ドバイ駐在員ノート

一人の中年会社員が、アラブ首長国連邦ドバイで駐在事務所を立ち上げて行く過程で体験し、考えたことの記録。(写真はイメージ)

ドバイの借地借家法(1) ホテル

2008年10月15日 23時10分39秒 | 法・制度
最近のことだ。ドバイで新たに住居を探すことになった人から相談を受けると、家具がついていないアパートを勧めるようになったのは。

ドバイに赴任した当初、事務所もアパートも転居することが前提だった。従って、契約更新時の家賃の値上げを気にすることはなかった。だが、引越した今となっては、また引っ越すのは億劫だし、できれば同じところにずっと居たい。

昨年、借地借家法(Tenancy Law)が改正されて、借家契約の更新時、家賃の値上げ率の上限が5%になったことは、新聞で知っていた。法律家の端くれのくせに、その中身を知るのは、同じアパートに住む日本人駐在員が60%の賃上げを突きつけられていることを知ってからだ。

遅まきながら、法律の英訳(原文はアラビア語)を入手して読んでみる。

第9条は次のように書かれている:

「賃貸人と賃借人は賃貸借契約において賃料を特定しなければならず、また最初の賃貸借関係の開始日から2年間が経過するまでの間、賃料を値上げ、又はその他の契約条件を変更してはならない。」

Landolord and tenant must specify rent value in the nenancy contract, and should not increase such rent value or amend any of tenency contract conditions until the elapse of two years from date of inception of the originaltenency relationship.

これによれば、1年経過後の契約更新時の賃上げは認められないことになりそうだ。だが、残念なことに、落とし穴があった。

「第3条 この法律はドバイ首長国において賃貸された不動産(更地または農地を含むが、ホテルと自然人または法人によりその被用者に提供された無料の住居を除く)に適用される。」

This law shall be applicable to leased properties in the Emirate including open and agricultural lands, excluding hotels and free accomodation provided by natural or judicial persons to their employees.

問題はここでいう「ホテル」とは何かだ。弁護士に確認したところ、家具付で貸される不動産のことで、掃除などのサービスの有無や、ホテルとしての営業免許の有無を問わないとの回答だった。

納得いかないが、これでは全ての家具付アパートは「ホテル」にあたり、借地借家法の適用がないことになる。私の住むアパートはこの規定を盾に、あくまで60%の値上げを主張しているらしい。

もっとも、全てのホテル・アパートが同じ立場を取っているいるわけでもないようだ。ドバイ最大の日本人コミュニティである、ホテル・アパートに住む先輩駐在員から先日相談を受けた。2回目の契約更新で10%の賃上げを要求されているが、これは正しいのかと。

借地借家法の後に発布された首長令(Decree No. 27 of 2007)第一条によれば、2008年に更新される賃貸借契約の年間賃料の値上げ率は最大5%に制限される(Rental increase shall be limited to a cap of 5% of the annual rental value in respect of tenency contracts to be renewed in 2008, provided that rent has not been increased in 2007.)この規定の適用があるなら、10%でなく5%が賃上げの上限のはずとアドバイスした。

先輩駐在員は首長令のコピーを示してアパート側と交渉。その結果、見事賃上げ率を5%にすることに成功し、私も大変感謝された。

一方、家具なしのアパートでも、家主が借地借家法に従うかと言えば、さにあらず。例えば、(シャージャーのことではあるが)事務所のインド人社員は、1回目の更新で30%の家賃の値上げに合意させられてしまった。

ホテル・アパートなど家具付のアパートは、私のような単身赴任駐在員にとって大変便利な存在だ。だが、借地借家法や首長令の保護を受けられない結果、2年目以降家賃が大幅に上昇する可能性があることは知っておいた方がよい。

来年2月の契約更新を待たずして、早くも次に住むアパートのことを考え始めている自分に対する反省の意味も込めて。

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