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京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

2025年7月 京都童心の会 通信句会結果

2025-08-07 13:04:56 | 俳句
2025年7月 京都童心の会 通信句会結果

朗読劇の句集 『雲へ拍手』
  金澤ひろあき
 大谷選手がメジャーリーグでホームランを量産し、多和田葉子さんがドイツ語で小説を書いている。日本人が世界で活躍しているのか、世界の垣根がなくなりつつあるのか。俳句も今、そうなっていることがわかる。
 夏石番矢氏によると今、世界の多くの国の人が、「俳句」を書いているという。また、日本語で書かれた俳句が翻訳され好評であり、三行詩として味あわれているそうだ。
最近出された鎌倉佐弓氏の句集『雲へ拍手』も、日本語の原句を英語三行詩に翻訳し、2ページ見開きで載せるという国際俳句を実践している。
 例えば、
 雲へ拍手じょうずに春を呼べました
Applause for a cloud-
you did such a fine job
of calling for spring

 句集は四章から成っており、各章に「光」「砂」「雲」「風」という題がつけられている。
 こういった自然物・宇宙の現象に出会い、そこで出てくる言葉が詩になっている。そして、声に出して読むとよくわかるのだが、一句一句が「朗読劇」のように感じられる。
 なぜそう感じるのかという視点で、この句集を読み返してみた。すると、「呼びかけ」の表現が多いことに気がついた。
 紅ばらの尖るのは棘だけにおし
 やあ五月くちぶるから青空まで
 雲ちょっとどいてブランコが行くよ
 虹よ私はなぜここにいるのだろう
 わかってる?お尻がスミレ踏んだこと
 ガーゴイル、パリのきれいな雨を語れ
 その鴉いい加減に鳴くのをおよし
 閉めないで天使も通るドアなれば
 うつぶせの辛さ蛇にもわかるかい
「紅ばら」といった植物、「鴉」「蛇」のような動物、「五月」「虹」「雲」といった自然や「ガーゴイル」のような彫刻まで広く呼びかけ、詩を呼び起こす。こうやって呼びかけられると、読者も自分に呼びかけられているような気分になり、筆者との対話が始まる。

 対話といえば、「対話形式」で書かれた句もある。
 スィートピー風は君から吹いてくる
 どくだみのどこが私に似ているというの
 イタリアはおいしいですと蟻の列
 草の絮きみが発つときは私も
 どうしてもこちらに来るのね蟻の列
 線路へことり列車まだ来ないよと

 劇では「呼びかけ」「対話」も重要な要素だが、「独白」(ひとりごと)も大切な要素となる。
 この句集にも、独白の句があり、心をかきたてられる。
 この百合が咲かない見つめているのに
 物語は母と出会えりいつか風も
 ちりぬるを桜も笑みも散りぬるを
 夫留守の水にナイフが溺れそう
 沈黙は天のやさしさ雪ふるふる
 「独白」とは、心にためておけなくなった心情がぽろっとこぼれ出たもの。最上の心情表現と言えるのではなかろうか。

 さて、劇では役者が(自分から離れて)役になりきる。役の人物になりきって、その人物の行動や心情を演じる。役の人物の「代弁」を行う。この句集にも「代弁」が多い。
 鳴くひばり空のこともっと知りたい
 入道雲天より大きくなりたいと
 桜草ゆれてもゆれても風が痛い
 塔は思う空はいつまでいてくれるか
 引き出しの中では歌うホッチキス
 さくら三日目散るのが怖くなっている
 波と遊ぶ一人ぼっち岩ぼっち
 朕は靴なりなぜ砂が混じるか

 この句集の中の句は、よく言われる「写生」という手法で書かれた俳句ではない。
 「呼びかけ」「対話」「独白」「代弁」といった劇のような作句である。
 写生句が、スケッチをもとにした視覚中心の表現だとすると、この句集の句はそうではない。
 声を出して五感を使い、役になりきる、肉体的表現と言えるのかも知れない。
(俳誌『吟遊』108号より転載)

皆さんの選です。
 選者 真・・野谷真治  白・・白松いちろう 
修・・遠藤修司  辰・・蔭山辰子  
ひ・・金澤ひろあき 須・・三村須美子 
加・・野原加代子 真理・・岡畠真理子
    芳・・松村芳子  す・・塩見すず子

