人がいます。じつは、この特殊な能力を体得(記憶)できる臨界期は3~4歳です。ですから、自分の意思を完全に持つようになった年齢から絶対音感の教育を受けても「時すでに遅し」ということになります。
言語を覚える能力は、6歳くらいまでがとくに高いことが知られています。ただし、語学の臨界期は、絶対音感ほど厳密ではありませんので、中学生になってから英語を習い始めても習得はできます。ただ、学習のスピードが格段に遅くなるのです。
・さまざまな角度から記憶力の増強方法を考えてみましたが、結局は「本人の意欲が大切である」という結論にたどり着きました。
・K90をテストの30分前にネズミに与えます。すると、K90を与えたネズミは、ふつうのネズミにくらべ、試験(水迷路試験)の成績が抜群に優れていたのです。
・アルツハイマー病は脳内のアセチルコリンが少なくなったために痴呆をきたすという病気なのです。
感想;
人間の脳は複雑ですね。
また記憶もいろいろな形で構成されているようです。
頭の良いと言われている人の中には、上手く暗記する方法を体験的に会得されている人かもしれません。
記憶について知り、効率的な暗記術を見につけるのも助けになるかもしれません。
「歳のせいで覚えが悪い」は誤解だと知りました。
若いときに比べ、努力が足りないだけとのことです。
75歳以上の免許証更新の認知症テスト、記憶の仕方を工夫して乗り越えたいです。
ある雑誌に90歳の父の認知症テストで、父が1個覚えられないと悔しがっていたそうです。付き添った60代の娘が2個覚えられなかったので不安になったと。
何かに紐づけて覚えるのが良いようです。