ポーランドからの報告

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石炭鉱山での爆発事故を受けて...

2006年11月23日 | 一般

ルーダ・シロンスクでの石炭鉱山での事故発生から40時間以上たって、事故の状況が徐々に明らかになってきています。まず、今回の事故は人災の疑いが極めて強いことが、早くも指摘されています。その後の調べで、事故で亡くなった作業員は、正規の訓練を受けていない、外部からの派遣作業員であったこと、経費削減・営業利益を第一にしたために、安全性がないがしろにされたことが、悲劇につながったという見方が出ています。

石炭鉱山での仕事は、非常に危険で、専門知識が必要とされる仕事です。当然のことながら、にわか仕立ての派遣スタッフに、このような専門的な仕事が勤まる訳がありません。しかも聞くところによると、これらの派遣労働者は、月給800ズローチ(約32,000円)という、信じられない低賃金で働かされていたそうです。命の危険を伴う仕事が、月給800zlとは、およそありえない金額です。

しかし事故のおきたシロンスク地方は、非常に失業率が高い地方で、労働者には仕事を選ぶ余裕がありません。危険と承知していても、ほかに仕事がないから、働くしかない-今回の悲劇には、このようなシロンスク地方全体が抱える大きなジレンマが背景にありました。


ところで、クラクフ郊外の、ヴィエリチカやボフニャの岩塩坑を訪れたことはありますか?とりわけ、ヴィエリチカ岩塩坑は、ユネスコ世界遺産に指定されており、毎年多数の観光客が訪れる場所です。当時の鉱夫の作業の様子を紹介した模型などを見ながら、地下の坑道を2時間に渡って散策する観光コースとなっており、とりわけ、地下100メートル余の聖キンガ礼拝堂は、天井のシャンデリアから、中央の祭壇、周囲の彫刻にいたるまですべて岩塩でできており、一見の価値ある場所です。

   

でも、なぜ、このような岩塩坑の地下に、礼拝堂ができたのでしょうか?それは、ヴィエリチカやボフニャの岩塩坑においても、昔からメタンガス爆発による死亡事故が相次ぎ、鉱夫らが、毎日死と隣り合わせの過酷な条件で働いていたからです。そのため彼らは非常に信心深く、毎日仕事のはじめに、一日の無事を祈ってミサをささげていました。そのうちに、岩塩を掘って空いた空間に、木造の祭壇と十字架を設置して、専用の礼拝スペースとしたのが、地下礼拝堂の起源なのです。その後、ガス爆発の時に、火の回りが速くなるという理由で、木製の十字架や祭壇が禁止されたため、代わりに岩塩を彫刻して、このようなすばらしい礼拝堂を創り上げたという所以なのです。

   

岩塩の結晶でできたシャンデリアに、壁一面を覆う彫刻-聖キンガ礼拝堂は、思わずため息がでるような、本当に素敵な礼拝堂です。でもその成立の背景には、いくつもの尊い命の犠牲があったこと、そして今日でも、シロンスク地方の石炭鉱山では、過酷な条件で働く鉱夫らが、ヨーロッパのエネルギー生産の礎となっていることを、少しでも多くの人に知ってもらえたら、と思います。


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