○遠藤修司
1 五月の空に赤紫の帳(とばり)
2 トントンとバラに声かけ背伸びする 辰
3 生きてゆけ 迷惑かけてありがとう ひ 加
4 寄り添い語る童心の集まり 須 真理
5 水の甘さで蛍呼ぶ考え甘し 加
6 自分の想ひ かえる季(とき)か衣更 (特 須)ひ 芳 す 辰 真理
7 風薫る私は好きさ由美かおる
8 米高し何とか安く私の口に
9 人も蛍もにごった所に住めません 真 す 辰 真理
10 常夏の人には無縁か衣更 市
11 田植えの苦省くもみ直に
12 風薫るおいしい食物健康長寿(よきくらし) 加
13 田植え前水面に映る夏の空 市 須 真理
14 蛍の光に目をうばわれる今はドローン
○金澤ひろあき
15 日本からパンダが消える梅雨に入る 芳 真 修
16 新茶出てお茶壺道中復活す 真理
17 旅先の地米に結晶土と水  須 辰
18 農業科生徒の日焼け田に水を 加 す 真理
19 マンションに囲まれた田に水を引く 芳 真 辰
20 よく聞けば恋の呼びかけ田植え歌 (特 市忠顕)芳 修 須
21 ヨガポーズ田植えの合い間伸ばす腰 市 芳 修 す 真理
22 米騒動教科書にあり今にあり 辰
23 ほうたる来い博多名物屋台村 芳 真
24 蛍らの闇に抱き合い闇に消え 加 須
25 衣更マンネリ脱いで見る機会 (特 真理)市 修 す
26 衣更年相応に侘びてくる 真 辰
27 風薫る趣味中心の日曜日 市 芳
28 新しき横綱祝う米1トン 真
29 蛍にもカメラ目線があるかもな 市 す 須 辰 真理
○塩見すず子
30 晴れやかに田の水満ちて立ち話 (特 修)市 芳
31 派手な一枚を断捨離 衣更え 芳 加 須
32 老いもちらほら闇に流れる蛍 芳 真
33 主役になれず 苗のまわりのアメンボー ひ 修 須 辰
34 いきなりに過去もとおのき風薫る (特 芳)
○松村芳子
35 蛍飛び鬱気の夕暮れ晴れさせる 市 加
36 ゴルフ場ナイタショット蛍光る ひ
37 和服着て襟足白く風薫る 市 す
38 嫁ぎし年田植の列に遠ざかる 真
39 花嫁は田植歌の音頭取る
40 衣替え老舗の暖簾も麻葱色 (特 ひ)市 修 す 須 辰 真理
41 田植え終えドブロク一杯老若も ひ 加
42 断捨離に屋敷広々風薫る (特 辰)修 す 真理
○野谷真治
43 毎日前進体操水馬 ひ
44 小雨のハエ寝ている足裏 す 須
45 雨嫌い一人の画廊 加 真理
46 いわゆるひとつの星背番号3 須 辰
47 一日中待ちぼうけ梅雨入珈琲 加 修
○河本美子
48 幻灯へ列を引きずる蟻の群 ひ
49 蟻の群 影を歩まず三時かな 修
50 足音をものともせずに蟻の群 す
○生嶋節子
51 主役と場所取り花みずき 芳 加
52 胸にあったあいうえお空に飛ばす (特 真)(特 す)ひ 須 辰
53 恋のあじさい言葉に出せぬのっぺらぼう 修
54 ふれてみたいリスのシッポシースルー 芳
55 友来るとあり つめを切る 真 す
○蔭山辰子
56 むし暑い 梅雨の中やすみ蚊にさされ
57 パパ暑いよ 逝れた夫(ひと)に愚痴を云い (特 ひ)加 須
58 肩重い あなたさすって片思い
59 八十の手習い十七文字むずかし句 芳 加
60 松尾大社お田植え祭りのテレビを見
61 知らぬ間に梅雨が明けたか蝉の声 市
○野原加代子
62 田植にて母を想いて一呼吸 市 
63 青梅や老婆になりて初漬けし 芳 真 修 須
64 青蛙葉の上に乗り遠く見る す 真理
65 蛍火やゆらゆら飛びし母追いし 真 修
66 サクランボ頬赤くして店並ぶ ひ 市 真 辰
67 紫陽花や車窓から見る今年の色 芳 真理
68 アイスコーヒー喉潤いて一腹や
69 夏野菜カレーに入れては汗かいて 真 修
70 合歓の花雨に打たれて美しや 辰
○三村須美子
71 迷い蜂追い立てて逃す昼下がり 真 修 す 真理
72 よもぎ餅ガブッ歯の被せポロッ
73 鯉の虐め金魚盲目になりにけり
74 立葵駅のトイレに忘れどうなった
75 待ちに待った初なり琵琶の夢の末 (特 ひ)加 真
76 梅豊作アプリで探す活用術 市
77 マリーゴールド力漲るビタミン色 (特 加)
78 夏椿今日はゲストのチェックアウト ひ
79 蓮咲くやうてなに座るお父さん
80 朝曇りメールで促す熱中症警戒
81 家の家事プランこなせず大昼寝 加 辰
82 大泣きの頭から湯気捕まり立ち ひ
※写真は長岡京大極殿址。桓武天皇が奈良より遷都。784年から10年間、日本の首都であった。

無数の罅

2025-08-07 08:24:25 | 俳句
無数の罅
      金澤ひろあき
相変わらず愚かなままですヒロシマ忌
日本人ファーストへんな外来語
手をかざすと流れるトイレが文明
十字路で王になりたい大統領
帝国は映画のセットだけでよい
朝顔の日記かなしいこと秘密
闇に浮く 無数の罅の田の面
メダカいなくなった老人だらけの村
朝顔やほとぼりさめるまで謹慎
お祭りの後の掃除が僕の役
炎天下一歩あゆめば影消える
艮のペットボトルが結界に
さてどんなつくも神になるプラスチック
プラスチック腐らないままつくも神
二百十日そろそろほとぼりさめてるか
有料の花火の囲い二重三重
※写真は江戸時代、三次で起こった妖怪騒動の絵。

暑さ負け

2025-08-06 08:10:29 | 俳句
買った物即忘れ物暑さ負け 金澤ひろあき
※7月末に40度近い日が続いている。夕べに買い物をしたところ、買った物を店内に忘れてきてしまった。受け取りに行って大汗。
 写真は祇園祭のちまき。暑気払い、厄払い。


朝顔

2025-08-05 08:04:43 | 俳句
朝顔
           金澤ひろあき
 江戸時代の浮世絵に、色々な形の朝顔が描かれてあった。品種改良も盛んで、ヒットしたら「朝顔長者」も生まれたとか。朝顔市に沢山の人が行ったらしい。
 桃山時代、千利休の茶室の庭に朝顔が咲いているのを、秀吉がわざわざ見に行った。そのころ朝顔は珍しい花だったそうな。千利休は花を全部摘み取り、茶室の中に一輪だけ。美を一点に集めてもてなした。
朝顔の日記かなしいこと秘密 ひろあき