日本に住んでいた時は、東京・多摩地区の自宅から一時間以上電車に乗って通学・通勤していました。郊外在住者に限らず、一千万都市の東京では、電車なしの生活はまったく考えられないと思います。
ポーランドのクラクフに住んでもうすぐ四年になりますが、こちらでは電車にほとんど乗っていません。といっても私の場合、遠距離通勤から決してオサラバできたわけではなくて、やはりクラクフ郊外の自宅から街の中心部に出るのには一時間かかってしまいます。ただ電車ではなくて、もっぱら路面電車(トラム)とバスを利用しています。
ワルシャワ、クラクフ、ヴロツワフなどポーランドの主要都市の多くには、トラム、路線バス、トロリーバスのいずれかが走っていて、市民の足となっています。特に便利なのがトラムで、安価で街のいたるところから乗車できる上、時刻どおりの運行で遅延もあまりないので、一番信頼できる交通機関です。また郊外の住宅地は、バス路線網がくまなくめぐらされています。加えてワルシャワは地下鉄も通っており大変便利です。
そんな訳で、ここポーランドでは、近場の移動には電車をほとんど使いません。都会に住んでいれば、どこへ行くにもトラム、路線バス、トロリーバス、地下鉄で事が足りてしまうし、中程度の距離でも、国営バス(PKS)やミニバスの方が便利な場合が多いからです。電車に乗るのはよっぽど遠くまで出かけるとき、例えばクラクフからワルシャワやポズナニなど100km以上離れた他の都市に行くときくらいです。たまに特急列車には乗るけれど、ふだん各駅停車にはめったに乗らない、そういう人がほとんどです。
写真はポーランド国営鉄道(PKP)のクラクフ・プワシュフ駅。人がまったくいなく場末感のある風景ですが、これでもクラクフ中央駅から二駅目(約15km)、平日の昼間の撮影です。このくらいの距離だとトラムで十分間に合うので、この距離を電車に乗る人はいないからです。トラムは本数が多い上、郊外では割とスピードを出すので、電車に比べ、かなり「使える」交通機関なのです。
東京を脱出して初めて体験した「電車なしの生活」、案外心地いいものです。ただもちろん悲鳴を上げているのがポーランド国営鉄道(PKP)で、万年予算不足のためダイヤカット、それでさらに鉄道が不便になり、さらに利用者が減り... と悪循環が続いています。
ポーランドからの報告